恋物語のはじまりを

□三人悪と決裂
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「あ?竜也兄と由宇ねーちゃんだ。」

学校が終わって、ランドセルを家に放り投げると、

四人はいつものようにあげてんかのコロッケをお小遣いから出して買うと、

もさもさと食べながら公園へと歩いて行った。

そこで見つけた二人の影を椎名がいち早く見つけて、声を上げた。


「ほんとだ」

数秒遅れててつし、良次、そして私が気付いた。


「由宇ねーちゃんって、ほんっ………とにキレーだなあ!」

良次が頬に手を当ててうっとりとしていう。

横目でジト目でみる、私。

だから、男の子って!

「うちの姉貴達とは大違い‼︎」

良次は4人兄弟。

良太兄

そして双子の舞子萌子姉。

よく、良次はその二人の姉ちゃんを、

ガサツで下品で意地悪で口が悪くて手が早くて食い意地が張ってて頭が悪くてうんぬんかんぬん

と言う。

「由宇ねーちゃんが俺のお姉ちゃんだったらなぁ…」

愚痴を漏らす良次に、

さらに付け加えるようにてつしが口を開いた。

「由宇ねーちゃんはただ美人なだけじゃねーんだよな。」

うーん、と頭を抱えるてつし。

「なんてゆーかこう、つまり…アレなんだよな」

「どれさ」

「ああっ!クソッ、表す言葉が思いつかねぇ」


てつしが頭を掻き毟る。

てつしは小学5年生にしては肝は座ってるけど、お勉強については小学3年生並みだから。

「真っ白っていうか…んーとんーと!」


今までいなかったタイプだからなぁ、とてつしが漏らす。


「悪かったわね、真っ黒で。」

キッとてつしを睨みつけるとキョトンとした顔でこちらをみたので、

皮肉も通じないのか!と呆れてしまった。

「白?天使みたい?」

良次も必死に頭を抱えるが、その言葉は見つからない。

一方椎名は気がついているようで平然としている。


きっと、清楚だって言いたいんだと思う。

今時の女の子とはかけ離れた、

まるでずっと昔から来たみたいな感じ。

なんとなく、なんとなくだけど、

どこか違う世界を生きているように見えてしまう。

それは、私が彼女を嫌っているからなのか。

それとも、私の中に眠るてつし達と同じような力が、そう感じさせているのか。

わからない。

けれど、何故か関わってはいけないような気がする。


「よぉ、お前ら。どうしたボーッとして。」

向こうを歩いていた竜也兄がすぐそばまで来ていた。

由宇を連れて。


ムッとすると、口いっぱいにあげてんかのコロッケを頬張って、包み紙を片手で潰し、

ポケットに突っ込んだ。


「てっちゃん。私、帰る。」

「え、なんで。今から遊ぶって。」

「用事思い出した、帰る!」


そう言って、遊具から飛び降りると一目散に駆け出して、公園の角を曲がって、

その場にいた全員の見えないところまで来てから立ち止まった。

わからない。

どうしてこんなにむしゃくしゃしてるのか。

わからないけど。

追求する気はどうしても起こらなかった。

トボトボと家に帰ることにした。



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