one more time

□06
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あれから私は授業に出ないで寮に帰った。
友人たちには熱が出たとメールして、だ。心配するといけないし。


すると放課後私が教室にほっぽって帰った荷物を部屋まで持ってきてくれたのだ。

彼女たちは何も聞かなかった。
勘違いしているかもしれないけど、彼女たちはただ笑顔で、私が出なかった授業の話をしてくれた。


彼女たちはただ笑っていてくれた、
いい友達をもったな。そう思った。







だけど私の頭から、今日の事は直ぐには消えてくれなかった。
荒北と、友達だと思っていた男子に
キスをされた。告白?をされた。


びっくりしすぎて、ただ呆然と立ち尽くしてしまった。



でも、次に驚いたのは、
そんなことをされても、私の荒北への友達という概念は消えなかった。
少しも、彼に対し意識が変わることはなかった。


これだけのことがあっても
私はやはり人を友達以上に思えないらしい。


あぁやっぱりと思う反面、これでもダメなのかと正直ショックだった。
授業を受ける気分にならなかったのだ。
















そして、日は昇り、
朝。教室。




荒北は、まだ来ていない。
おそらく朝練でもしているのだろう。




気まずさは、ない。
何も変わらない。




「あ」

「……ッ」



横をみると、荒北が物音立てないように席に座ろうとしていた。
いや、バレるだろ普通に。



「おはよう、荒北」

「…………ハヨ」



荒北は気まずそうに数回頬をポリポリとかいた後、今度はどかっと椅子に座った。

ほら、本人の顔を見ても、私は気まずいと思えない。
心臓も、正常。いつもと同じ。



「あのヨォ……昨日は……」

「私、気にしてないから」

「ア?」

「昨日のこと、気にしてない。」

「……徒野」

「気まずいとか、私は思わない」



荒北の顔が少し晴れる。
私の言葉が嬉しかったのか、はたまた別のことを考えているのか。


ごめんね、ごめんね荒北。

きっと私はその顔を

歪めてしまうから。



「だって、何があっても
荒北は友達だから、気まずくないよ」




それは拒絶の言葉。
不変の言葉。


予想通り、彼の顔は酷く歪んだ。
苦しそうな、何か言いたそうな、でも言えないで飲み込む。
私はそんな荒北を横目に、体を前に向ける。

先生が入ってきた。時間差はあったが、荒北も前を向いた。





私の心臓は、バクバクと言っていた。













*

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