one more time

□03
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「それで、棗は誰派なの?」

「……え?何が?」

「だーめだこいつまた話聞いてないよ」



昼休み。
机をガタガタとくっつけ私と友達2人でお弁当を食べていた。

何かの話題で盛り上がっていた彼女達に話を振られたが、残念ながら話を聞いていなかった私にはさっぱり。理解不能だった。



「だから、棗は自転車部の人だったら誰推しなの?」

「……は?」



びっくらこいた。
何の話かと思えば、そんな事か。
皆大好き恋バナ〜である。



「私は断然東堂くん派かなぁ〜ファンクラブも入っちゃった〜」

「私もー!でも最近新開くんもカッコいいなって思うのー!!」

「わかるー!!」



私そっちのけで話は進む進む。

そう、我が箱根学園自転車競技部は強いだけではなく、イケメンも多い。何故か。


その中でも東堂くんという私と同じクラス、もとい彼女達とも同じクラスの男子がいるのだが、
彼にはファンクラブも付いてしまっているほどの人気っぷりだ。
まぁ…本人もそんな感じだしなぁ。

ほら、今も廊下で何人もの女子生徒と写真を撮っている。
そういえば彼とは2年から同じクラスだったな。

話したこと、あったっけ。



「それでそれで」

「棗は?」

「え」


それきた。次は私だ。
期待に満ちたような彼女たちの目に圧倒される。

推しメンなんか…考えたことすらなかったな…。



「あ、でも私わかる!棗の推しメン」

「え、まじ?」

「え」



なんと、友人の1人がそういった。
私ですら分からない私の推しメンがわかるというのか、こいつは。



「ずばり!荒北くんでしょう!!」

「ぶっ!!」

「うわ!きたなっ!!」



思わず飲んでいたお茶を噴出してしまった。
もろにかかった友人、申し訳ない。
だがそれどころじゃないのよ!!



「な、なんで荒北!?」

「だって棗、荒北くんとすごい仲いいじゃない。すっごい仲良い」

「何故2回言ったし。
そりゃぁクラスずっと一緒だし、なんか席隣になることも多いし…ていうか友達だし!」

「「え〜????」」



ニヤニヤとした友人達の顔。
あぁぁ面倒くさい、どうしてこんなことになった。



「そっか〜3年も恋してるのか〜」

「かわいらしいですな〜」

「ちょ、勝手に話進めないでよ…」

「でも私、荒北くんも棗のこと好きだと思うけどなぁ」

「!?」

「あーわかるそれ!荒北くん棗と話してるときだけすっごい楽しそうだよねー」

「ちょ、そんなわけ…」

「あ〜照れてるかわいい〜」

「ちがうから、まじ違うから」



友人達の話の進むスピードははやい。
あれよあれよという間に彼女達の妄想は進んでいく。
友よ、張本人の私を置いていくな。



「棗は顔もかわいいし、性格もいいし、文句なしじゃない?」

「そうね〜棗モテるもんねぇ、ただちょっとおっさんくさいところはあるけど」

「ねぇ褒めるなら最後まで褒めて、ねぇ」

「むしろ荒北くんにはもったいないかもね」

「それな〜」

「ちょ、失礼だから…」



2人はあははと腹を抱えて笑っている。
私はもうどうすれば状態だ。

そのときだった。



「徒野ー」

「げ、荒北」

「「あららららら〜??」」



なんてバッドタイミング…空気読めこいつ。無理か。
何も知らない荒北はずかずかと私に近づいてくる。
友人達のニヤケ具合はもうマックスだ。



「な、なに?」

「アー…今朝の礼すっからァ、購買行こうぜェ」

「「今朝の礼!!?」」

「アァ?」

「ちょ、うるさい!荒北いこう!!」



完全に勘違いしている友人の叫び声に、さすがの荒北もびっくりしていた。
これ以上面倒くさいことになるのは嫌なので、説明は後にして荒北を連れて教室をでた。





もう…2人して勝手なことばっか言ってさぁ…




(大体私は、もう…)






人好きになることなんて


無理なんだから…









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