one more time

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靖友と話すチャンスは、すぐに訪れた。


今日のお昼は久しぶりに靖友と一緒に過ごせる日だった。
4時間目が終わって気合をいれて、私は離れた席に座る靖友が立ったと同時に、自席を立った。


「や、靖友!どこでご飯食べる!?」

「うおっ…なんで叫んでんだお前…」

「あ、ご、ごめん…」


なんだか気合いが入りすぎてしまった私。声がよほど大きかったのか、靖友だけでなく回りの人もびっくりしていた。


「黒猫のとこでいーダロ」

「あ、うん、そうだね」


教室を出て、私たちは歩き始めた。








*********






黒猫にエサをあげて、私達は無言でご飯を食べていた。
そういえば、靖友とお昼食べるどころか、話すのも久しぶりな気がする。

教室が同じなものの、席も離れているから話す機会もあまりないし、放課後もお互いが図書館に行ったり靖友が部活に行ったりと、なんだか一緒に帰ることもままならなかったし、お昼だって…


なんだか、急に気まずくなってきたぞ。


「あのヨォ」

「!?は、はい!」

「…ガチガチすぎじゃナァイ?」


突然かけられた声に私は大げさなぐらい反応してしまった。それを見た靖友は明らかに怪訝そうな顔で私を見る。


「棗チャン」

「な、なに?」

「この前は…なんだ、その…


悪かった、ナ」


私は靖友のその言葉に固まった。
靖友はそんな私を他所に、言葉をつないでいく。


「俺、どっかで安心しちまってた。多分何も言わねェでも、棗は俺と同じトコ行くんだろーとか、勝手に思っちまってた。…俺が俺の将来考えるように、お前にだって将来やりてーコトくらいあんのにヨォ」

「靖友…」


私が靖友の名前を呟くと、靖友はそれに応えるように私の手を握った。


「正直不安。オメー他の野郎に狙われててもぜってー気付かねェだろうし。ホイホイ着いてって気付けば付き合ってましたーとかなっちまわねェかって」

「ちょ、信用なさすぎじゃない…?」

「信用はしてるヨ。ただお前バァカチャンだからなァ」

「うわぁバカにされてるんだ、私」


私がそう言うと、とにかくと言って靖友は私を見つめてくる。なんだか久しぶりに目があったから、恥ずかしくなってしまう。


「俺、別の大学行っても、別れる気ねェから。」

「!」

「お前また何か変なコト考えてっかもしんねェから一応言っとくケドォ、俺がお前以外の女好きになるワケねェし、俺がお前に冷めるコトとか…ねェからァ」


段々自分の言ってることに恥ずかしくなってきたのか、靖友は最後の言葉を小さくしながらも、私の目を見ながらそういってくれた。その頬は赤いが。

靖友、エスパーなのかな。それとも長年アシストっていうものやってきたから、人の心を読み取る能力まで身についてきたのかな。

私がこの数日間抱えてきた悩みを、不安を、靖友はいとも簡単に投げ捨ててしまった。


「やす、とも…」

「!?っオイ、泣くこたァねェだろ!」

「だってぇぇぇ…!」

「ッハ、ブスだねェ」

「うっさいブスぅぅ」

「ぶっ飛ばすぞ」


ポスッと抱きしめてくれた靖友の胸の中で、私はオイオイと泣く。

靖友、靖友。
私だって、あなた以外好きになる人なんていないよ。


「靖友、大学であんまり格好いいことしないでくれよぉ」

「ア?ンだそりゃァ」

「靖友はただでさえ格好いいんだから、他の女の子はイチコロコロリンだよ」

「イチコロコロリンってなんだヨ…いや俺モテねェから平気だろ。てか褒めんな」

「モテるよ!だって格好いいから!!」

「ウッセェ!やめろソレ!」

「靖友は格好いい!イケメン!ブス界のイケ――ッ」


皆まで言う前に、私の叫びは靖友の喉奥に消えた。気付けば近くにある、靖友の長いまつげが生えた閉じられた瞳。あぁ、キスされている。


久しぶりの靖友の感触に、なんだか頭が沸騰しそうだった。


暫く唇を合わせ、名残惜しく離れていくソレ。



「棗」

「…ん?」

「アー………まァまァ、好きだヨ」

「!!」


顔を茹蛸みたいに真っ赤にしながらそう呟くようにいった靖友。
まぁまぁというのが、とてつもない照れ隠しだということは、もうわかっている。



「うん、私もとっても好きだよ、靖友。」




彼となら、大丈夫だ。きっと。
私はまた降り注いだ幸せを噛締めながら、靖友に飛びついた。








*
 

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