馬鹿やって幸せ

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熱気が充満しているジム内の片隅で俺は舞台をボケっと見ていた。



『イエーイ!!』

「お前らもっと盛り上がんな!!!」

「「「イエーイ!!」」」



舞台ではジムリーダーとそのジムトレーナー、と喋るゴンベがバンドを組んで歌っていた。それはもう、すごい盛り上がりなコトで。

ジム戦はコイルの無双により呆気なく終わった。毒は効かないノーマルもイマイチの彼にはこのジムの奴は手も足も出なかった。それからリオが何故バンドのボーカルを努めているかは覚えてない。なんでだ?



「よっ!」

「ぴゃアッ」

「男の癖になんつー声出してんだよ…」



いきなり首に冷たい黒いソーダ水の入った缶を当てられたのでつい跳ね上がり変な声を出してしまった。
その当てたジュースをそのまま俺に寄越したのはここのジムリーダーのホミカだ。



「え、あ?」

「やるよ。バンドの熱気慣れてないんだろ?汗だく」

「んと、ありがとう。お金払うよ…。」

「いいよ、その代わりあんたのポケモンの出演料な!」

「そか、ありがと」



the☆コミュ障
モジモジした筋肉質のイケメンとか、ホミカの目からしたらキモく見えるんだろうな…と涙目。コミュ障は直せませんよどうやったって…

有り難くジュースを頂くと飲んでる途中に背中を思い切り叩かれ炭酸を口から噴出した。



「ごばっ、ごぼっ!げほっガッ…!」

「アンタさ、年下のアタシにビビってんじゃねーよ」

「かはっ…」

「アタシには不躾の方がいいんだからさ」



そう言いながらホミカはむせてる俺の背中を撫でる。
確かにこんな事してくる奴に敬意は無用だな。殺す気か…。

いまだに歌ってるゴンベが憎い。俺こんなに痛くて苦しいのに…!ギリィ



「ところでアンタこの後どうすんの?」

「んぐ、げほっ…船乗ってコハッ…、ヒウンシティかな…」

「そっか!アタシのパパの船乗るんだな!」

「…、ホミカちゃんのお父さん船長さんなんだな」



父親の話しをするホミカがあまりにも純粋で頭を撫でながら会話する。うん、ふわふわの髪が羨ましい。
もう男だから気にする必要なんてないけどね!!!

さっきまで騒いでたホミカが静かになったのは何故か分からない。その後背中思いっきり叩くのはやめて欲しい。





「物凄く稼いできましたね」

『ポケモン用お菓子ばっかだけどね。』



あれから暫くして戻ってきたリオは貰ったカゴに一杯貰い物を入れて帰ってきた。飲み物から木のみ、果てには技マシンなんかも入っていた。
なんでポケモンの世界の皆さんは喋るゴンベを当たり前のように受け入れられるのだろうか…。

ジムの前で失礼だが貰い物を鞄の中に詰めさせて貰うのにしゃがんで居たら背中が急に重くなった。



「どうせだから見送ってやるよ!」

「ホミカさんじゃあーりませんか、嬉しいねぇ可愛い女の子が見送ってくれるなんて…」

「かっかわっ!?何言ってんだよっ、ふざけてねぇで行くよ!」

「らじゃっ!」

「おわっ!?」

『兄弟みたい』



背中に乗ってきたホミカをそのままに立ち上がると慌てた様に首に巻き付いてくるホミカ。ちっちゃくて可愛いなぁ…ロリコンになったら責任とってよね…!

ギターが意外に重くて降りていただいたけど。

それですっかり忘れてたけど船の前でキョウヘイとメイ、ヒュウがプラズマ団と退治するイベントが発生していた。エンリーはどうやら居ないらしい。



『何してんの?バトルだよ!』

「クソ管理人め、話の内容忘れたからって飛ばしやがるな…!」



という訳で俺はルリリを出して応戦する。なんだか他の二人より風格のある様な、そんな感じのプラズマ団が相手だった。

出てきたポケモンに俺は驚愕する。
そりゃ二人しかいなかったプラズマ団が一人増えてるだけで驚きなのにそのプラズマ団がイーブイを出してきたらそりゃビビる。



「さぁ!試作品の初試合だ!行けっ!!!」

「ぶぃ…」

「ルリリ、あんまり強くやりすぎるなよ、イーブイは無理矢理戦わされてるみてぇだし…」

「るり!」



試作品と言ってる時点でアウトだが、とにかく戦闘不能にしないことには始まらない。という訳でルリリの力持ちを活かせない特殊で攻める。

イーブイの方は、プラズマ団の言う事を聞かずに戦っていた。



「このっ…!フザケルナ!おい!命令だ!!!」

「ぶい!!」

「言う事を…聞け!!!」

「ぶっ!!!!」

「…!おいやめろ!!!」



痺れを切らしたプラズマ団はバトルに割り込みイーブイの腹を蹴りあげた。キョウヘイ達がコチラに助太刀しようとしてくれているが敵に妨害されてうまくこちらに来れないでいる。

俺はプラズマ団を羽交い締めにして追撃しようとするのを阻止した。それを確認してイーブイはフラフラと立ち上がり、弱くひと鳴きすると体が光を帯びた。



「なっ…!?ここら辺に進化の要素何処にあんだよ…!」

「くっははは!!教えてやろう!!アイツは我々が改良に改良を繰り返し、どの進化系にも自由になれる最強のイーブイなのだ!!!」

「ちょっと!夢小説みたいなキャラ出してんじゃねぇよ!!」

『ナル、これ夢小説!』



とにかく、プラズマ団は俺の腕から抜け出し、サンダースになったイーブイに足を落とす。やめて!紙耐久のサンダースのライフはゼロよ!!
何度も踏みつけ踏みににじり。あまりにもムカツク行為をして下さりやがってるので助走をつけてドロップキックをかましてやった。

激高したプラズマ団は新たにガマゲロゲを繰り出してサンダースに狙いを定める。
俺はサンダースを抱きしめて攻撃に備えた。腕とか胸が刺で痛いけど、致し方ない。



「ふん!ならばまず貴様からだ!ガマゲロゲ、泥爆弾!!」

「げろ!!」

「がっ!」

「何度もぶつけてやれ!!」

『やりすぎだ!!』

「るり!!」

「ほう…喋るゴンべとは珍しい!あの男を殺して奪うとするか…!」

「ナル、ゴンベ逃げろ!」

「ガマゲロゲ、ハイドロポンプでアイツを海に落とせ。」



背中が痛い。泥の癖に痛い。
爆音で耳がやられちゃってて、ホミカがなんか叫んでるらしいけど、聞こえん。
それから俺は新たな衝撃を受けた。冷たくて痛い。体が簡単に浮いて、俺の足元は海だった。もれなく抱きしめていたサンダースもともに。



「シャワーズにな」ドボン!



シャワーズになれっていいったかったが、無理だった。
体が痛くてゆうこと聞かなくてどんどん沈んでいく。サンダースことイーブイは俺の腕から離れイーブイに戻る。

ドボン

ルリリが、助けに来てくれた。俺を持ち上げようとするルリリにイーブイを預ける。流石に俺は無理だろうけどイーブイくらいならなんとか助けられるだろう。意思を汲み取ったルリリはイーブイを連れて上がると、しばらくして戻ってきた。

そろそろ俺は息が持たなくなってきて、ちょっと視界がくらんできた。

ルリリは一生懸命あげてくれようとするが、その体に俺はおもすぎるだろ?力持ちでも、女の子だもんな?



「(だっせー死に方)」

「るり!!るりぃ!!!」



悲痛な声が俺の耳に届く。ほら、さっさと上に戻ってイーブイ助けてやってくれ。

なんとか力を振り絞ってルリリを撫でてやった。ムウマさんは俺の腰から回収してってくれよ?

結構長くもった息は流石に限界が来て口からごぱっと汚く空気を出す。

目を閉じて暗い深海に落ちていく。なんでか最後、ホワイトアウトしてった気がする。















すいそうでさよなら?

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