one more time

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さっき、確かに目が合った。
徒野と。



更衣室で男のクセェ臭いに塗れながら、俺の脳内はさっきの事でいっぱいだった。


自分の教室の方から覗く顔があんなぁと思っていたら、それは徒野だった。
何かを探している風にも見えたその視線は、あるところでとまった。


俺を見つけた瞬間に、ぴきりと動かなくなったのだ。


まさか、俺を探してたのか?
いやいや、ンなわけねェだろ。


だがしかし、徒野は動かない。
俺も動けなかった。



なんで反らさねェんだよ。
なんでそんな目で、俺のこと見てんの?



距離は遠いはずなのに、目があったのはほんの数秒だったはずなのに、俺には近く、なおかつ長く感じられた。




「俺、わかんねェわお前のこと」



俺の呟きは、誰に聞こえるわけでもなく、ざわざわとうるせぇ更衣室のなかに消えていった。






























教室に戻ると、女子はすでに教室にいた。
今日は女子は座学だったらしい。ドンマイだな。


だから徒野も外を見てたのか。
今もそうだ、校庭の方をぼんやり眺めてやがる。


もし前の席なら、俺が隣だったら、前みてぇに友達のままでいれてたら、
今すぐ席座って、俺の活躍みてたのかよって聞けンのに。




「徒野さん!」

「あ、東堂くん」

「俺の活躍、見ていたかね?見事な守備だったろう?」

「うん。でも三振してたけどね」

「な!なぜそんなとこ見ているのだ!!」

「あはは、」



俺のポジションだったそこには、東堂がいて。
俺の聞くべきものを、東堂が聞いている。


なぁ徒野、なんでお前他のヤツラにも
同じように笑ってんだよ。
俺、結構お前とは仲良い自身あったんだヨ。






全ては自分が、壊したから。





「……クソッ」




俺は体育バックを廊下に投げてから、教室を出た。















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