WE ARE HAKOGAKU!!
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寒い寒い冬が終わり、春を迎えた。
マネージャー業がまぁまぁ板についてきたのはもちろん、なんとなく部員との距離も縮まり、ロードバイクをいじる回数も増え、さらに難しい技術も学べたこの冬。
それは部員達も同じのようで、彼たちの技術もさらに向上、しかもこの春の真鶴ロードレースでは荒北が初優勝を成し遂げた。もちろん他の部員達も活躍している。
そんなこともあってか、部員達同士の距離もグッと近まっていた。
そんな彼らは、今日も元気にロードバイクに乗っている。
「おい荒北!俺のカチューシャを投げるな!」
「ア!?ウッセェ邪魔なんだヨ!ンなとこ置いてんじゃねェヨ」
「なんだと!さては俺の美形に嫉妬して、こんな真似を…」
「誰がテメェに嫉妬なんかすっかよバァカ」
この2人は距離が縮まったのか、はたまたさらに広がったのかわからないが、最近よく言い合いをするのを見かける。
私はそんな光景を横目で見て、ボトルにスポーツ飲料を入れていく。
今日は少し暖かいから、ジャグも出そうかな。でもボトルでも足りるだろうか。いやいやどうする。そんなことを考えていた。
「徒野、今日このメニューやるから、色々準備しといてくれ」
「あ、はい分かりました。」
先輩に今日のメニューを渡されて、私はボトルの中身を作る手を止めた。
メニューを一通り見て、急いでボトルに中身を注ぎ、私は倉庫へと向かった。
必要なものを手早く取り出し、倉庫の外へと並べる。今日はこんなものか、重いものもないし楽でよかった。
「棗!今日も俺の走りを見ていろよ!」
「うん仕事が終わってからねー」
「棗、外周終わったらおにぎりよろしく」
「あーあまってるからあげるよ。…ってなんで余ってるの知ってるの」
「棗チャァン、ベプシ買っといてヨ」
「ナチュラルにパシるのやめて、荒北」
「棗、重いものを持たせてしまいすまない」
「ううん、今日は重くないから大丈夫だよ。
4人ともいってらっしゃい」
私の前を颯爽と通り抜けながら一人ひとり言葉を私に投げかけて、4人は外周へと向かった。
特に仲良くなった尽八、隼人、荒北、寿一。
彼らはとても強い。きっとこの歯声学園の戦力になる。
「インターハイ、勝ちたい」
私は胸をギュッと握り締めながらそう呟いた。
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練習が終わり、部室。
他の部員が帰る中、私と寿一が作成している今日の練習ノートを書くべく部室に残ったのだが、そこにはなぜか尽八、荒北、隼人もいた。
彼らは特になにかをするでもなく、3人で話している。
そこから聞こえてくるのは、あと1週間ほどでくる学年末試験のことだった。
「お前たちまだ勉強を始めておらんのか。」
「いやあ、なんだか集中できなくってな…」
「ハッ、そんなんだから赤点とるんだヨバァカ」
「でも、靖友も赤点とってたろ?」
「ッセ」
どうやら彼らは勉強方法や迫りつつある赤点に必死なようだ。
前回というか私は今まで赤点はとってことはなかったし、勉強もそこまで着いていけてないというわけではない。
ただ、数学は苦手だけど…。
「なぁ、棗とか勉強得意じゃなかったっけ?」
「え、まぁ、数学以外なら」
「そうだよな、2学期の期末の順位クラスで5位だったの知ってるんだぜ」
「ちょっとなんで知ってるの」
「「5位!?」」
隼人がそれを言うと、荒北はもちろんなぜか尽八まで食いついてきた。こわい。
「棗、頭よかったのだな」
「ばかにしてるよね、尽八」
「お前のことバカだと思ってたワ。人間て見た目じゃねェのな」
「おぉぉストレートなバカに仕方」
2人の発言に若干の苛立ちを覚えながらも、私はノートを進めていく。が、寿一がそこで動きを止めた。
「俺たちは王者だ。…の前に、学生でもある。
勉強を疎かにし、ロードに支障がでるのも避けたい。」
ので、と寿一は言葉を続ける。
なんだか、嫌な予感がする。
「棗を先生とし、勉強会を開くぞ」
*