ペルソナ

□怒り
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−夜中


ああ…またっすか

隣のベットから押し殺した泣き声が聞こえる。

そっと寝返りをうって盗み見ると…。

暗くてよく分からないけど、デイダラ先輩が何かを抱きしめているのだけは分かる。

何かは分からないけどアレは多分…
…サソリ先輩の抜け殻。

サソリ先輩が死んでからデイダラ先輩は時々おかしくなる。

さっきまで笑ってたと思ったら、突然泣き出したり、キレたり…。

『…旦…那ぁ…』

…キレんのは良いんすよ、慣れたし。
でも…こうやって悲しそうに泣かれるとどうして良いか分からない…。

でも…ほっとく事もできないし…。

そうだ…
…泣かれるくらいなら…

「…先輩」

声をかけると、一瞬泣き声が止んだ。

「………五月蝿いんすけど」

先輩はゆっくり顔を上げる。
ほら…怒って下さいよ。
泣いてるよりかはましでしょ?
怒ってる間はサソリ先輩の事…考えなくてすみますからね。

「…俺、眠いんすけど」

「………」

…あれれ?
……怒らない?

「…先輩?」

「…悪…かった…な」

あ……本当にマズイ。
キレないのが1番マズイ…。
頭ん中、悲しさでいっぱいの状態だ。

「…先輩が謝ると気持ち悪いっすよ〜?」

本当は笑いながら言うつもりだったけど笑い声はでなかった…。

「……トビ」

俺の名前を呼び先輩はゆっくり起き上がった。

「あれ〜?怒っちゃいましたか?」

宿が壊れないように気をつけながら逃げないとな…。
そんな事を考えながら上半身を起こして逃げ道を探す。

「……トビぃ」

声が間近で聞こえた。
慌てて振り向くと俺のベットに先輩が乗っていた。

「…デイダラ先、わっ!?」

声をかけた瞬間、抱き着かれた。

「ど、どうしたんすか?」

返ってきたのは返事じゃなくて泣き声だった。

「う…ぐっ…だん…なぁ…」

胸元に顔をうずめて泣いている姿を見て…。
俺まで悲しくなってきた。

「…泣かないで下さいよ先輩…」

泣きじゃくって震える頭と背中を撫でると、抱き着く力が強くなった。

「…これじゃあどっちが先輩か分かんないっすよ?」

…撫でても、声をかけても泣き止まない…
…どうすれば泣き止むだろう?
変化でサソリ先輩になっても意味ないしなぁ…。

「そんな泣き付かれても…俺はどうにもできないっすよ?」

サソリ先輩の代わりも無理。
慰めるは苦手。
俺には怒らせる事しかできないんだ。

「…女々しいっすよ?」

引きはがすみたいに肩を押すと、離れたデイダラ先輩の虚ろな目が少しだけ揺らいだ。

「………爆死させてやる」

睨み付けた目に、もう虚ろな影は無かった。



END


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