レクイエム-壱

□風邪
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角都ってさ、言葉少ないし思った事を顔とか態度に出さないから誤解されることあるけどホントは良い事言ってるし優しいんだ、俺にはわかる。


…でも、これってどう言う事なんだ?

どう解釈すればいいんだ?


「飛段」
いきなり抱き着いて頭を擦り寄せながら俺の名前を呼ぶ角都…。
…もちろん嬉しいんだけど…なんかおかしいよな?
「角都…だよな?」
「うん」
……………はい?
今、『うん』って言ったよな?
角都がそんな返事するか?
いや、言わない!
「な、なんか…俺、怒らせた?」
そう聞くと角都は首を傾げた。
か、可愛い!…じゃなくてよ。
「え〜と…じゃあなんで引っ付いてんだ?」
「好きだから」
うわぁ…ヤバイくらくらしてきた、なんか一ヶ月分まとめて言われてるみてぇだ。
「やっぱおかしいって、どうしたんだよ角都…なんかあったのか?」
昨日から任務で別行動とった。
きっとその間になんかあったんだ、じゃなきゃ部屋に入って来た俺にいきなり抱き着いたりしないはずだ。
「なにもない」
角都はただ首を振るだけ…。
なんか、いつもと逆で混乱してきた…。
どうすりゃいいんだよ……とりあえず、落ち着かせるために頭でも撫でるかな。
早速撫でると角都の抱きしめる力が強くなった。
「…飛段」
嬉しそうな声を聞いて、思わず俺も抱きしめる力を強くする。
「角都…」
…あれ?
なんか角都…すっげー暖かい……。
「角都…まさか!?」
慌てて顔に触ると…。
「熱い…熱があるじゃねぇか!」
高熱クラスの熱さだ…。
大急ぎで布団をひく。
「ほら角都、とりあえず寝てくれ」
言うとおとなしく布団に入った。
布団被せて…あ、そうだ。
「俺、薬買ってくんな」
そう言って立ち上がろうとしたら袖を掴まれた。
「角都?」
「ここに居て」
じっと見つめてくる…なあ、なんでそんな顔すんだよ、捨てられたガキみたいじゃねぇかよ。
「でもよ…薬飲まないと」
「要らないから居て」
また同じ目で見つめてくる…。
「…ここに要るから、そんな顔すんなよ角都」
そう言って、袖を掴む角都の手を撫でると、安心したのか、ほぅと息はいて袖から手を放して撫でていた俺の手を掴んだ。
「あ…角都、おデコに乗せるぬれタオル持って来るさ…ちょっとだけ放してくんねぇか?」
言うと角都はすぐに首を振って手を掴む力を強くした。
「そんな心配すんなよ、ほら…ここから見えんだろ?」
水場を指差すと、角都はしばらく水場を見てからそっと手を放した。
「すぐ戻るからな」
普段はださない素早さで準備して戻る。
マスクを取り払って、ぬらしたタオルを乗せると、また手を掴まれた。
「…もう行かない?」
…行かないって言ってやりたいけど…。
やっぱり薬は必要だし、食い物も必要だから…断言できねぇ…。
「えっとな…うわっ」
迷ってたら急に腕を引っ張られて抱きしめられた。
「…ひだん」
そんな、泣きそうな声だすなよ!
「大丈夫だって、俺が角都をおいてどっか行くと思うか?」
絶対無理だ…道歩いてて、ちょっと立ち止まっていたら、角都の背中が遠くにある。
それだけでも恐いのに…。
「離れねぇよ…」
ぎゅっと抱きしめると安心したのか角都の力が緩む。
「ゆっくり寝ろな」
優しく布団をぽんぽん叩く。
「…」
まだなんか不安なのかじっと見つめてくる。
「ほら、手繋ごうぜ…それなら安心だろ?」
手を繋ぐと、角都はゆっくり目を閉じた。



寝息が聞こえてきた…。

いつも角都も良いけど…この子供みたいな角都も好きだな。
だっていつも俺を頼りにしないのに、今は握った手を放さないんだ。



角都ってさ、言葉少ないし思った事を顔とか態度に出さないから誤解される事あるけど…たまには心細い時もあるし寂しい時もあるんだ…俺は知ってる。



END


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