WE ARE HAKOGAKU!!
□16
1ページ/1ページ
「もさいな、やはり!」
A定食の里芋の煮っころがしを食べながら、尽八が叫んだ。
今はお昼。
悲しいことに未だに女友達ができない私は、尽八寿一隼人荒北と昼食を一緒させてもらっていた。
今日の部活はどーするだとか、さっきの授業はどーだった次の授業は面倒くさいだの、色々な話をしていた最中、事件は起こった。
そして冒頭へと戻るのである。
「なに、そんな里芋もさかったの」
「そうだな、今日の里芋はいつもより…
って、里芋の話ではない!」
そう言って尽八は私をビッと指差した。味噌汁を飲んでいた寿一、パンを頬張っていた隼人、ベプシを飲んでいた荒北それぞれの視線が私に集中する。
「お前のことを言っているのだよ、棗!」
そして、尽八は叫んだ。私に向かって。
しばしの沈黙が続いた後、他の三人はあぁ…とか言ってまた食事し始めた。
てか、え、まて。
「………私!?」
************
「というわけで、今日はこんなものを持ってきたぞ!」
次の日、部活が休養日の日。
放課後尽八が私の目の前に差し出してきたのはポーチだった。
「……なにこれ」
「もさい棗が少しでも美しくなれるよう、俺のちょっとした心遣いさ」
「うん、質問に答えてほしいなぁ」
「あれ、なんだいそりゃぁ」
「あ…隼人、荒北…と、寿一も」
自分のした心遣い(お節介)に酔いしれているのか高笑いする尽八の後ろからひょこりと現れたのは隼人と荒北と寿一。またこのメンバーか。
「おい東堂、ナニコレ」
「む?だからこの山神のちょっとした心づk」
「だぁから!何が入ってるって聞いてんのよ!」
痺れをきらした私はジッとジッパーをやや乱雑にあける。
そしてその中に入っていたものは、少々予想より外れていたものだった。
「……化粧、道具?」
そう、入っていたのはよく雑誌などで見かける、女の子が大好きな化粧用品だった。
「尽八…あんたついに女装にまで走って…」
「ち、違う!姉が謝って俺の荷物に混入させてしまったものでだな…!!」
(絶対お姉さんのイタズラだな)
心でそう思いながらも、化粧用品を恐る恐る取り出す。どれもこれも高級そうなやつばっかりだった。さすが尽八のお姉様…お肌に気を使って高いの使用していらっしゃるのですね…。
「そういやおめさん、化粧なんてしたことあるのかい?」
「いや、入学式のとき以来かな…なんか部活もあって落ちるし、面倒くさいし…」
「ハッ、もさ女が」
「うるさい歯茎北」
「ンだとコラ!」
「やめろ、お前達」
寿一に止められ、イギギギとにらみ合ったあと、フンッと荒北とお互いそっぽを向いた。
確かに、化粧というものがなんだか面倒くさくて手を出していなかった。でも皆化粧なんて全然してなかったし、私もしなくて平気じゃーんと思っていた。
が、しかし。最近になってというか学年が上がって、皆華やかになってきた。スカートも短くなったし、髪も染めてるし、化粧もバッチリ。私はその一大変化ビックウェーブに乗る事ができず、置いてけぼり。
そう、尽八の言う"もさい女"のままなのだ。
「棗、お前は元が良いのだ。この東堂尽八と同等というほどに!」
「いや、棗のが綺麗だろ」
「隼人、少しお口チャックだ。」
「…尽八と同等って喜んでいいのかなぁ」
「喜べることだろうが!!!!!!!」
ごほんと1つ堰をして、昨日同様また私をビシリと指差した。折りたい。
「棗、オフの日だけでもいい、今日だけでもいい。変わってみたいと思わんか?」
「いや、別に…」
「お も わ ん か ?」
「…オモイマス」
半ば強制的に頷かされると、尽八はニッコリと微笑んだ。なんだか嫌な予感しかしないぞ。
「それではこれより!
第1回、徒野棗のドキドキ☆大変化計画を執行する!!」
なんだその計画!
ツッコむ前に、私は荒北と隼人に取り押さえられた。
あぁ神様、
こいつら殴り飛ばしてください。
*