one more time

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「荒北くん、練習終わりでもいいから、どっかいかない?」

「……アァ?」



            
あの騒動から数日が過ぎた。
もうすぐ期末が近い。その後は夏休み、そんでもってインターハイ。


こう考えると、一年バカみてェにあっという間だな。



そんなことを考えている俺に飛び込んだ、1つの声。
また、隣の女だった。


そして、冒頭に戻る。




「テメェ、何言ってンだ?」

「だから、私とも出かけようって。
この前のお礼ってことで、ね?」




自分からお礼催促してくるやつがあっかヨ。
にっこりと生け簀かねェ笑顔を浮かべる赤坂に舌打ちをかます。

俺は何か驕るだけでいいだろ。そう言い放った。

しかし赤坂は引かず、俺の耳元に顔を近づけていった。



「私とはいけなくて、徒野さんといける理由は、何だろう?」




俺は瞬時に赤坂から離れる。
コイツ、やっぱり裏があったな…笑顔のはずなのに、目が笑ってねェ。



「明後日、練習少しはやく終わるんでしょ?出かけよう」



俺はとんでもねェヤツに捕まっちまったらしい。















*******









「徒野さん」

「あ、新開くん」




今日は黒猫に餌を上げた後、時間が余ったのでウサギ小屋に来てみた。

するとそこには、やっぱり新開くんが。
手にはキャベツを持っていた。




「ウサ吉元気?外暑いから熱中症とか」

「あぁ、それ俺も心配だったんだ。
だから様子見に来たんだけど、大丈夫みたいだ」




そっかよかった。私はウサ吉をなでる。
相変わらずちっちゃくてかわいいな、お前。


あの日から話す事が増えた新開くんとは、今ではちゃんとしたお友達になれた気がする。

ウサギ小屋にこうして行くのも、2回目ではない。




「テスト勉強進んでるか?」

「いやー全然。私数学苦手なんだよねぇ」

「俺も。でも赤点とったら、寿一に怒られちまうから」

「それはだめだね」




あははとお互いに笑う。
他にも、クラスの話、部活の話、黒猫の話…少ない時間の中で色々な話をした。


新開くんは私の話をうんうんと相槌をうちながら聞いてくれるし、私も話しやすい。


良い人だなぁ、と。すごく思う。




「はーおもしろい…新開くん優しいし面白いから、きっとモテるんだね」

「なんだ急に。褒めてもパワーバーしか出ないけど?」

「出るんじゃん、はは。
でも、本当に新開くんモテるから、きっとより取り見取りだろうなぁ、女の子」

「そんなことないさ。
本当に好きな子にモテなきゃ、意味ないしさ」

「……え?好きな子いるの!?」




恋バナに突入のお知らせ。
なんと、新開くんには好きな子がいたらしい。


正直新開くんそういうの興味ないっていうか、ぽや〜としてるからわからなかった。
意外だ。




「え、どんな子?同じ学年?同じクラス?」

「徒野さん、自分のことは話さないのに、俺のはずいぶん嬉しそうだな」

「人のは楽しい」

「なんだそれ」



新開くんは、はははと笑う。
そうかぁ好きな子かぁ…こんな良い人に好いてもらえる人は、きっととても素敵な子なんだろうな。

新開くんには色々お世話になっているから、ぜひ成功してほしい。




「それでそれで?」

「あー…同じ学年、だよ。クラスは違う。」

「えっそうなの?元同じクラスとか?」

「いや、一回も同じクラスになったことない」

「へぇー委員会とか?」

「いや、それもない。
一目惚れ…とは違うか。偶然会って、偶然話す事になって、そのときからか…すごい気になるようになって、さ」

「へぇえ!なんかいいね!恋愛っぽい!!」

「ずいぶんと嬉しそうだなぁ、おめさん」



新開くん、あなたの方が嬉しそうだよ。
しかも、心なしか顔も赤いし。


偶然が重なるってすごいなぁ、本当。



「でも、1つ問題があってさ」

「え、どんな?」

「その子、俺の友達の好きな子なんだ。今も好き、だとは思う…」

「えっそうなの!?
あらー三角関係ってやつだね」

「そうなんだ。
俺はそいつのことも友達として大事に思ってるし、でも、その子のことも好きなんだ」



結構困ってる。
そう呟いた新開くんは、悲しそうに笑った。


友達、かぁ…確かに一番厄介な問題かもしれない。
私だったら、どちらを選ぶだろう。


もしあの友人達と好きな人がかぶってしまったら…




「私だったら、友人を取っちゃうかもしれない。」

「!……そっか」

「でも、本当に好きでどうしようもなかったら、思いだけ伝える、かな。
付き合いはしない、かもだけど」

「告白だけ、か」

「難しい問題だよね、本当に」




新開くんは、ああと頷く。




「告白、してみようかな」

「え、今日?」

「まさか。
決まってないけど、でもいつかは伝えたい。


「うん、そうだよ。
それに、その子も案外新開くんのこと好きかもしれないし」

「はは、それはないよ」




新開くんが笑ったと同時に、予鈴が鳴る。


まずい!次移動だ!!



「ごめん新開くん!もう行くね!
好きな子のこと、また相談して!」

「あぁ、ありがとうな。」

「いいえ!じゃあまたね!!」



私は新開くんに手を振ってから、校舎に向かって走り出した。














「俺は、靖友に勝てるかな、徒野さん」






















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