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□俺が協力してやるヨ
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「これはどういう事かなぁ、靖友く〜ん♥」
俺は今日、死ぬかもしれない。
久しぶりに部活が休みで、俺は寮の自室に恋人の棗を呼んでいた。
どっかに出かけようと思っていたが、棗も部活続きで疲れていたし、ゆっくりできるところがいいだろうと、俺の部屋になった。
まぁ女を男子寮にいれるのは禁止されているが…そんな細けェコト気にすんな。
しかも最近ご無沙汰だったし、イイ雰囲気に持ち込んでそのまま―と考えていたが、棗は部屋に入って来るやいなや、「久々〜」とか言いながら部屋中を詮索し始めた。
「オイあんまベタベタ触ンなヨ」と一応注意しといて、俺は冷蔵庫になにか無いかを探す。
あーベプシしかねェや、いっか。アイツもベプシスキだし。
俺は500mlのベプシ2本と、アイツの好きなプリンを持って、中央にあるテーブルまで持っていった。
が、棗が俺の本棚の前で、ボーッと突っ立っていて。
そして、その手には何かを持っている。
オイオイ、俺の話聞いてなかったろ。
「棗チャァン、ナァニ持ってンの」
「……。」
「オイ、黙ってるってンなら、
…お仕置きでも、するゥ?」
耳元でそう囁くと、棗の肩が小刻みに震えている。
なんだヨ、棗もそういうカンジだったワケェ?仕方ねェなァ。
ベプシはまた後で飲みゃァいいかと考え、棗をベットに連れて行こうと腕を引っ張る。
が、来ない。
そして、その棗の閉ざされていた口が、開かれた。
「……ろう」
「ア?なんて?」
「………っのぉ、変態野郎がぁぁぁああ!!!」
「ぶほっ!!」
顔面に突き刺さった、なにか。
俺はそのまま倒れこみ、棗は俺を見下ろすカンジに、仁王立ちしている。
は、え、な、なんだヨ。
何で棗チャン、そんな目が血走ってンのかナァ??
焦る俺をよそに、棗は笑顔。
そして、俺の顔に突き刺したものを拾い上げ、
俺にそれを向けた。
「――ッ!!なっ…」
俺の体が、凍る。
それは、以前新開に置きっぱにされた、DVD。
あぁ、そうだヨ、普通のじゃねェヨ!!
AVだよ!アダルト!ディーブイディー!!
そして、冒頭へと戻るのであった。
「靖友ぉ、これ何かなぁ」
「……な、ち、違うんだヨ、棗」
「なぁぁぁにが違うってぇぇぇええ??」
クソコェェ。
棗は笑っているはずなのに笑っておらず、しかもその手に握られたDVDはメキメキと音が鳴っていた。
「私さぁ、別にAV見るのは良いんだ。靖友も男だし、気持ち悪いぐらいの性欲野郎だからぁ」
「…その性欲野郎に啼かされてンのは誰だヨ(ボソッ)」
「なあぁぁあにか言ったぁぁああ?????」
「ナンデモナイデーース!!」
なんだヨ、まじでコエェよ目で殺されそうだわ。
てェかAV持ってて平気なら、ンでそんな怒ってんだよ。
俺がそう思ってるのが伝わったのか、棗は俺に近づいてきた。
「ねぇ靖友。私の悩みってなんだと思う?」
「ア?……運動神経悪いとこォ?」
「違う」
「アー…野菜食べれないとこ」
「ちーがう」
「……俺が好きすぎるとかァ?」
「殺すよ」
「スイマッセーン」
なんだヨわかんねェヨ。
こいつの悩みって、こいつそんな悩み抱えてねェだろ。
それともやっぱ何だかんだAVに怒ってンのかァ?と、俺はその棗に折られそうなDVDを眺める。
あンだ…?パッケージの女気に入らねェとか?それは俺も思ったヨ棗。いや絶対ェ違ェな。
じゃあなんだァ…?とジッとパッケージを眺める。
このパッケージの題名は『巨乳天国』とかいうワケわかんねェタイトルだった。
新開と一緒に見たが、ただ乳でけェ女が喘いでるだけのクソつまんねェAVだったのを覚えてる。
確かに巨乳好きだが、ンな顔もよくねェと…
…って、ん?
「なァ、棗」
「なに殺すよ」
「ナンも言ってねェだろ!!
……悩みってさァ、体のことォ?」
「……。」
棗はそれを言うと、急に黙りこくった。
アァ?これェ……ビンゴのニオイじゃナァイ?
「ヘェー、ヘェェェー」
「キモ、死ね」
「口悪ィなテメェ。
…ナニ、気にしてンの、胸」
「ハァ!?気にしてるわぼけ!!」
顔を真っ赤にし、叫ぶ棗。
確かに棗の胸は、お世辞にも大きいとは言えない。
近年稀に見る小ささだ。
付き合う前はその小ささは俺のイジリネタだったが、付き合ってからというもの、俺はそのちっせェ胸すらカワイイと思う、ケド。
「てか侮辱だよね、靖友。私が気にしてるの知ってるくせに。おっぱい体操頑張ってるの知ってるくせに」
「それで成果が出ねェのも知ってるヨォ」
「ほんと殺す」
「やめ!テメッ…そこ蹴ンじゃねェヨ!!」
あろうことか俺のオレを蹴ろうとしてきた棗の足を掴む。
そのまま足をひっかけ、俺に向かって倒れてきた棗を抱きすくめる。
「ちょっ…あぶな、危ない!!まじで死ぬかと思った!!」
「アーゴメンネェ、胸つぶれたァ?」
「喧嘩売ってるでしょ。
もう良いよ!そのAVの巨乳女見て抜いてろ!はげ!変態野郎!!性欲北!!」
「最低なあだ名つけんじゃねェよ!!」
そのまま騒ぐ棗の口を、自分のでふさぐ。
その途端に急に黙り、体を硬くする棗。
体も何度も重ねたっつーのに、キス1つ慣れねェなんて、カワイすぎんだろ。
「棗チャン、俺気にしてねーからァ」
「…私が、気にする。靖友が巨乳好きなの知ってるもん」
「…そうだけどォ、別に今はちげーヨ。
俺がすきなのは、お前だから」
俺がそう言うと、バッと棗は顔を上げた。
なんだヨ、嬉しそうな顔しちゃって。
「靖友、ごめん、顔さして。
もっとブスになっちゃうね」
「テメェ犯されてェのか」
「靖友、私もブスでも靖友好き。
むしろ靖友が一番カッコいい、世界で一番」
そう言ってから、俺の首筋にグリグリと顔を押し付ける棗。
あぁ、もう、そろそろ限界。
俺の頭は、そろそろ理性が本能に殺されそうだった。
「棗、まァ胸おっきくしたかったら言ってねェ」
「?なんで?」
「ハッ、決まってンだろ」
俺が協力してやるヨ
(絶対に嫌、マジムリ)
(なんでだヨ!!)
*