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□荒北靖友にはわからない
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「また太った…」
体重計の針は、今まで指したことがなかった数字を指した。
まずい、このままではまずい。
「ダイエットしよう…!!」
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「徒野、靖友が探してたぞ。」
昼休み。
他の生徒が弁当を広げる中、私は1人廊下をとぼとぼと歩いていた。
ダイエットをすると決まれば、食事制限が一番。
辛いけど、一番すぐ痩せれるしと考えた結果の食事制限である。
なので、いつも一緒にご飯を食べている彼氏の荒北には悪いが、いつも色々餌付けをしてくる彼と当分ご飯を共に食べるのをやめようと思う。
昨晩そうメールで言ったはずなのだが、「ふざけんじゃねェ」と返ってきたからまさかと思っていたが、まさか捕まえに探すとは…。
「ごめんね新開くん、手間掛けさせちゃって」
「いやそれは良いんだけど、
徒野、食事制限始めたって本当か?」
「荒北の奴言いやがって…)…う、うんそうなの。だから荒北とは暫くご飯一緒に食べれないのよ」
「そうだったのか。
でも徒野は今のままで十分細いと思うけどな」
「…え、本当?」
「あぁ、ウサ吉にそっくりだ」
「それ褒めてる?貶してる?」
よく分からない新開くんのフォローに私はすかさずつっこんでしまった。
ていうか、最近ウサ吉真ん丸く太ってきたとか言ってなかったっけ?
「とにかく、私はご飯一緒に食べれないから、荒北と一緒に食べてあげて。」
「あぁ、それは構わないぜ。」
「ありがとう新開くん。東堂くん福富くんにもよろしくね。」
「あぁ。
でも俺はいいけど、そいつは許さないと思うけどな」
「え、なにg「許す訳ネェダロ、このボケナス!!」
冷や汗。後ろから聞こえる聞きなれた声。
間違いない、こいつは…
「は、ハロー…荒北クン…」
「テメェ…俺から逃げるたァいい度胸じゃナァイ?」
「……………ララバイ!!」
「逃がすかヨ!!!」
後ろに立っていたのは、私が逃げいた張本人、荒北靖友である。
その額にはうっすら青筋が。
そして気づけば新開くんはいなくなっており、まずいと感じた私は逃げ出そうとして首根っこつかまれたのが今。
「しぬ!死んじゃう!!」
「ナァーニが食事制限だ!んな事やってる暇あったら筋トレしとけバァカ!!」
「筋トレしたら筋肉ついちゃうでしょ!体重減らないでしょ!」
「贅肉ついてる方が悪ィダローが!!」
「うっさいなぁ!ガリガリ荒北には分からないよ!!」
「……―っ!テンメェ上等じゃねェか表でやがれ!!」
「あーもう耳元で叫ばないでよ!!」
私と荒北お互い譲らずギャーギャー言い合い。
だんだん疲れてきて、胸倉を掴み掴まれていたその手を、ゆっくりと下ろした。
「だって嫌でしょ、荒北。デブの彼女なんか」
「あァ?」
「荒北は痩せてるし、ちょっとブスだけど、自転車乗ってるときはカッコイイし、ちょっとブスだけど、最近女子に人気あるし…」
「お前それ褒めてんのかヨ」
「多分。
…だから私、荒北につりあうように痩せて美人な彼女になりたいのに、荒北のお母さんのお弁当おいしいし、お菓子もおいしいし、荒北とご飯食べるのすごい楽しいし幸せだから、もりもり食べちゃって…」
「………棗」
荒北はその細い割にごつごつとした男らしい手を、私の頭にのっけた。
「別に俺ァお前の細さとか、顔とかで選んだワケじゃねェからァ。
だから別に太っても気にしねェし、てか細すぎんだヨ!もっと太れッつのォ!!」
「荒北…」
照れ屋の彼は、今日も今日とて顔が真っ赤だ。
「オラ、メシ食いに行くゾ」
「うん!」
暫くダイエット
しなくていいかなぁ。
荒北靖友にはわからない
(靖友ーまた太った…)
(…ダイエットした方がイイんじゃナァイ)
(死ねぇぇぇぇ!!!)
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