WE ARE HAKOGAKU!!

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「ふぅ…ざっとこんなもんだろう!!」


東堂のやりきったような声が聞こえ、私は閉じていた瞼をゆっくりと上げた。
すると目に入ったのは、キラキラとした4人の顔。


「お、おぉぉぉ…すえげぇ棗じゃないみたいだ!!」

「ハッ、化けすぎだろォ」

「綺麗だぞ、棗」

「わっはっは、俺の手にかかればこんなもの御茶の子さいさいだ!」


若干1名失礼な奴がいたが気にしないでおこう。
私は近くにあった手鏡を持ち上げ、自分の顔を写す。


「……うわ」


そこにいたのは、自分ではない誰か。
以前自分がしたような簡単な化粧ではなく、尽八の手により細部まで施された完璧な化粧。

確かに、化けすぎである。


「よし、では行くか棗!」

「は?」

「いやぁ楽しみだな、棗」

「ちょ、ちょっと」


私の腕をがっしりと掴み持ち上げた尽八と隼人。私は訳もわからず頭にハテナを浮かべるが、そんな私を無視し4人は歩き始めた。








*******




「…え、徒野さんですか?」

「すげぇ…本当に美人だったんスね、徒野さん」

「黒田シバく」


まず連れていかれたのは学校の外。近くのフードコート。そこにいたのは泉田と黒田だった。荒北の手により(?)すっかり生意気と化した黒田の頭をガシリと掴み力をいれると、悲鳴をあげた。


「ってて…それよりこれやったのが東堂さんって何気凄いッスよね」

「ふふふ…そうだろう、もっと称えてもいいのだぞ」

「東堂ウッゼ」

「うざくはないな!」


はしゃぐ2人を無視し、私は寿一に寄り添う。もうやだこいつら怖い。

しかしそれを見つけた隼人が私たちに近づき、いつものお得意のヒュウ!という声をあげた。殺すぞ。


「何で寿一にくっついてるんだ?棗」

「寿一が一番安全だから」

「む、そうか」

「寿一だって、おめさんが美人になってしどろもどろしてるぜ」

「そんなことない。」

「…いや、少し緊張している」

「え?」


顔をあげると、確かにほんのり頬の赤い寿一が目に入った。うわ寿一、かわいい。


「でも先輩方、いいんですか?」

「何がだ?」

「棗さんがそんなに可愛くなってしまったら、棗さん色んな男性に好かれてしまって、恋人もあっという間にできてしまいそうですよ」


「「「「………。」」」」

「…なに」


泉田のその言葉に4人は一斉に私を見た。
なんだ見るな私をこのやろう。


「無いダロ」

「うむ、無いな」

「いやぁ、はは」

「……。」


最上級に失礼な荒北、尽八。そして笑って誤魔化す隼人と黙る寿一。寿一以外全員地獄に落ちればいいのに。


「よし、腹も減ったことだし何か食べようぜ!」

「アァ?てめェさっきも何か食ってただろーが」

「別腹ってやつだぜ」


そう言ってとあるパフェの店にバキューンポーズを決める隼人。で、でた!隼人の絶対仕留めるって合図!!

溜め息をつきながらもそれについていく東堂と寿一と荒北。私はそれよりもトイレに行きたくなってしまい、4人に告げて1人トイレへと向かった。








******




「ふー、すっきりした」


トイレから出ると、フードコートには先ほどよりも人がたくさんいた。
そういえば席、どこだっけ。


「うーん、どうしよう」

「ねえねえ」

「ん?」


遠くを見ながら溜め息をこぼしていると、後ろから声をかけられた。振り向くとそこにいたのは、知らない制服の男子生徒3名。恐らく隣町の高校生だろう。


「な、なんですか」

「いや、なんか迷ってるのかなぁと思って」

「え、なんでわかったんですか!」

「どうしようかなぁ〜って言ってるの聞こえてさ」

「そうそう」


ニコニコと笑っている4人組み。なんだ、とても良い人そうだ。私も警戒心をとき、微笑む。


「てか君かわいいね、1人?」

「え、か、かわいい?」

「え、かわいいよ」

「うん、めちゃくちゃタイプ」

「え、そ、そんな…」


顔が熱くなっていくのがわかる。かわいいなんて初めて言われた…お世辞かもしれないが、記憶にある限り高校ではモサいとかブスとかそんなことしか言われてこなかった。主にあの箱学3バカにである。

3人はそんな私にニコニコと微笑み続けていて、そして私の肩に手を置いた。私はそこで一瞬寒気が走った。


「もし暇ならさぁ、俺たちと遊ばない?」

「え、や…連れがいて…」

「あとでそこまで送っていってあげるからさぁ」

「いやでも、心配するかな…はは」

「そんな固いこといわないでさぁ、行こうよ」

「ちょっ…」


無理矢理腕を引っ張られ、よろける。
うそ、どうしよう、なんだこれ。初めての体験に私は頭がパニックになり、抵抗がきかない。

頭の中では走馬灯のように今日の出来事が駆け巡る。フードコートに来なければ、そもそも尽八が私に化粧を施さなければ、こんなことにならずにすんだんじゃないか。

…いや、違う。世間知らずの私が悪いんだ。

なにこれ、私、死ぬの?


そう大げさに思っていると、後ろから男子高校生たちに引っ張られていないほうの手が引っ張られた。


「オイ」


そして聞こえたのは、不機嫌そうな声。


「っ荒北!」


後ろを振り向けば、いたのは荒北。私の手を思い切り引っ張っている。痛い。

男子高校生たちはそれに対し「なんだよお前」と威勢よく放っていたが、荒北の睨みに肩をあげたかと思うと、呆気なく逃げていってしまった。


「…荒北、あの」

「なにしてんだヨてめェはァ!!」

「あでっ!」


お礼を言おうと口を開いたら、頭を殴られた。痛い。女子にする行動じゃない。

そのあとは荒北と一緒に無事にみんなの元へとたどり着き、荒北含め皆に先ほどの出来事をもうまいっちゃったよ〜といった風に説明した。そのときのみんなの顔は、なぜか怖かった。



そして翌日から、なぜか皆に私が化粧をすることを禁じられたのであった。









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