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□独占欲の意のままに
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「私、東堂くんのことそんなカッコイイと思わないなぁ」



その衝撃の言葉を発したのは、隣の席の徒野棗さんだった。
彼女のその言葉に、俺のことを話していた彼女の友人達はおろか、俺本人も固まっていた。

い、いま彼女はなんて言ったんだ…?



「ちょ、ちょっと棗!なんで急にそんなこと…!」

「えーだって、私ナルシスト嫌いだし、ていうかそもそも私荒北くんみたいな顔のが好きだし」

「ハァ?俺ェ?」

「オイ荒北!頬を染めてるんじゃない!!」

「っせェ!!」



徒野さんの言葉に頬を染める荒北をはたくと、倍の拳で返された。本気で痛い。
徒野さんは若干天然で、確かに以前から思った事をズバズバ言ってしまう子だなとは思っていた。

だが、だが…!
俺はそんな徒野さんの性格まるまるひっくるめて、こんなにも好きだというのに!
なぜ!なぜなんだ徒野さん!!



「俺の何が不満だというんだ、徒野さん…」

「だから、そういう自信家なとことかぁ」

「うっ」

「徒野チャン、もうやめてあげて、東堂死ぬからァ」



胸を押さえる俺の背中を荒北が撫でながらそういうと、徒野さんは「わかった」と言ってまた友人達と話し始めた。
彼女達は俺を哀れみの目で見ていたが、逆にそれがまた俺の傷をえぐる。



「荒北、俺は徒野さんに好かれていないのだろうか…」

「アー、まァ、なんだ…付き合うヤツと好みのヤツって違うっていうしィ」

「俺が好みじゃないって!死活問題じゃないか!!」

「だァからテメェのそーゆうとこ嫌いなんじゃナァイ!?」



俺はその荒北の言葉に1000のダメージを受けた。俺を殺した張本人大魔王荒北は「冗談ダヨ!泣くな!」と励ましてくる。更に190のダメージ。

徒野さん、俺のこと嫌いなのかァ…。

















**********








「東堂くん、なんか今日はイメージ違うね」

「…ん?そ、そうか?」

「うん、いい感じ」



その言葉に、俺の胸は高鳴った。
隼人の案で、「目立つ奴が嫌いなら、目立たない奴になれば良いんじゃないか?」というのを、俺は翌日決行した。

断腸の思いで、いつもつけている俺のトレンドマークのカチューシャをはずし、女子からの黄色い声援にもお礼を言うだけで、派手に喋ったりポーズを決めたりしていない。

こんなの俺じゃない!俺じゃない、が…
俺では徒野さんに好いてもらえそうになかったので、今日だけ、今日だけ挑戦してみた。

これでダメなら、俺は箱根の山に籠もろう。
本当の山神になってみせる。

そう思っていたが、どうやら成功したらしい。
徒野さんは昨日より、俺を見る目が一段と輝いていた。



「でも、前髪長いね」

「だろう?だから俺はいつもカチューシャをつけていたんだがな」

「そっか。でも私はこっちの髪型のが好きだなぁ」



よし、家にあるカチューシャを全て折ろう。



「東堂くん、これから毎日それで来てよ」

「え、あ、そうだな…しかし前髪が邪魔だし、うーむ」

「東堂くんの顔、皆に見せちゃダメだよ」

「な、なぜだ!俺はそんなに酷い顔しているのか!?むしろ美形だぞ!」

「うーん、前者かなぁ」

「なぜそう容赦なく人を傷つけられるのだ徒野さん!!」



東堂尽八、姫君から100000のダメージ。



「今日、あんまり女の子寄ってこないね」

「え?あ、あぁ…今日ファンサービスもあまりしなかったからな、俺が元気ないと思っているのかもしれん」

「あぁ、そっかぁ。
じゃあこれから毎日東堂くんは根暗でいてね」

「はぁ?!そ、それは何故だね!」

「私根暗な人の方が好きなんだよねぇ」

「ぐっ…」



分からん、ますます分からん。
笑顔でスラスラ自分のタイプを述べる徒野ちゃんは最高に美しいが、俺はそのタイプがいまいち理解出来なかった。


顔が見えず、根暗。どんなタイプだよ!
俺は頭を抱える。

そんな人間、それこそ好いてくれる相手も彼女しかいなくなってしまうではないか…!!


これは、また隼人に相談しなくてはならんな、俺だけじゃどうしようもできん問題だ。



「すまん、徒野さん。
俺は席をはずすぞ…」

「うん、いってらっしゃい」



俺はふらふらとした足取りで、教室をでた。









「徒野チャンさァ」



私が東堂くんが去った扉をずっと眺めていると、荒北くんが話しかけてきた。
なんだその顔、なんでそんなにやけているの。



「ケッコー独占欲、すげェだろ」

「んーまぁ独り占めはしたいよねぇ」

「ハッ、むしろ清々しいねェ」



荒北のニヤリと笑った顔をマネして、私もニヤリと笑う。

東堂くんの顔が格好よくないなんて、そんあワケあるか。
むしろ、この世で一番格好良いとすら私は思っている。

だけど私は独占欲が強いから、他の女の子になんて、東堂くんの顔も、声も、何もかも渡したくないから、東堂くんにはその顔を隠して、根暗になって、私だけあれば良いんじゃないかなぁとさえ思っている。

…って、それはいきすぎた冗談。半分本音。
でも、私に好かれようとする東堂くんが可愛くて、いじわるをしてしまったのが今回の大きな原因だ。

そんなコトしたって、意味ないのにね。



「東堂も鈍チャンだからネ」

「そうだね。でもそういうところも大好きだよ」

「オーオー、ならさっさと付き合えヨ」



私はもう、貴方に心の底から惚れてるんだから。






















独占欲の意のまま
(はは、尽八もすごいお姫様に捕まったな)
(ん?どういうことだ?)










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