シンフォニー

□リボン
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音忍アジト
カレンダー前、そこにはドスが居た。

カレンダーを見て、ふと思い出した。
こんなくだらない情報を覚えていたとは…我ながらたいした記憶力だ。
でも、思い出したところで何もしない、僕達音忍は関係の無い事だ。

「関係無いはず…」

思い出してしまうと、やはり気になる。
「…どした?」
いつの間にか隣に居たザクが僕を見てからカレンダーに視線を移す。
だがザクには分からなかったらしく、首を捻りながら、また僕を見る。
「なあ、どうしたんだよ?」
「…7月6日が何の日か知っていますか?」
視線だけザクに向けて、言ってみた…多分、分からないだろうけど。
「あ?……七夕の前日?」
「そう言うと思ったよ」
軽く溜息つき言うと、予想通りザクは怒りだす。
まったく子供ですね。
「分かりにくいんだよ!早く言えっ!」
「…キンの誕生日ですよ」
ぼそりと言うと…ザクが固まった。
「…お前…お前、ドスだよな?」
目を見開いて何を言うかと思ったら…。
「失礼な…僕だって他人の誕生日ぐらい覚えていますよ」
ま、たまたまだけど。
「へー、じゃあ俺は?」
「知りませんよ」
「即答かよ!」
9月14日だった気がしますが、不確かな状態で言うは嫌いなんで。
「それより…」
「おいっ!」
ザクのツッコミを軽く避け近くにある椅子に座る。
「何かしてあげたらどうです?」
「いや、何で俺に言うんだよ…気付いたお前がやれよ」
「嫌ですよ面倒臭い」
「……」
呆れてますね、ですが面倒臭いのは本当の事ですし。
「…何かやらねぇの?」
「何があるんですか?僕達には私物でさえ、あまり無いのに」
音忍のしかも下っ端な僕達には、支給品しかない…たまに、任務最中に敵から奪った物が私物になるくらいだ。
「そっか…俺も何もねーな…それに、ただスリーマンセル組んでるだけだし?」
「知らないふりをするのが1番良いんだよ…」





当日

任務帰りで廊下を歩いているとザクが角から慌てた様子で出て来た。
「ドス、ちょっと来い!」
「何ですか?急に…」
「とにかく来いっ!」
両袖を引っ張られて無理やり連れていかれた。

「何なんですか…」
「あれ見ろ、あれ」
ザクが指差す方向に居たのは…木の根本に体育座りして、ぼんやりとしているキンの姿…。
どこか哀愁が漂っている。
「これだから女性は…」
すぐに悲しむ弱い精神は忍には不必要だ。
やれやれとザクを見ると……悲しそうなんですけどー。
「なあ、キンの誕生日祝ってやろうぜ!?」
「は?」
「決まりだ決まり、何かプレゼント探すぞ!」
「はいー?」
君、この前の任務中にキンごと敵を吹っ飛ばしましたよね?
まったく…気分屋ですね。



ザク・自室

ザクの部屋に入るのは初めてだが、意外に…いや、かなり綺麗に整理整頓されていて正直驚いた。
「なーんかねぇかな?」
ゴソゴソと引き出しや、机の上を探っている。
きっと何もないだろうに。
「ザク…」
「んだよ?俺は止めねーからな」
「違うよ…まったく、勝手に決めつけないで下さい」
僕の普段の態度から考えて仕方ない事ですが…。
僕だって完全に冷血って訳ではないんですから。
少々ムッとしながら懐を探り、出した物をザクに投げ渡す。
「それで良しとしましょう」
「これって…リボンか?」
渡されたリボンを広げ見ている。
なかなか質が良い布で、色は濃紫。
リボンとは言えプレゼントにはなるだろう。
「どーやって手に入れたんだよ?」
「敵のくノ一が身につけていたんだよ」
ザクはしげしげとリボンを見て、それから僕を見てニヤリと笑った。
「本当か?」
「……鼓膜を破いてあげるよ」
軽く睨み、右手の袖をまくりスピーカーを見せる。
「げっ…冗談だよ」
慌てて後退るくらいなら最初から言わなければ良いのに…。
「それより、このリボン…俺達二人からって事にして良いか?」
「…君からって事にして下さい、いろいろ面倒臭いんでね」
僕の言葉を聞いてザクは一瞬不満そうな表情になったが、すぐにニカリと笑い、また僕の袖を引っ張ってキンの元へ急いだ。



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