one more time

□04
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購買では、大好きなコロッケパンを買ってもらった。
荒北にはボソリとイカツ…と言われてしまったが、好きなものは仕方ない。

メロンパンとかクリームパンとか、かわいいパンはいくらでもあったが、生憎私の胃袋はあんな可愛いパンじゃ満足できないのだ。


そして今私と荒北は、あまり人が来ない場所のベンチに座っている。
教室に戻るとあいつらが面倒だと思ったので、苦肉の策である。仕方ない。



「……ねっみィ」

「はは、細い目がさらに細まってるよ」

「ぶっ飛ばすぞ」

「ゴメンナサイ」



相当眠いのか、彼は先ほどからあくびを何回もしている。
おかげでこっちまであくびをしてしまう始末だ。

あくびって移るんだぞこら。



「大変だねぇー自転車競技部」

「ア?……まァな、全国制覇目指してっからァ」

「はは、すごいね。
どうりでファンも多いはずだ」

「ナンダヨ、東堂の話かァ?」

「……あー、と」



まずった、自分からその話をふってしまった。
いやいやでも、荒北に限ってそんなことはない。

なんか私の勘違いでギクシャクするのも嫌だし、かるーく聞いてみようかな、軽く。

あくまで、冗談で。



「実は、さぁ…さっき一緒に弁当食べてた子達と、自転車競技部で誰が推しメン?みたいな話になって…二人は東堂君とか新開くんとかで、それで私に話ふられたのね」

「……ヘェ、でお前も東堂とか新開とかいったワケェ?」

「いや、ぶっちゃけ二人のこと知らないし推しメンにすらならないというか…
そしたらね!二人なんか勘違いしてて、私の推しメンが荒北って言い始めてね!おかしいでしょ!?」

「……アァ?」



やばい、まずいか?
荒北の表情が先ほどより険しいものとなった。


だがしかし私の口は止まらない。
こんなときに限って、これでもかってぐらい喋り始める。



「今度はね、荒北が私を好きだって言い始めるんだよーこれがもうおかしくって!
荒北と私、お互いにお互いと話すときが一番楽しそうって!

そんなのさぁ、ずっと同じクラスだったし気が合うからだよね!
大体、私たちが付き合うとかそんなん―…」



気づくと、荒北が真剣な顔をしてこちらを見ていた。
いつものあのニヤケ顔でも、怒った顔でも、険しい顔でもない。


ギラギラとした目で、私を見ていた。




「あらき…」

「付き合うとかそんなん、ナニ?」

「え?」

「俺と付き合うとか、考えられねェの?」

「ちょ、なにいって…」



荒北の顔がグッと近くなる。
なんだこれ、なんだこれなんだこれ



「ニィブチャンだよねェ、徒野って」

「は…はぁ?てか荒北近い…」

「俺はずーーーーっと、好きだったんダヨ、」

「………へ、」



何が
その言葉を発することは出来なかった。


荒北の顔が近い
下まつげの長さがはっきりわかるほど、近い。

こいつとこんな近づいたこと、あったっけ…?


てかこれ、どうなってるの?
なんで荒北、目つぶってるの?


口にあたってるのって、何―――?






私の思考が回復する前にその"何か"は終わっていた。




「いい加減気づけヨ、バァーーカ」



ニヤリと笑って、荒北はどこかへ行ってしまった。


残された私の頭は、だんだんとさえ始めてきた。





「私……荒北、と…」




鐘が鳴っても、私の体は動かすことができなかった。








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