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□12月1日
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今日は、11月30日。そしてただいま、23時50分。
あと10分経ってしまえば、もう今年は残すところあと1ヶ月というところまできてしまった。

そう、あと10分で、12月1日。


「…よしっ」


あと10分で、私が思いを寄せる金城真護くんの誕生日なのである。

震える手で携帯を握りしめ、震える指でボタンを押そうか押さまいか迷うこと20分。

そう、私は今日この日に、金城くんに電話して、お誕生日おめでとうと言うという計画をたてているのである。

いや、そう、ただおめでとうと言うだけなのだが……何分初めての電話だ。しかも自分からかけるという。更にはサプライズという。

緊張して、今にも心臓が口からこんにちはしそうである。

しかしいつまでもうだうだと言っていられない。もうすぐで0時になってしまうから。

あと、1分。
覚悟をきめろ、女を見せるんだ。


「……っよし」


ふうっと意気込んで、私は0時になったと同時に電話のコールボタンを押した。

プップップッ……と一定音が聞こえたあとに、プルルルルと発信した。心臓がバクバクと高鳴る。コール音が聞こえる度にいつ繋がるかとおどおどしてしまう。


そして、


プルルッ…………『―もしもし、徒野か?』

「!!」


金城くんに、電話が繋がってしまった。


「あ、も、もすっ、もしもし!?お、起きてた!?」

『あぁ、数学の宿題をやっていたところだ。』

「あ、そ、そっか」


噛んだところはスルーされ、金城くんの落ち着いた声色に安心する……どころかさらにドキドキが高まる。

うわ、うわ、私いま、金城くんと電話してるんだ。


『それで、どうしたんだ?徒野から電話をしてくるなんて、珍しいな』

「え、へへ……そうだよね……
じ、じつはさ、どうしても言いたいことがあって……」

『言いたいこと?』

「う、うん」


なんだ?―と、金城くんがまた優しく聞いてくる。
あぁ、どうしよう、震える、恥ずかしい。

でも、言わなきゃ。


「……っお、お誕生日!おめでとうございます!!」


深夜だと言うことも忘れ、私は勢いあまってとても大きい声でそう叫んでしまった。

ハァハァと肩で息をする私と、黙る金城くん。

やばい、やっぱり驚いたかな。引いたかな。こんな話したことも数回しかない奴に言われて……。


「……って、あの、ことで。用はそれだけなんだけど……どうしても言いたくて……」

『……。』

「……あの、うん、ごめんなさい。引いたよね……。
……それじゃ、また明日」

『徒野』


黙る金城くんに段々泣きそうになってきて、もう切ろう……と私は携帯から耳を離した。しかしその時にはっきりと聞こえた、金城くんが私を呼ぶ声。離していた携帯をバッと耳元に戻す。


『ありがとう。』

「……え!?」

『すまない、お前からまさか祝いの言葉をもらえると思っていなかったから、言葉を失ってしまった。
本当に、嬉しい。』

「……っ金城、くん」


思いがけなかった言葉、二連発。
その甘い言葉に私は茹で蛸のように赤くなった顔のせいで頭がクラクラとしていた。

やっぱり、カッコいい。


『だが、』

「?」

『そんな真剣な声でどうしても言いたいことがあると言うものだから…別の話しかと思ったぞ』

「え?別の話って?」


別の話、なんだろう。金城くんの好きなタイプは……とか?いやいや聞いたところで私に彼が見向きもしてくれないことは分かっているさ。

他に、なんだろう。


『そうだな、俺が思ったことはー


告白でもされるのかと、思ったぞ』

「…………え?」


こくはく?

コクハク……




告白!?


「こ、こここここくっこここ告白なんて!そんな!滅相もございません!」


その単語の意味を理解した私は、腕をブンブンと振る。部屋には一人しかいないのに。しかし金城くんはその私の慌てっプリを想像したのか、楽しそうに笑った。


『そうか、少し期待をしてしまったんだがな』

「……え?」


ん?今の、私の聞き間違いか?
期待って、期待ってなんだっけ。


「き、金城くん……?」

『徒野』

「は、はひっ」


素敵なハスキーボイスに名前を呼ばれ、変な声が出る。

なんだ金城くんは、私をからかっているのか?それとも遊んでいるのか?

頭がパニックになりかけている私はただ彼の次の言葉を待つことしかできなかった。

そしてその素敵な甘い声で、彼は言葉を発するのだ。




『好きな奴との大事な記念日が、自分の生まれた日なんて、最高だろう?』



私は恐らく、今日誕生日である彼より幸せだろう。













12月1日
彼の大事な日は
二人の大事な日になりました。







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