短編

□人の物
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*それは 喧騒に溢れた
休み時間の教室での出来事*


俺の机を挟んで二人。
じゃんけん。俺は負けた。


「人の物って
どうして欲しくなるんだろ?」


卑怯な後出しジャンケンで
俺から限定ケシゴムを奪った
あいつが告げる。


【知るかよ、いらないなら返せ】


俺が奪い取ろうとすると、
大げさに仰け反って、回避する。


「いるよ、いるいる。
だって、大事なんでしょ?」


あいつが笑いながら、ケシゴムの眺める。
太陽にかざしたところで、
何にも見えねえよ。と、
突っ込んでやりたい。


【お前のその癖、どうにかしろよ。
人の物ばっかり欲しがるの】


ケラケラと笑って、あいつは言った。


「人の物じゃなくてさ。
あんたのものだから、
欲しいって言ったらどうする?」


俺は答えられずに、黙ってしまった。
すると、俺の机の上に
先程まであいつが握っていた
ケシゴムが置かれた。


「だからさ。これはもういらない。
あんたのじゃないもん」


ひらひらと手を振って、友人のもとへと
走っていくあいつの後ろ姿に
俺は少しだけ手を伸ばしかけて
結局、ケシゴムを掴んだ。


【なら・・・
俺がお前のもんになったら
お前は俺を――】

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