と宝物

□記念リクエスト
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???様リクエスト
鮫鼬死後話しでハッピーエンド
−−−−−−


【会いたい、会えない】



目が覚めると、そこは故郷の霧隠れの里だった。



「私は死んだはずでは…?」

なぜここにいるのか思い出そうとしても、首に喰らいつこうと襲いかかる鮫の姿を最後に記憶が途切れている。

何か手掛かりがないかと辺りを見渡すと、違和感があった。なぜだろう、しばらく考える。
気付いた時、少しだけ背筋が寒くなった。

無音。
風が木々を揺らす音も、雑踏も、なにも、聞こえない。
それと、霧隠れ特有の寒さと視界を遮る霧が無く、過ごしやすい気温と湿度を保っている。

ここは鬼鮫の知る霧隠れではない。なら、どこだ此処は。


「オイ、そこの若造!新参か?」

沈黙を破り、人の声が響く。
声のした方へ振り返ると、霧隠れに住まう忍なら誰もが知っている人物が居た。

「二代目水影様!?亡くなられたはずでは…?」

「死んでるに決まってるだろ。こんな若々しい爺がいてたまるか」

暁にそんな爺が一名いました、などと無駄話しをしている場合ではない。

「ここは、死後の世界なんですかァ?」

「そうみたいだ。思っていたのとだいぶ違うけどな。説明してやろう、長くなるからな、そこの店入るか」

水影は近くにあった無人の茶屋に入り、説明を始めた


この死後の世界は生前、生き別れになった者や理由があって一緒に居られなかった者が来る場所。
世界はこの世界に来た者の記憶で出来ており、故郷や死んだ場所が一つ一つ島や箱庭のような形になり、空中に浮いていて、虹色の橋で行き来ができる。
好きに世界を巡る事は出来るが


会いたい人に会えない。


「会えない…なぜですか?」

「オレはな、死んでから何十年も探してるのに未だに会えてないんだ。他の奴らもだ。白っていう女みたいな小僧とザクっていうツンツン頭も捜し人に会えてない」

「メモとか伝言を使えば会えるのでは?」

「メモは消えるし、伝言は忘れる。無理だ。まぁ、オレは諦めないけどな」

水影は明るい笑みを浮かべた。
何十年も会えていない人間の笑みには見えない。きっとこの人はこれからも諦めるなんて微塵も考えずに探し続けるんだろう。

「で、お前はどうするんだ?」

「探します。大切な人なんです」

「きっぱり言ったな、そういう奴は嫌いじゃない。人探しの手伝いはできないが道案内なら出来る、どこに行きたいんだ?」

「木ノ葉に…。探しているのは、うちはイタチさんです」

「木ノ葉ならここから東だ。元の世界と地形がまったく違うから迷子になるなよ?」

「はい、色々とありがとうございます」

鬼鮫は椅子から立ち上がり、深々と頭を下げて店を出る。


「あ、そうだ伝言頼む」

呼び止められ、振り返ると水影は明るい笑みを浮かべて言った。

「無っていう全身が包帯まみれの奴にあったら『遅ェよ馬鹿』って言っといてくれ」

「はい、必ず」





鬼鮫は木ノ葉へ向かうため、木の隙間を飛ぶように駆ける。途中、疲れたわけでもないのに足が止まった。何か忘れたような気がした。なんだったろうか。でも、忘れてしまったという事は多分たいした事ではなかったのだろう。
鬼鮫は思考を放置して、木ノ葉へと向かった。




木ノ葉隠れも霧隠れと同じだった。
無音の町並みを走り抜け、うちは一族の住まう一角へ向かうが誰も居なかった。
なら、死んだ場所にいるのだろうか。鬼鮫は里の出口へ向かう。

途中、茶屋の外に置いてある赤い長椅子に寝転がる人が居た。長い黒髪に迷彩柄のズボンにマフラー、額当てには音のマーク。

「お嬢さん、こんな所で寝るなんて、はしたないですよォ」

肩を軽く叩くと女の子はけだるそうに起き上がった。

「…うるしゃい」

寝起きのため舌ったらずな言い方になっている。思わずクスリと笑うと睨み付けられてしまった。

「すみません、可愛かったので、つい」

可愛いと言われたのが気にくわなかったらしく、足を軽く蹴られた。

「痛い痛い」

「嘘つくな。…で、なんの用?」

「うちはイタチという方を探しているんですがァ…どこかで会いませんでしたか?」

「イタチ…?知らない。私は再不斬とデイダラとしか会ってない」

「そうですか…」

「もういい?寝たいんだけど…」

「私には聞かないんですかァ?貴女も誰かを探しているんでしょう?」

女の子は寝転んで、呟くように言った。

「どうせ会えない……疲れた…。…ずっと寝てたい……」

「…会えますよ、絶対。貴女と会いたい人の名前を教えて下さい」

「私はキン………会いたい奴はザクとドス」

「二人に会ったら、キンさんは木ノ葉に居ると伝えておきますね」

「…………ありがと」




道中、鬼鮫は迷ってしまった。
イタチが死んだ場所、うちはのアジトが見つからない。生前の世界にあった場所には大きな滝があるだけだった。

「困りましたねェ…」

「…鬼鮫か?」

背後の物音に振り返ると、角都が居た。

「角都さん、お久しぶりですねェ」

「ああ。…ところで、」

角都は言いかけて空を見上げた。
つられて鬼鮫も見上げるが、空には何もない。

「どうしたんですかァ?」

角都が鬼鮫の方に視線を戻した次の瞬間、空から落ちて来た大きな鎖が角都を貫いた。

「角都さん!!??」

助けるために近付くと、角都の体は黒い炎に包まれた。素早く後退り、様子を窺う。

「これは、いったい…」

意識は無いようだが体は燃えていない。近くに寄って観察すると炎ではなく、黒い半透明の蛇を寄せ集めた固まりがうねっているため炎のように見える事が分かった。

「まさか、大蛇丸!?」

近くに居るのかと警戒するが人の気配はない。

代わりに遠くの空に鎖を数本見つけた。
もしかしたら、あの鎖の下にイタチさんが居るかもしれない。
すぐに向かいたいが、こんな状態の角都をほって置けない。
鬼鮫はしばらく悩むと、角都に深々と頭を下げてから別の鎖へ向かった。



最初に向かった場所には大きな爆発跡があり、中央には鎖に貫かれたデイダラが居た。

「デイダラさん…すみません」

鬼鮫はまた頭を下げてから、次の鎖へ向かった。
皆には申し訳ないが、鬼鮫はなによりもイタチを優先して助けたかった。



「イタチさん!!」

イタチは砂隠れの里に居た。近くにはサソリも居たが二人共、鎖に貫かれている。

鬼鮫はすぐに助けようと鎖に手を延ばす。しかし…。

「っぐ!」

見えないものに阻まれ、吹き飛ばされた。
二度、三度繰り返しても結果は同じ。
こんなに近くにいるのに助けられないなんて…。生前と同じ状況に鬼鮫は悔しくて悲しくて、歯ぎしりして俯く。


あれからどのくらい時間が経っただろうか。どこからか薄い氷が砕けるような音がした。

イタチの近くに座り込んでいた鬼鮫は立ち上がる。音のした方向ではサソリの鎖に亀裂が入り、ゆっくりと砕けていった。

解放されたサソリが倒れる。鬼鮫は地面に落ちないように支えた。

「サソリさん、大丈夫ですか?」

「ぁ?…鬼鮫か?そういえばお前は穢土転生してなかったな」

「穢土転生?」

「カブト…大蛇丸の元部下が使った術だ。死んだ人間の魂を縛って使役しやがる。胸糞悪い術だ」

魂を縛る。鎖がその役目をしているのだろうか。

「サソリさんはどうやって術を解いたんですかァ」

「あぁ?…聞くな、絶対言わねぇからな」

サソリは不機嫌な顔でそっぽを向いた。少しだけ頬が赤くなっている。

「な、なにをされたんですか!?」

「違う、変な意味じゃねえ!…イタチもそのうち解放されるだろうから安心しろ。あいつは俺よりも素直な奴だからな」

「…?サソリさん、なんだか丸くなりましたねェ」

「っうるせぇ」

サソリはまた顔を赤くして、足を蹴ってきた。

「痛い痛い。ああ、そうだ。途中でデイダラさんが居ましたよ。早く行った方がいいのでは?」

「っち。そういうのは早く言え」

サソリは居場所を聞くとすぐに向かった。珍しく焦って走り去る姿を見て『やっぱり丸くなってるじゃないですか』と呟いた。



待つ時間をこんなに長く感じたの初めてだ。
イタチがサスケとの決着をつけにいった時、生きて帰ってほしいと願う時間は恐ろしいほど短かったのに。
鬼鮫は息をもらし、イタチに向けて手を伸ばした。

その手に呼応するようにイタチの鎖に一つのヒビが入った。
ヒビの波が広がり、砕けて解き放たれる。
倒れ込むイタチを、もう二度と離さないと、強く抱きしめた。

「鬼鮫…?」

目を覚ましたイタチは泣き出してしまった。

「…なんで居るんだ」

イタチは自分と会いたくなかったのだろか。なら、何故イタチはこの世界に…。
あぁ、そうか。イタチさんが会いたい人はサスケ君か。
イタチから離れようとした、…が何故か抱きしめられた。

「…イタチさん?」

「穢土転生のメンバーにいないから、…生きているんだと…お前には生きていてほしかった……」

鬼鮫はイタチを強く抱きしめた。

「ごめんなさい、イタチさん」

疑ってしまったこと、死んでしまったことを詫びた。




「これから、どうしましょうか?」

「そうだな……とりあえず、団子が食べたい」

「病気で食べれなかった分、いっぱい作りますね」

二人は微笑みあうと、どちらも離さないようにしっかりと手を繋ぎ歩き出し、そして光に包まれて消えていった。






END





行き先は天国

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