と宝物
□記念リクエスト
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レベッカ様リクエスト
鮫角裏
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【からかい】
暁本部の会議場。
ここでは月に一度、暁メンバー達が角都と一対一で話し合いを行う。内容は金について。幾ら使ったのか何に使ったか、足りない多い等。メンバー達はほぼ全員、無駄遣いばかりなうえに足りないと言って、角都と言い争いになる。唯一、言い争いをした事が無いのは鬼鮫だけ。
その鬼鮫との話し合いは1番まともで、そのうえ茶菓子を持ってくるから、角都は鬼鮫との話し合いを楽しみにしていて、順番を最後にし、ちょうど3時になるよう調整までしている。
「ふむ…やはり今回も無駄遣いしなかったのはお前だけだな、鬼鮫」
「ええ、まぁ。誰かさん達みたいに粘土や人形で幼稚に遊ぶ趣味もありませんしねェ」
テーブルを挟み、向かい合う形でソファーに座る鬼鮫は1番無駄遣いをする芸術コンビを遠回しに馬鹿にし、ククッ…と笑む。
「ふっ…。ん、一つ気になるんだが…この出費はなんだ?」
提出させた書類の出費欄に『処理代』と書かれており、意味が分からず尋ねる。
「処理って言ったら、性欲処理の妓楼代でしょう?昔は違うんですかァ?」
「なっ…」
「あまり無駄遣いしたくないので、普段は我慢してるんですけどねェ。ほら、私はご覧の通りの外見なので、飛段さんのようにそこら辺でナンパとか出来ないんですよ。かと言って無理やりだと、きつくて気持ち良くないですからねェ、アレなら道具でも使った方がよっぽど……ん?」
無駄遣いではない事を分かってもらおうと話し続けていた鬼鮫は角都の様子に気付き、言葉を止めた。
顔が明らかに赤い、それに眉間のシワが普段よりも深くなっている。
「猥談、苦手なんですかァ?」
コクリ、と僅かに頷いた。若く見えるけど、やっぱり年寄りなんだな、と思わず笑む。
「ククッ…だからって赤くなるなんて、童貞じゃないんですから」
「………童貞の何が悪い」
時間が止まったように感じたのは気のせいじゃないはずです、と後に鬼鮫は語った。
まさか、91歳のサドで相方殺しで有名なS級犯罪者が童貞!?
「その言い方だと、角都さんが童貞のように聞こえますがァ…。ち、違いますよねェ?」
「…五月蝿い…死ね」
俯き、見ようによっては泣きそうに見える。
この純情な年寄りをからかったらさぞや面白いだろう。鬼鮫は立ち上がり細く笑むと、角都の反応を見ながら、ゆっくり近付いた。
「…鬼鮫?」
何故笑むのか理解出来ず、問い掛ける角都の肩をゆっくり押し、ソファーへ背もたれに押し付けた。
「どれだけ気持ち良いか、教えて差し上げましょうか?」
「…っ冗談はよせ!」
肩に触れている手を素早くたたき落とした。
「おや、残念。まぁ、仕方ないですね。私みたいに醜い奴にされるなんて誰だって嫌でしょうし」
自嘲するような薄笑いを浮かべ、叩かれた手をさする。
「…自分をそう卑下するな」
「本当のことですからねェ。現にほら…」
再び手を伸ばし、指先で肩を撫でる。しかし角都は叩き落としも、逃げもしない。
「おや?」
「…お前は醜くない、これで分かったろ。……今日はもう帰れ」
鬼鮫は背中に心地良い泡立ちを感じた。
からかうつもりだったのに本当にこの人を鳴かせてみたくなってしまった。
「角都さん、どうしてくれるんですか…」
「…な、なんだ?」
両肩に手を乗せ、マスクごしに囁く。
「貴方の事、好きになってしまいました」
驚いた角都はのけ反り、体重を支えきれなくなったソファと共に後ろに倒れた。
「あーあ、大丈夫ですか?」
「っ…だから、冗談はよせと言っただろ!!」
「冗談じゃないんですよ」
驚きで身動きのできない角都を抱き起こし、そのまま抱きしめた。
「……好きと言われてもな」
「嫌なら嫌でいいですよ?私が一人傷つき泣き暮らすだけですから」
「…お前のそういう所が嫌いだ」
「よく言われます」
鬼鮫はまったく気にせず、いつもの笑みを浮かべる。
角都は視線を反らし、しばらく考え込んでから言いにくそうに言った。
「…仮にお前を好きになったとしても………」
「しても?」
「俺は……不能だから、相手はできん」
「それは…。今まで相手した方って女性だけですか」
「当然だろ」
鬼鮫は一つの考えに致る。
確認しようと、角都のマスクを取り払い口付けをした。
「んぅ!?」
角都が抵抗したのは始めのだけだった。肩を叩いていた手は次第に弱まり、縋り付くようなコートを握る。
鬼鮫は視線だけ下半身に向け、内心細く笑む。
舌を吸い、ズボンに手を滑り込ませ不能なはずの精器に触れる。その瞬間、角都は口を塞がれたまま「ひぅ!」と甘い悲鳴を上げた。
「反応してるじゃないですか」
口を解放して低く囁くが角都は息をするのに精一杯で何も言えない。
「貴方の時代は同性愛は禁忌ですからねェ…。だから今まで気付けなかったんですよ…本当は男が好きだって、ね」
説明をしている間、手を絡ませ快感を与える。
「聞いてますかァ?」
聞こえているが口から漏れるのは喘ぎ声だけだった。
「ククッ…。人の手で感じるなんて初めてですもんねェ。話しは後にしますか」
「っは、あ!鬼鮫…き、さめ…っ…ぁ!」
「泣かないで下さいよ。怖いんですかァ?…大丈夫ですよ、ちゃんと目覚めさせてしまった責任はとりますから」
頭を撫でて強く抱きしめる。それが追い撃ちになったのか、角都は身を震わせて鬼鮫の手に白濁を放った。
「角都さん、大丈夫ですか?」
「………」
事後、角都は鬼鮫にしがみついたまま動かず話しもしない。
怒っているのか、喜んでいるのか分からず鬼鮫は困っていた。
「角都さーん?」
固い黒髪をすくように撫でる。すると胸に埋めていた顔を僅かに覗かせ、目線だけ向けた。
「…お前、責任をとると言ったな」
「ええ、責任をとって…」
「…責任で付き合われたくない」
鬼鮫の言葉を遮り言うと、また顔を埋める。
どうやら、照れているようだ。
ああ、可愛い。鬼鮫は顔が見たくなり声をかける。
「角都さん」
「………なんだ」
答えてくれても、顔は上げない。ならば、と鬼鮫は言った。
「角都」
「な、なんだ」
初めての呼び捨てに驚き顔を上げる。
「愛してますよ」
角都はそれから一時間近く、顔を埋めたままだった。
END
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