恋物語のはじまりを

□お手紙
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上院小の番を張る金森てつし、気が弱いがてつしの右腕新島良次、美少年参謀椎名裕介。

三人合わせて”イタズラ大王三人悪”

町を飛び回り、弱き者を救い、いじめっ子にはそれなりの罰を受けさせる。

子供たちは、この三人を恐れ、大人たちは大迷惑がっている。


「そんな三人にも怖い奴がいるみたいでな」

「ふ〜ん」


制服からして上院中学校の生徒である二人の男子生徒が話を交えながら帰路についている。

両方野球部であろうか。

丸刈りに、バットを入れているケースが背中で揺れる。

そんな二人を狙う六つの目が闇に光る。

「どんな奴??」

「それがさ、意外にもおん・・・」


「水田健二!!!!!」


水田と呼ばれた長身の少年は足を止めた。

目の前に立ちはだかったのは、彼らよりも頭二つ分ほど小さな少年だった。


「げェッ、金森てつし・・・」

そうその少年は、彼らが今まさに話をしていた張本人であった。

「お前、昨日4年の岩本から漫画奪っただろッ!返してやれよ」

てつしは大柄の中学生を相手に戦(オノノ)きもせず、堂々たるたたずまいで淡々と言った。
「何の話だよ。」

「岩本泣いてたぞ!!」

「おい水田、お前中学生にもなって・・」

「うるせぇ!!」

てつしは大声で怒鳴り散らす水田をよそに片手を高々と上げた。

「行け、リョーチン、椎名」

角から飛び出してきた少年二人が、何かを片手に走り出した。

「なんッ!!」

水田に向かってまっしぐら。

「小麦粉」

「ばっくだ〜ん」

ソレを水田の顔に向かって投げつける。

その瞬間手から放たれた白い布が、中に包み込んでいた小麦粉を振り出しながら水田の顔面に直撃。

水田の小麦色に焼けた肌はたちまち真っ白に染まった。

「・・・ゲホッ」

そばにいたもう一人は幸いすぐに避けたが、目の前の状況に呆然とするしかなかった。

「もう弱いものいじめはやめろよ」

そう言って高らかに笑う三人を男たちは唖然と見ていた。


そんな所に私は飛び出した。

「こら、てつし、リョーチン、椎名!!!何やってんの!!」

「げッ、美佐」

てつしの顔が引き攣る。

三人は私の姿を確認すると、いつものようにすばしっこい体を飛び上がらせて背を向けて走り出した。

「逃げろ!!」

「待ちなさい!!」

その三人を追いかける私は、そばに呆然とする中学生にハンカチを押し付けた。

「てっちゃんたちも悪いけど、貴方も当然悪い。ちゃんと岩本君に謝って。・・・使って」

そう言ってもう一度彼らを追いかけた。

「・・・何、あの子。」

「あの子が噂の三人悪の怖い奴。藤堂美佐。別名”三人悪の鬼”」

「普通の女の子じゃん。」

「それが、気配りが出来て、近所で評判でな。出来たお嬢さんだってよ」

「・・・可愛いな」

「可愛いだろ?」

二人の中学生が私の背に熱い視線を送っていることを私は知らない。

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