one more time

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荒北の用事も終わり、私達はその後街をブラブラしていた。
私はこれといった用事はなかったが、荒北の様子を伺いつつも色々な店を出たり入ったりした。


さすがにお互い疲れ、現在は公園のベンチで荒北が買ってくれたベプシを飲んでいる。荒北もベプシだ。
私にもベプシ勧めるとか、どんだけベプシ好きなんだこいつ。いや私も好きだけどさ。


強い炭酸が、刺激しながら喉を通る。
飲み物を欲していた体に、染み渡る。



「いや〜つっかれたねぇ」

「ほぼお前ェの行きたいところだっただろーが」

「やっぱりショッピングとか楽しくなっちゃいますよね」

「ハッ、似合わねェ」

「ぶん殴るよ」



私が拳を上げると、荒北は黙った。
私だって女だ。買い物は嫌いではない。
失礼しちゃうわねぇほんと。



「でも、楽しかったね今日
私のお礼のはずが、きっと荒北以上に楽しんだよ、今日。」

「ソレハヨカッタ」

「うわ、うざその棒読み。」

「……まァ、俺もまぁまぁ楽しかったヨ」

「!―そっか!」



荒北は、少しいじわるそうに笑うと、そういってきた。
私はなんだか嬉しくなって、笑った。



「やっぱり、荒北は楽だね」

「あァ?ンだよいきなり」

「いや、本音。
やっぱり大事な友達だよ、荒北」




「―――…友達、ねェ」




荒北は、ぽつりと呟くと、それから黙った。
え、何かまずいこと、言った?かな?


私は急に変わった荒北の雰囲気に戸惑う。
荒北の地雷は、どこにあるのか分からない。
私がバカなのか、荒北が難しいのか。


きっと、前者の方が正しいんだろうけど。



荒北は黙ったまま、ベンチを立ち上がる。
私は、頭に疑問符を浮かべたままそれを眺めた。


荒北のベプシは、ほとんど飲みきられていた。



「徒野」

「ん?」

「俺が前にしちまったコト、忘れてくれ」

「え?」

「俺とお前は、友達の方が向いてっかもしれねェな」




荒北は、私の方を向いてそういった。
丁度夕日とかぶっていて、彼が今どんな顔なのか、私には見えなかった。

私自身の顔も、荒北にどう見えてるかさえわからなかった。



ただ、私の心臓は




「帰ろっかァ、徒野」




どうしてこんなに、苦しいんだろう。




































***********






あれから私達は電車に揺られ、寮に帰ってきた。


ただ、終始無言だったが。



そう、またやらかしてしまったのだ、私は。




「はぁー…」




部屋に入り、ボスンとベットに倒れこむ。
とても楽しい雰囲気で過ごせていたのに、私はだめだ、すぐに壊してしまう。


自分が何をしてしまったのか、ぐるぐると考える。
荒北は何で止まった?どの発言がいけなかった?







『―――…友達、ねェ』






「――友達、」



彼が黙る前に呟いた、最後の一言。

これが、いけなかったのか?
でも彼は、私達は友人の方が向いているといった。


私もそれは思った。
気まずくなってしまうぐらいなら、ずっと仲の良い友達の方がいいと。




…でも、これが、私の押し付けだったら。
荒北は、私のことを好きだといってくれた、そういう意味で。

私は、彼を蔑ろにしてしまった。
私と荒北は、友人だと、そう自分の価値観を押し付けて。


彼のあのときの顔が、頭の片隅に浮き出る。


私は、とても酷いことをした人間だ。
誰だって、あんなことを言われたら傷つくのに。


だけど荒北は、私のわがままに付き合ってくれて、自分の気持ちを無理矢理消してまで、私のことを考えてくれたのではないだろうか。

だから、自分たちは友人に向いてるって、言ってくれたのか?


私の、自意識過剰か?



―…なんにせよ、私のわがままでこうなったんだ。
よかったじゃないか、これで。


荒北はもう、私を友人としてみてくれる。







「………ぅ」





なのに、どうしてこんなにも胸が痛いんだ。






私は、どうしてこんなにも臆病なんだろう。



















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