小説─黒子のバスケ─

□内緒の話。
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内緒の話。                   









黄瀬「かーさまーつせーんぱいっ!」


笠松先輩を見ると、俺は真っ先に抱きつく。
いや、正確に言えば抱きつこうとする、なんだけど。

大体(って言うか全部)跳ね返されて抱きつけない仕舞いだ。


笠松「お前は大人しくしろ!つーか何時も抱きつこうとしてくんな!」


ほら、やっぱり。

でもたまーに、少し前、抱き付けたことがある。
正確には抱き付くではなく、抱きしめるだと思うけど。

まぁその後しっかりシバかれたッスけどね!

少し拗ねながら先輩と歩くと、監督が書類みたいな物を持って笠松先輩に渡した。
どうやらそれは次の試合相手の情報らしく、チェックしておけと、監督がいっていた。


黄瀬「俺も…見て、いいッスか…?」

笠松「…ん…良いぜ、お前はだな…これ見とけ。」

黄瀬「!…わ、わかったッス…!」


慌てて受け取り、目を通す、これくらいなら簡単に勝てるかも、なんて思ったり。

資料に目を通すのも飽きてきて、笠松先輩に目をやると、資料を見ながらなにか考えているようだった。
多分それは、作戦だったり、シュートの仕方とか…だと思う。

小さく名前を呼んで振り向かせると、抱きついていいか聞いてみる。
アホか、って言われたけど、照れてるんスよね、耳赤いし。

抱き締めてみると、少し抵抗された。

いやッスか?って聞くと、3分だけな、と返される。

かわいい人だなーなんて思いながら力を込めると、聞こえてくる小さな鼓動、小さすぎて聞こえないくらいに。


黄瀬「先輩暖かいッス…!」

笠松「この時期なのに暖かいは可笑しいだろ」

黄瀬「本当に暖かいんスよ!」

笠松「はいはいw」


少し笑いながら頭を撫でてくる。

子供扱いしているようで少し嫌だったけど、今は、それでいい。
先輩を、抱き締めていられるから。



指先から伝わる先輩の鼓動は、小さくて、でも優しく動いていて。

まるでそれは内緒のお話をしているような、小さな鼓動だった。

3分なんて短い時間が、少しだけ、長くなった気がした。




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