と宝物
□夏祭り
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暁本部。
折角の休みだというのにやる事が無い飛段は自室でダラけていた。
扇風機は無く、頼りになるのは窓からの風だけ。しかし窓を開けたせいで、蝉のけたたましい鳴き声がダイレクトに耳へなだれ込む。
暑さあまり、本来ならば『みーんみんみんみん』と聞こえる鳴き声が『しーねしねしねしね』と聞こえるしまつ。
「それを…俺に言うかよ蝉ー………暑い……」
律儀に手を外に向けてツッコミを入れた。だがその手はすぐにダラリと下に落ちる。
俺このままだと、溶ける。暑さに屈服しかけた頃、誰かがノック無しに部屋へ入って来た。
「…見ているだけで、暑苦しいな、飛段」
相方だと分かり、寝返りをうつ。見えたのは何時も頭巾、マスクを付けた姿だった。流石にコートは着ていないが暑苦しそうなのには変わらない。
「うるせーなー…暑いんだから仕方ねーだろ?」
「鍛練が足りん。…それより身支度をしろ、祭へ行くぞ」
祭。この言葉を聞いた飛段の脳内には涼しい境内、冷たいかき氷、手を繋ぐ浴衣姿の二人…デートだ。
飛段は暑さなど忘れて、立ち上がり、角都に極上の笑顔を向けた。
「マ…マジで!?角都、愛してる!」
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