と宝物

□It dedicates it by 10000.
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一ヶ月後。
足立戦に向けての準備やトレーニングで忙しい中。人目を気にしながら編み上げたマフラーが完成した。
直斗用の青いマフラーは気合いが入りまくっている。雪の結晶柄に編み込んだ模様は我ながら惚れ惚れする出来だ。

最終確認をすると、丁寧に折り畳んで紙袋に入れる。リボンで綺麗にラッピングしようか悩んだが、それは女々し過ぎる気がしたので止めた。

「あ、りせの分も入れねーと」

随分前に完成して以来、棚に置きっぱなしになっていたピンクのマフラー。簡単に畳んで、色違いの紙袋に入れた。

渡す準備は出来た。
後はりせに連絡して、直斗を呼び出してもらい、渡すだけ。
携帯電話を取り出す完二の手は僅かに震えていた。



マル久前。

緊張のため、なかなか玄関からうごけなかった。そのため、完二が着いた頃には二人が寒さで身をすくめて待っていた。

「オメーら早いな…」

「いや、僕らが早く来過ぎただけで…」

「遅ーい!バ完二!」

直斗とりせの正反対な反応に苦笑いを浮かべる。

「悪かったよ。だからバ完二は止めろ、マジで凹むんだよ」

「いいじゃん、バ完二って言いやすいし。それよりー、用事ってなによ?」

りせと打ち合わせをして、マフラーをプレゼントされる事知らないフリする予定になっている。
キョトンと、首を傾げた知らないフリは流石元アイドルと言うべきか。

「用事つーのは、その…オメーらにクリスマスプレゼントをやろうかと思ってよ。た、たいしたもんじゃねーけど、受け取りやがれ」

二人に押し付けるように紙袋を手渡す。戸惑っている直斗に反して、りせはすぐに紙袋を開け始める。

「わ、これマフラー!?可愛いー!。完二のくせに良いセンスしてるじゃない」

「僕のもマフラー…綺麗で恰好良いですね」

直斗は模様をマジマジと見てから、早速首に巻いた。

「それに、暖かいのに軽い…かなり良い物ですね。巽君、本当に貰って良いんですか?」

「そうそう、高そうなのに良いのー?」

「あ、いや…時間はかかったけど、金はそんなに。だから気にせず貰いやがれ」

「え!?巽君が作ったんですか?」

そういえば、直斗にはまだ言っていなかった。
風宮先輩やりせに言えたんだ。直斗にも言おう。
しかし完二の覚悟は無駄に終わった。

「そうよ、完二が作ったの。あとー、編みぐるみとかも作れるんだから」

「なんでテメーが言うんだよ!」

「あの…喧嘩はしないで下さいね?」

「してないもーん」

りせは悪びれるずに言うと、マル久へ向かい始める。そして店先にある椅子の上にあった袋を戻って来た。

「はい、私からもクリスマスプレゼント!」

受け取った袋を開けると出て来たのはドックタグ。 直斗のプレゼントもドックタグだ。…お揃い。
完二は幸せ気分に包まれた。

「ありがとうございます。…僕だけ何も用意してなくて申し訳ないな」

「そんなん気にすんな、急だったんだからよ」

しかし直斗はどうしたものかと悩む、うーんと唸る。

「そうだ。僕の家でクリスマスケーキを食べませんか?毎年、薬師寺さんが大きいのを焼くんです。でも…これだと僕だけ他力本願か」

「んな事ねーよ、探偵の家に行けるって楽しそうだしよ」

「この展開だと…『クリスマスケーキ殺人事件 探偵の家ににやって来た黒いサンタクロースの正体は』が始まるね」

「良いですね、それ!」

「良いのか!?」


妙な期待を持ち、直斗家へと向かう。
完二が真ん中に立つという両手に花状態。

「完二が待たしたから手が冷たーい」

「マフラーに手を入れると暖かいですよ」

「これも暖かいけど…あ、そうだ」

りせはマフラーから手を離す。ホッカイロでも出すのかと思っていると、りせの手は完二の右手を掴んだ。

「やっぱり暖かーい。ほら、直斗も熱奪っちゃいなよ」

「え!?いや、僕は…」

りせは前に回り込み、遠慮する直斗の手を掴んで、無理なり手を繋がせた。

「な、ななな、何んで勝手に!俺ァ許可してねーぞ!?」

直斗との思いがけない手繋ぎに完二は真っ赤になった。そんな完二を見て、りせはニンマリ笑う。

「いーじゃん、熱高すぎるみたいだし」

「本当だ…熱があるんじゃないかってくらい熱いですね」

「ねー、だから私達で熱奪えば調度良いのよ」

りせにからかわれ、直斗には天然でドギマギさせられ、完二は限界が近くなってきた。

「寒いなら急いで行くぞコラァ!!」

完二は急に走りだし、二人を引っ張るように直斗家へと向かった。

「アハハッ、完二早ーい」

楽しそうにりせが笑いだし、つられて直斗が笑いだした。

「楽しいな…来年もこうやって三人で過ごせたら良いな」

また一緒に過ごしたいという直斗の言葉を聞き、完二は顔がまた赤くなるのが熱で分かった。
欲をいうと、三人ではなく二人が良いけど。

「おぅ!来年も再来年もな!」


できれば来年は恋人同士で!


END


完→直のはずが気が付いたら

完→直




完→直
↑ ↓
り←主

繋げてみた(笑)
.

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