と宝物

□温甘
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暁本部。
三日かかった単独任務を終えた鬼鮫が14時頃に戻って来た。
午前には戻るはずだった鬼鮫の心配していたペインが出迎えると、遅くなった理由は一目瞭然。片手に木ノ葉の名店『甘栗甘』の手提げ袋を携えていた。

「報告は後で良いから、イタチの所に早く行ってやれ。お前が居なかったから不機嫌なんだ」

それを聞いた鬼鮫は『ありがとうございます』の言葉とお土産の饅頭をペインに渡し、小走りでイタチの部屋へ向う。
見送ったペインは早速、皆と食べようとルンルン気分で広間へ向かった。



「イタチさん、ただ今戻りました」

律儀にドアをノックしてから入ると、イタチが小走りで近寄って来る。これが飛段なら抱き着く所だがイタチに出来るはずがない。だが精一杯頑張って、胸元辺りのコート生地をキュッと握った。

「お帰り、鬼鮫」

嬉しそうに目を細めて見上げる姿が愛らしくて堪らない。抱きしめたくなる衝動に襲われ、片手を伸ばすがグッと堪えて、頭を撫でるだけに止める。

「寂しい思いをさせてしまい、すみませんでした。お詫びにお土産を買ってきたので一緒に食べましょう?」

絹糸、いやそれ以上に美しい黒髪を撫でながら言うと、提げていた紙袋をイタチの目線上まで上げて見せた。
きっと、喜んで極上の笑みを見せて下さるだろう。と予想していたのに、イタチは予想外の反応をとった。先ず、表情が曇る。そして、首を振り言った。

「い、いらない」

いらない?鬼鮫は耳を疑った。『三度の飯よりお菓子』なイタチがお菓子を食べないなんてありえない。それにただのお菓子ではない大好きな鬼鮫が買って来た大好きなお菓子だ。いらない、なんて有り得ない。

「どうしたんですかァ?もしかして具合が悪い…?」

「いや、具合が悪いわけじゃ…とにかく食べれないんだ」

しゅん、とうなだれる姿を見てはそれ以上追求する事はできない。

「分かりました。ではこのお菓子は冷蔵庫に入れて来ますねェ」

最後に頭を一撫でして離れ、台所へと向かった。



台所へ向かうと、小南と角都が皆分のお茶を入れていた。

「おかえり、鬼鮫」

「…任務ご苦労、と言ってやろう」

「あ…はい。ただ今です」

先程のイタチの対応が気になっていた鬼鮫は生返事をして冷蔵庫へ向かう。
そんな鬼鮫を見て、二人は顔を見合わせ首を傾げた。
普段の鬼鮫ならもう少し愛想が良いし、お茶入れるのを手伝う、だから違和感を感じた。

「どうした、鬼鮫?何かあったの?」

小南が問うと鬼鮫は呟くように言った。

「イタチさんが…何か隠し事をしているみたいで」

イタチが隠し事をしているのは今に始まった事ではない。うちは一族の深い部分などはけして言わない。だがそれ以外の事で隠し事をする事は滅多にない、だから自分に対して信用が薄れたのかとかと鬼鮫は少し悲しくなってしまったのだ。

「…隠し事?」

珍しく角都が口を挟む。小南も同じ部分が気になるようで、首を傾げる。

「お土産のお菓子を食べないと言われまして…。理由は教えて貰えなかったんです」

そう説明すると、小南は心あたりがあるらしく『ああ、それね』と頷き、説明を始めた。

「飛段に『太ったな』といわれたから、ダイエットのつもりなんだろう。だから気にしなくて大丈夫よ」

確かに以前に比べたら肉が付いた。だが以前がかなり痩せすぎだったので太ったとは言えない。寧ろ標準体重に近付き、喜ばしい事だ。

「そんな必要ないのに、何故ダイエットなんか…」

また以前の痩せすぎな身体に戻ろうとしているのかと思うと自然と溜息が出た。

「…鬼鮫、ダイエットの必要ないときちんと言ってやれ。飛段はもう二度言わぬように俺が調教しておく」

鬼鮫は角都の言葉に頷き、礼を言った後、再びお菓子の入った袋を携えイタチの部屋へ向かった。



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