10万打記念企画
□ツンデレーション荒北
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ツンデレとは、特定の人間関係において敵対的な態度(ツンツン)と過度に好意的な態度(デレデレ)の両面を持つ様子、又はそうした人物を指す。
-Wikipedia参照
そう、ツンデレとはまさしくツンとデレを兼ね備えた人物。皆さんご存知アニメとかでも見る「べ、別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!」…とかいう、やつ。
そんなツンデレが、私の目の前に、いるのだ。
「棗チャァン、そろそろ構ってヨォ」
まさしくツンとデレを兼ね備えた完璧の人物、荒北靖友(彼氏)が―!!
******
「荒北くんてさぁ、結構ドライそうだけど、大丈夫なの?」
昼休み。
そんな疑問を私に投げかけてきたのは、卵焼きをこれでもかと口に詰めた友人だった。
私はその質問に一瞬固まったあと、うーんと考える。
「…まぁ、冷たいっちゃ冷たいけど、別に平気かなぁ」
「え、どうして?私だったら耐えられないけどなぁ」
「…そりゃ私だってツンだけだったら耐えられないよ」
「は?ツン?」
私の言葉に頭を傾げる友人。いや、私だって最初は頭を傾げたさ。彼のスイッチのオンオフには。
荒北靖友といえば、この箱根学園の私達の代では有名な元ヤンだ。入学当初なんてリーゼントで、過去に一度私もイチャモンをつけられたことがある。なんでもその時に私に一目惚れしたそうな。いや今はそれは置いておこう。
で、だ。
確かに彼は友人が言う通りすごい冷たい。ほんとに冷たい。この前なんて「マイダーリンおはよ〜」とかふざけて言っただけで「沸いたネ」とまるで汚物を見るような目で見られた。さすがにあの時は泣いたね。
しかし、しかしながらだ。どうして言葉責めがすきでもなくましてやドエムでもない私がそんな塩対応すぎる彼に耐えられるかというと…
「靖友ってさぁ…ツンデレなのよね」
彼は、最近巷で有名なツンデレであったのです。
「はぁ、ツンデレねぇ。デレなんか想像できないけど」
「そりゃみんなの前でデレたらただのデレデレじゃない。まずは塩対応の様子をご覧いれましょう。」
「は?」
「おーい、靖友〜〜」
頭に疑問符を浮かべる友人を尻目に私は少し離れた席に座っている靖友に手を振る。するとそれに気付いた靖友がケッと言って顔を背けた。
「あら、酷い」
「ざっとこんなもんですよ、ツンは」
「いつもの光景ね」
「そう、君にしたらいつもの光景なのだろう。
しかしだ、これがデレの方になると」
「なると?」
「犬の如く尻尾を振りながら私のところまで近づいてきて、私を抱きしめながら擦り寄ってきます」
「ぶはっ!え、やばい想像できない!!ぶはっはは!!」
「あんたがモテない原因はその笑い方にあるのね…」
大爆笑する友人を放って、私は弁当を食べ進める。するとようやく笑いがおさまった彼女からじゃあさぁと提案があった。
「そのデレのところ、動画撮ってきてよ」
提督から出た指令は、まさかの超難問のクエスト攻略だった。
******
回想終わり。冒頭へと戻る。
そう、私は今からこの男の、たった今私に擦り寄ってきている男の動画を撮らなければいけないのだ。
現在私の家。ここが奴のデレ場となっていることはすでに検証済みである。あとはこいつの部屋だったり実家だったりも同様。
私は片手に携帯を握り締めながらその時を待つ。今すぐに携帯を向けて動画を撮ってもいいが、もしバレた時に携帯を折られるか、または携帯を壊されるかのどう足掻いても地獄しか見えないので、無理はしない。
策を、何か策を練らなければ…
「…棗、」
「!!」
その矢先、急に名前を呼ばれ、私は面白いほど跳ね上がった。不信そうに目を向ける靖友。まずいここでバレるわけにはいかない。私は必死に平然を装って「な、なに?」と聞いた。
「好き」
「え?」
「だからァ、好きだヨ」
急にどうしたんだお前はああああ!!
叫びたくなるほどの今世紀最大のカワイさを見せた靖友に私は叫んだ。もちろん心の中で。
そしてピュンッと、それを拍子に私の頭の中でとても良い案が浮かんだ。
これなら、いける。
「ね、ねぇ靖友」
「なにィ」
「今のすっごいカワイイからムービー撮りたいんだけど、ダメ?」
「ハァ?ンだヨそれ」
「だ、だって…大好きな靖友が私のこと好きって言ってくれるんだもん…いつでも聞きたいなって…」
おええええと心の中で自分の発言のキモさに吐きつつも、そんな私の言葉に感動して「棗…」とか言っている靖友に、きっとこの効果はバ ツ グ ン だ !!
そしてその読み通り、靖友は「し、しかたねェなァ!」とか言いながら、いそいそと髪を直している。ぐうかわ。
ありがたくお言葉に甘えて、携帯のムービーを起動し、靖友に向ける。ボタンを押せば、ポンッとボタンが鳴った。
「お名前を教えてください」
「は、ハァ?……荒北靖友ォ」
「靖友くん、好きなものは何ですか?」
「ベプシと唐揚げとロードォ」
「え?」
「エ?」
「他には?」
「………棗も」
げ ろ か わ か よ !!!!!!
恥ずかしそうにしながらそう発言した靖友に、私は吐血寸前だった。
なんなのなにこの生き物。
「靖友は、私のどんなところが好き?」
「アー…笑顔ォ」
「あとは?」
「バカでドジなとこもォ、頭悪ィとこも、おっさんみてェなとこも好きィ」
おっと悪口しか聞こえないぞ。
思わぬダメージをくらった私だが、画面ごしに靖友が口を開いたのがわかった。
「でも一番は、こんな俺を好きでいてっくれることだヨ」
「!」
私はその言葉で固まった。
顔をあげれば、彼は本当に愛おしそうに、私を見つめていた。
「…ごめん、靖友」
「ハ?……あれ、消したのォ?」
「うん、もう良いんだ」
私は撮ったムービーをその場ですぐ消した。靖友はなにか自分が変なことでも言ったのかと気にしている風だったから、私は彼を抱きしめる事にした。
「だって、こんなの撮らなくても、靖友はいつでも言ってくれるでしょう?」
「棗…」
「私も、私を好きでいてくれるツンデレな靖友が大好きだよ」
靖友がその言葉に笑って、
そして私の顔に、自分の顔を近づけた。
ツンデレーション荒北
(これが今回の検証結果です)
(ただのノロケじゃねぇか)
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