短編

□アイスの味
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*それは 夏の通学路での出来事*

コンビニでアイスを買った彼女は
すぐさまにそのビニール袋から
お目当てのアイスを取り出して、
口に含んだ。


そして、間髪いれずに喋りだす。
足取りは軽い。暑さのせいか
少しだけふらついていたけど。


「断然、味はメロンのほうが好きなの。
でもね、色はスイカの方が好みなわけ。
でもね、スイカバーとメロンバーなら
断然、スイカなんだけど、
フツーのアイスクリームなら、
やっぱりメロン味がいいんだよ」


そう言いながら、
彼女は
マンゴー味のアイスを口に含んだ。


「でも。コンビニのアイスなら
やっぱり白くまに敵うものはいないし
ソフトクリームはやっぱりバニラがいいの」


そう言いながら、
彼女は
マンゴー味のアイスを口に含む。
そんな彼女に質問がいく。


【じゃあ。
なんで、今日はマンゴーにしたの?】


彼女は、呆れたように口を尖らす。


「わかってないなー。
気分に決まってるじゃんか、そんなの」


彼女は、本当にわかってない。と呟いて
またマンゴー味のアイスを口に含む。
彼女の隣を歩く
彼女の友達は
そんな彼女の言葉に呆れていた。


「でも。やっぱりアイスは――」


彼女の言葉が信号機が変わって動き出す
有象無象の雑踏にかき消された。
僕も歩き出す。


僕は今日も勇気が出なくて、
君に「また明日」を告げられずにいた。


そんな夏の午後の出来事。

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