WE ARE HAKOGAKU!!

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「そう、この前置詞を使うにはこっちを原型にして…」

「うーん…こうか?」

「そうそう、合ってるよ」



某日。
先日寿一が提案した勉強会を、現在私達は学校の空き教室で行っていた。

私は文字通り先生役をしていて、先ほどまで教えていた国語の時はもちろん、今は英語も教えている。実際どこをどう教えていいのかわからないが、彼らもわからないところは聞いてきてくれるので、教えやすい。

そして今、教科書とノートをひたすら睨めっこしている隼人に英語を教えていた。


「じゃあ次ここやってね」

「棗!次は俺にも教えてくれ!」

「棗すまない。俺にも頼む。」

「はいはーい、じゃあまずは尽八から」


隼人が終わったと思えば、次は尽八、寿一からお呼びがかかる。2人は4人の中でも、というか普通に頭は良い方だから、教えるのにも時間はかからないし飲み込みも早いし、負担?ではなかった。

ただ、問題なのは…


「そう、今ここでこの文の前半の意味になるから、次はここをy
「アークソ!やってらんねェ!!」

「腹が減って死にそうだ…」


尽八のが終わって、寿一の質問への回答に差し掛かったとき、1人の大きな声が私の声を掻き消した。その声の正体は、先ほどから私に質問のしの字もしてこなかった荒北。

そしてそれにのっかって机にバタンと倒れたのは、隼人。


「ちょっと荒北、うるさい」

「アァ?コッチャァ勉強で疲れてんだヨ」

「とか言いながらあんた問一から進んでないじゃん」

「ッセ!」

「やめろ、お前たち。」


私と荒北がイギギと言い合いを始めると、寿一が止めに入った。私はその後寿一のをスラスラと教えて、彼が理解したことを確認してから、私は問題児2人の元へと近づいた。


「はい荒北くんお勉強しましょう。隼人にいたってはさっきまでちゃんと真面目にやってたじゃんか」

「ンだヨその俺が真面目にやってなかったみてーな言い方ァ」

「だってあんた白紙じゃない」

「ッセェこんなんわかるワケねーだろ!」

「靖友は最初から携帯イジッてたぜ」

「荒北ぁぁぁ…」

「オイコラテメェ!!言うンじゃねェヨ!!」

「いでっ」


真実を隼人の口から言われた荒北は隼人の頭をボカッと殴った。痛そう。
私はため息を1つしてから、荒北のプリントに書き始めた。


「テンメ何してッ…」

「これ、ちょっと応用問題なんだと思う」

「ア…?」

「ここをもう1つの意味で訳すの。それを見分けるには前後の単語で見分けるしかないから」

「……こーゆーコトかヨ」

「そうそう、あってる。全然できるじゃん、英語」

「ッセ」


私が褒めると、荒北はそっぽを向いてしまった。照れているのか、かわいい奴め。


「棗、俺はここがわからないぞ!!」

「あぁはいはい」


今度はまた尽八から呼ばれ、そちらに足を向けた。


それから数時間、数学以外の教科を途中から寿一も先生役となり、3人に教えた。


















***********






あれから、2週間後。
期末テストを終えた私達は、部活終わりに部室でお互いのテストの点数を見せあいっこしていた。

いっせーのーせで一枚ずつテストの解答用紙を見せ、そして歓声をあげた。


「みんな!やったね!赤点1つもないじゃない!!」

「わっはっは!俺はやはり顔だけでなく頭脳明晰でもあったのだな!」

「でも尽八、今までで一番最高得点だろ?俺もだけどな」

「ハッ、ざっとこんなもんだろ」

「今回の期末は自己ベストだ」


皆嬉しそうに自分の解答用紙を見る。確かに勉強会は開いたが一回だけだったし、皆あれから自分でたくさん勉強したんだろうなと、私まで嬉しくなってしまった。


「皆お疲れ様。やっぱりすごいね」

「すごいのはおめさんだよ」

「え?」


隼人の言葉に私がそう聞き返すと、先ほどまで自分の解答用紙をうっとりと眺めていた皆は、私のほうに向き直っていた。


「棗、お前が自分の勉強時間を割いてまで俺たちに勉強を教えてくれたおかげだ。礼を言う、ありがとう。」

「!!」


寿一がそう言って頭を下げると、皆が同じように頭を下げてきた。荒北はペコリぐらいだったが。


「ちょ、とみんな…大げさだから!それに、私の力だけじゃないし、皆が必死に勉強したからだよ!」

「おめさんがわかりやすい解説用紙作ってくれたからさ。ありがとな。」

「ま、ちょ、やめようよ…みんなの気持ちは十分伝わったから!ほら早く帰ろう!!」

「わっはっは、恥ずかしがっておるのだな棗!」

「うっさいカチューシャ割るぞ」

「なぜ俺だけ塩対応なのだ…」


尽八の言葉に皆が少し笑って、それじゃあ帰ろうということになり、部室から出た。
皆は自分のロードバイクにまたがり、寮に向かう。私もそうだ。

私がガチャガチャと鍵をはずしていると、ふと横に誰かの気配を感じた。顔を上げると荒北だった。


「あれ、どうしたの」

「…いや、」

「?」

「………アンガトネェ」

「…え!?」


あの荒北が、お礼を言った。
それだけで私は驚きだったのに、あろうことか荒北は私の手のひらに飴を1つのせてきた。

ポカンとする私に、荒北は目もくれず、みんなが待っている場所にロードバイクでシャーッと走って行ってしまった。




「……雪降るな、明日」



私はボソッと1人でそう呟いてから、ロードにまたがり、荒北同様みんなの元へとむかった。









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