one more time

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翌日
重い足を引きずりながら学校に向かった。

くそ、寝れなかった全然…
考えすぎて、寝てるのか寝てないのかすらも分からないぐらいの睡眠だった。


行きたくないなぁ
そう思っていてももうサボるわけにはいかない私は、一歩また一歩と教室への道を歩いていた。


そして、こんなときに限ってあっという間に着いてしまうんだよなぁ。
でも、私と荒北席遠いし、うん、大丈夫だろう。


よし、と決心し、教室の扉を開けた。




「お!主役の登場だ!!」

「よっ!徒野ー!!」




教室に入るやいなや、訳のわからない煽りがそこら中から飛んできた。特に男子。
女子も、声は出さないもののひそひそと何かを話していた。



「え、なに、何コレ」

「とぼけんなよ!いやまさかお前達がなー」

「仲はいいと思ってたけど、ほんっとお似合いですなー」

「ねぇ答えろや。何が!?」




数人の男女に囲まれる。
なんだ、私が本当に何をしたっていうんだ。


すると1人の男子が、私に自身のスマホを見せてきた。
そこには、一枚の画像。



「!!―…げぇ!!」




そこに写っていたのは、楽しそうに買い物をする私と、


荒北。



昨日の写真だ!なぜ!なんでこいつらが!?



「クラス内カップル第一号は荒北と徒野か〜」

「いやぁお熱いねぇ。昨日のショッピングはお互いへのプレゼントとか?」

「ち、違う!昨日はお互い、用事があって…」

「恥ずかしがってんじゃねぇよ〜このリア充が」

「だから!違うんだってば!!」




誰かに助けてもらおうと辺りを見回すが、助けてくれそうな友人達はまだ教室にいなかった。


しまった、迂闊だった。
昨日は日曜日だし、隣街にはいつも何人かの箱学の生徒が買い物しに来たりするのだ。

まさか目撃された上に、写真まで撮られて…おまけにクラスでこんなことされるなんて…!!



「よっ荒北夫人〜」

「どうやって荒北落としたんだよ〜」

「っとに!ガキみたいなこと言ってんなよ!!なんでもないんだってば!!」

「徒野さん照れてま〜す」




あぁ、キレそうだ。
いっそのこと殴ってしまおうか、そう思いつめたとき、1人の生徒があっと声を上げた。
皆はいっせいに声を投げかけた矛先を見る。


クラスへと入る扉、そこにいたのは
朝練を終えた東堂くんと






「荒北―」




最悪のタイミングで、荒北の登場だ。




「おぉ!旦那がきたぞ〜!!」

「これはハグの1つでもしてもらわないとなぁ!!」

「アァ?何言ってンだテメェら」



荒北の登場により、クラスはより一層うるさくなった。
本当に、小学生か…いい加減にしてくれ。



「荒北みずくせぇな〜彼女が出来たんならもうちょっと幸せそうにしてくれよ」

「ハァ?彼女ォ!?誰が!!」

「誰ってお前もとぼけてんのかよ、そこにいる徒野だろ?」

「ハァァア!?何言ってやがんだテメェら!!ぶっとばすぞ!!」

「な、そ、それは本当なのか!?荒北!!」

「ウルセェヨ東堂!!ンな訳ねェだろ!!」

「じゃあこの画像はどう説明してくれるんだ〜?」

「―なっ……」



荒北に、私に見せた画像と同じものを見せる。
荒北は一瞬たじろいだあと、私と同じように反論する。

だが皆はそれも照れ隠しだと思い、さらに騒ぎ立てる。



違う。もうやめてくれ。

私たちは、そんなんじゃない。


違う。



私たちは………



「………にしろ…」

「え?」

「徒野、なに――」

「いい加減にしろって…言ってんだよ!!!」



私は持っていた鞄を思い切り地面にたたきつけた。

中の硬いものと床がぶつかり、ドンッという大きな音が響き渡り、としん…と教室が静まり返る。

だが一度着火してしまった私の怒りは、収まらなかった。



「違うって…何度も言ってるだろ!!
その写真は、荒北の用事に付き合って、時間があったから色々見て回ってただけなんだ!

デートとか、確かにそうかもしれないけど、私たちは付き合ってない!!
私達は、友達だっての!!」



口が、止まらない。
思ってる事と、思ってもない事が、ごっちゃになる。


もう、疲れた。





「私はっ…!!彼氏とか、彼女とか…そんなんどうだっていい!!恋愛としてなんか…荒北もっ…誰も好きじゃない!!!」








苦しくて、息ができなくて、肩で呼吸をとる。
顔を、上げる。






「………」

「……っ!」




荒北の顔が、酷く歪んでいた。




「………!!!くっ!!」

「徒野さん!」







私は落ちた鞄をひったくり、教室を飛び出た。
東堂くんの呼ぶ声が聞こえたが、私は無視して無我夢中に走った。



もう、嫌だ。





惚れたはれただの




もう、嫌なんだ。
























*

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