恋物語のはじまりを
□三人悪と決裂
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それ以降三人悪の話の輪の中には、必ずと言っていいほど”由宇姉ちゃん”の言葉が出てきた。
その話をする三人は本当にマヌケな顔で、
可愛い女の子に出会うと、男はこんなに腑抜けになるのかと、
私は鼻で笑うしかなかった。
「じゃ、一旦家に帰ったら公園に集合な!!早く!!」
てつしの言葉に、残りの二人がおぉと拳を上げた。
「美佐も来るよな?」
「え、やだよ。いかない」
「なんでだよ」
"最近付き合い悪いぞ"とてつしが頬を膨らまして言うが、私はいかないの一点張り。
「由宇姉ちゃんが来てから付き合い悪くなったよな、お前」
椎名に図星をつかれて、視線をそらした。
「なッ!!??お前、由宇姉ちゃんが嫌いなのか!?」
「なんで、あんなにいい人なのに!!可愛いし、美人なのに!」
いや、今は可愛いと美人は関係ない。
てつしと良次が詰め寄るのを華麗にかわして、私はランドセルを背負った。
「別に、そんなんじゃない。ただ、今読んでる本が面白いだけ。隣町の大きな図書館にしかないから、そこに行ってるだけ。それだけ。何か文句ある?」
嘘ではない。
てつしと良次、椎名と遊ぶ時間が空いてしまって、
部屋に閉じこもってすることなんて何もない。
宿題も、
無理矢理に押し付けられた算数ドリルも、
家にある絵本も小説も、
何もかもしてしまったのだ、読んでしまったのだ。
なので、隣町の大きな図書室に歩いていって、本を借りて帰ってくれば、
あとはずっと本を読んでいる。
そんなサイクルをここ最近毎日毎日しているのだ。
「ッなんだよ!!その言い方!!」
てつしが掴みかかろうとするのをサッと避けて、足を引っ掛けた。
それはもう、綺麗に宙を舞って転がるてつし。
「飽きただけ。貴方たちと遊ぶことが。もう私も大人にならなきゃ。」
大人になんてなりたくない。
でも、子供でもいたくない。
どうしようもない、怒りとか、悲しみとか、言葉にならないものがぐちゃぐちゃになって、
また掴みかかろうとするてつしを放って、
私は急いで帰路についた。
まだ、小学5年生だよ。
きっとみんなそういうと思う。
でも、それでも、
私は大人になりたかった。
早く、早く。
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