賛美歌

□気付いた
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最近、気が付いたんだが…。
俺は戦闘時は優位だが、普段の生活では鬼鮫の足を引っ張っている。

まず俺は家事が出来ない。
今まで気付かなかったが潔癖な性質があるらしく掃除が出来ないのに綺麗な状態が好きと言うなんとも我儘な状態だ。

そして料理は当然出来ない……『男は台所に立つべからず』と無言で言っている様な家だったからな。

それだけじゃない…恋人同士の付き合い方がわからない。
甘えたい気持ちはあるんだが、いったいどう表現して良いやら…。
いっその事そこら辺の恋人達の女から写輪眼で言動を写してしまおうか。



茶屋

…良く考えれば、わざわざ写輪眼を使わなくてもよいな、観察しよう。
…まずはあの女。
「ねぇ〜、今日どこ行くぅ?」
随分と頭の悪そうな話し方だな。
「ヤヨイの見たがってた映画行こうぜ」
「うん!」
ヤヨイとやらは頷くと、ごく自然に手を繋いだ。
…な、なんという自然な振る舞いだ。
……写輪眼!


次は…。
あの女だ。
「ねぇ、昨日どこ行ってたの…」
ん…痴話喧嘩か?
「えっと…それは」
「…浮気?」
ほう、大変だな。
「違うよ!」
「じゃあ何してたのよ!」
往来でみっともないな…。
「…もうすぐ君の誕生日だろ?、だからプレゼントを買う資金を貯めようと任務を増やしたんだ」
「えっ……それなら、そう言ってよ」
甘い…。
あれらが世間一般の恋人同士か…。
参考にしたくないが、先程の恋人達のおかげで、気付いたことがある。
俺は鬼鮫の誕生日を知らん。

向かいに座り和菓子を食べる鬼鮫に向き直す。
「鬼鮫」
「なんですか?」
「…お前の誕生日はいつだ?」
予想はしていたが問うと、鬼鮫は驚き目を見開く。
「どうしたんですか、急に?!」
「そんなに驚くな…」
俺が恋人の誕生日を気にするのがそんなにおかしいのか?
「す、すみません…意外だったので」
「…で?いつだ」
「3月18日です」
春生まれか…ぴったりだな。
「イタチさんは6月ですよね?」
「…なんで知ってる?」
言った覚えはないぞ?
「なんとなく双子座な気がしまして…合ってたみたいですね?」
双子座?
…ああ、占いか。
「お前、そんな女々しいものを信じているのか?」
「案外当たりますよ?…今も当たりましたし」
「…そうだな」
「6月の何日ですか?」
「9日だ」
「6月9日ですね…忘れません」
鬼鮫のことだからきっと祝ってくれるんだろうな…。
うちは家での誕生日は、年々背負うものが大きく、重くなり楽しみではなかった。
…今年は、楽しみにしたいな。

「ところで鬼鮫」
「はい?」
「お前は何座なんだ?」
「…」
俺が問うと、鬼鮫は黙った。
「?」
訝しげに鬼鮫を見つめる。
「…」
「鬼鮫?」
観念したのか、鬼鮫は口を開いた。
「…魚座、です」
「魚…」
……ぴったりだな。
「そうですよ、ぴったりですよ…」
「…いや、俺は何も言ってないぞ」
思いはしたがな。


休憩を終え、街の外に出た…人通りはない、今だ!
写輪眼!

先程の女の動作を使い、鬼鮫の手を掴みにかかる。
…が、素早い忍の動作で避けられた。
「な、なんですか!その殺気は!?私がなにかしましたか!?」
殺気なんて、出してない…俺はただ。
「ただ、手を繋ぎたかっただけだ!」
思わず出た大きな自分の声に驚く。
まるで…子供みたいではないか!
「イタチさん…」
なんだ、呆れたか?
「私も繋ぎたいです」
そう言うと手を差し出す。
「…」
俺はただ黙って鬼鮫の手を取った。

嗚呼…また鬼鮫のおかげだ。
だが…このままの状態に甘んじる俺ではない。
いつか必ず立派な恋人になってみせる
暖かい鬼鮫の手を握りながら心に誓った。



END

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