=弐
□私の名前は
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「俺は黒崎 遥(くろさき はるか)といいます」
「私は…新妻 智志です」
遥、女性のような名前がよく似合っている。…と、普通なら思う所なのに何故だろうか、違和感がある。本当にこの人の名前なのだろうか?そんな自分の名前に対する違和感と似た疑問が沸き上がる。
名前については触れないでおこう。
「あの、ほしがきキサメというのは約束した方の名前ですよね?」
「はい」
「珍しい名前ですねェ。漢字でどう書くんですか?」
「果物の干し柿に鬼と鮫で干柿鬼鮫、です」
「…珍しいですねェ」
胸がザワつき、それしか言えなかった。
収まらないザワつきを抑えようと胸元を軽く押す。
「新妻さん…?」
違う。
咄嗟に浮かんだ言葉に困惑する。違う?名前が…?私の名前は新妻智志だ。
違う。
どんなに嫌っていても、違和感があっても、私の名前は…。
違う。
「新妻さん、どうしたんですか!?」
心配されてようやく気付いた。私は泣いていた。
「私はいったい…」
「胸が苦しいんですか?救急車呼びますか?」
「目にゴミが入っただけです」
「じゃあ、水を…ハンカチを湿らせて来ます」
黒崎は立ち上がり、水場へ向かおうとする。
この人の手を煩わせてはいけない。
咄嗟に手を伸ばして腕を掴んだ。
「イタチさん、大丈夫ですから」
黒崎は驚いて、振り向いた。
智志も驚いている。名前を間違えた事を謝らなければならないのに、謝っては違う気がしているから。
「鬼…鮫…」
イタチ、鬼鮫。二つ名を連ねて聞き、ようやく思い出した。ザワめきが消えるのが分かる。代わりに胸に溢れたのは抑え切れないくらいの喜び。
「私の名前は干柿鬼鮫…。なぜ忘れていたのでしょうか…」
「鬼鮫…鬼鮫!」
イタチは苦しそうに切なそうに名前を呼び、抱き着いた。
鬼鮫は包み込むように抱きしめた。
「ああ、そういえば…」
今日は私の誕生日でしたね。
これは神様とやらの、プレゼントなんでしょうかねェ?
それは3月18日、うちは公園の一角で起きた奇跡のお話し。
また巡り逢えた二人は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし
END
二人の名前について
新妻→『バクマン』キャラの苗字。いちゃもんつけやすい苗字だったので使用しました
。
黒崎→『BLEACH』主人公の苗字。先が黒い→失明、という理由で決めました。
智志サトシ
遥ハルカ
知的な名前で思いついたのが智志、対になる名前にしたかったので、ポケモンの主人公達の名前で揃えました。
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