short
□僕と君と
1ページ/2ページ
「「かんぱ〜い」」
チンッと、グラスがぶつかる音が気持ちよく鳴った。
今日は、私と靖友の6年目の記念日。
高3の時、18歳の時に靖友に告白されて、私もずっと好きで……
もう、あの夢のような日から、6年も経ってしまっていたのか。
何度か危機はあったけど、今こうやって彼と過ごせるのは、とても幸せなんだろうなぁ。
「オイ、棗チャン。なーに黙りこくってんだヨ」
「あ、ごめんごめん!幸せを噛み締めてたよー」
「アァ!?バッカ、おま……」
私の言葉に顔を赤らめる靖友。
あぁ、かわいいな。いとおしいな。
これからも彼と、靖友と過ごしていたい。
記念日を迎えるたび、思う。
しかし、だ。
もう6年も付き合って、私達も24歳を迎えた。
そろそろ、考える時期じゃないだろうか。
とある二文字、全カップルが1度は夢見ること。
結婚、だ。
何度もいうが、私たちは付き合って6年。
しかし、靖友から結婚の二文字を聞いたことは一回もない。
社会人になって2年経って、まだ落ち着いてなんていないけど、このままなーなーになってしまったら、一生結婚になんて踏み出せないんじゃないかと焦りも感じる。
それに……彼との子どもだって、ほしいのに。
よし、ちょっと、仕掛けてみよう。
グッと、向かいに座る靖友に詰め寄る。
「ね、ねぇ……靖友」
「アァ?……ンだよ、ちけぇな」
「家族って……良いよね」
「……?オォ」
私のチキン野郎!!!
グラスを持つ手に、力をこめた。
仕掛けてみようと意気込んだ私の口から出た、よく意味のわからない言葉。
ほのめかせようとしたのに、緊張のあまり、ほのめかすどころか掠りもしなかった。
美味しそうに、私が作った料理を、口を大きく開けて食べる靖友。
ねぇ、靖友。
あなたは私とのこれからとか、考えたことない?
私バカだけど、けっこー考えてるんだよ。
それとも、靖友は……
「…………ッヒ」
「?……ってオイ!何泣いてンのォ!?」
「……や、や"す"と"も"ぉ"ぉ"〜…」
「アァ!?おま、ほんと……ったくヨォ!!」
「ぶふっ」
席を立ち上がって、こっちに向かってきた靖友に、私は座ったまま抱き締められる。
あぁ、靖友の匂いだ……。
靖友は泣き止まない私の額にキスを落として、私の目線と同じ高さまで、腰を下ろす。
「棗、どーしたノォ?」
「…ッあのね、靖友」
「ウン」
「私達、もう、付き合って6年じゃない?」
「そうだネ、今日で6年だネ」
「私、靖友のこと、今もすごい好きでね、これからもずっと、好きな自信ある」
「バッ……恥ずかしいこと言ってンじゃネェヨ!」
「靖友は?」
私がそう聞くと、真っ赤な顔をした靖友が、固まる。
質問の意味がわからないのか、それとも答えに困っているのか。
「私、ほんとは不安だった。靖友、これから私とどうなりたいのかなって。
だけど、言い出せなくて、何言われるか怖くて……」
「棗……」
「ごめん、ほんのちょっと、焦っちゃっただけ。
ほら、ご飯食べよう、冷めちゃ……」
「このバァカチャンが」
「あだっ!」
ビシンと、デコピンをかまされる。
急な痛みに?を浮かべる私に、何故か頬を赤らめた靖友。
なんだ??
「ったく、もちっとタイミングっつーもんをヨォ……」
「?」
「〜…ッだからァ!俺が考えねーワケねェし、お前ェはタイミングを分かれっつーんだよ!」
「え?え!?」
靖友は叫んだあと、ポカンとする私をそのままに、奥の部屋に消えてしまった。
しかしすぐに戻ってきて、また私の前にたつ。
そしてあろうことか、座る私の前に、靖友はひざまづいた。
「や、や、靖友!?何してー」
「棗ちゃん、手ェ出して」
「え、あ、はい……」
「ちっげェヨバァカ!左手に決まってンだろ!!そんで目瞑れ!!」
「は、はい!!」
言われた通りにし、左手を差し出して、目を閉じる。
すると、左手の一部分に感じる冷たい何か。開けていいヨォという靖友の声。
私は閉じていた瞳を開き、左手をみる。
そして、叫んだ。
「や、ややや、ややす……!」
「ハッ、動揺しすぎだバァカ」
「だ、だって…!だってだってぇぇぇ……!!」
「バッカまた泣いてンじゃねェヨ。泣き虫チャン」
私の左手の、薬指で光を放っていたのは、
シンプルで、でもしっかりと存在を主張している
指輪だった。
「就職して2年、その前からやってたバイトで、何だかんだ金も貯まったし、俺らも6年経ったし」
「……っ」
「なァ、棗。
俺ァ言葉足らずだし、女心っつーのも良くわかんねェから、お前に悲しい思いさせちまうコト、これからもあると思う。
でも、俺がお前のこと好きなのも、お前から離れねェのも、これからも、何年経っても何十年経っても変わらねェヨ」
「……っやす、とも」
「棗、
俺と、結婚してください。」
靖友の眉間の皺は延びていて、
ふわりとした、綺麗な笑顔で
そう告げられた。
答えなんて、もう、決まっているんだ。
「……はい!もちろん!!!」
私は靖友の胸に飛び込んだ。
僕と君と
これからの未来は
もっと輝く
*