=弐

□可愛いペット
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朝起きると、私は透明な箱の中に居ました。
調度良い濃度の海水が満たされた、この箱の中はいったい何処なんでしょうか。辺りを見渡します。見覚えがある物はなにもありません。母と兄弟達の姿もありません。
まさに何が何やら状態です。

「鬼鮫」

人間の声です。振り向くと、小さい人間がガラスごしに私を見ています。

−ゴォンゴォン

ガラスが叩かれ、大きな音が響きます。

−ゴォンゴォン

止めて下さい、止めて下さい。頭がクラクラします。

「鬼鮫、おはよう」

−ゴォンゴォン

おはようございます。返事したんで、叩かないで下さい。

「鬼鮫ー」

鬼鮫とは私の事でしょうか?私には二郎という立派な名前があります。
二番目に産まれたから、と母がつけてくれた名前です。

「仲良くしような」

止めて下さい、止めて下さい。そんなキラキラした目で見ないで下さい。

「鬼鮫」

…あだ名という事にしておきます。

−ゴォンゴォン

止めて下さい、止めて下さい。頭がクラクラするんです。

「ご飯あげるから、ちょっと待ててな。えーと…」

紙の束を見ています。本というやつですねェ。
紙なんか見て、なんの役に立つのでしょうか?人間は理解できません。

「え、…水槽叩いちゃ駄目なのか」

前言撤回。本は素晴らしいものですねェ。




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