馬鹿やって幸せ

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自分は他のコイルと違い、特別な事は分かっていた。
他とは色が違い、まぁそれなりに仲間には嫌われていたし、人間からは捕獲され売りさばかれそうにもなる。
ただ色が違うだけ。人間の方が色が違う奴が沢山いるのに何故ポケモンになると目の色が変わるのやら。

そして最近思い立った。良さげな人間の手持ちになってしまえばいい。私は多分、疲れてしまったのだ。
同族からの仕打ち、金にしようとする人間や、自分を特別に見せようと特別な私を利用しようとする人間からの逃走。もう飽きた。



さてはて、私は早速人を物色し始めた。まずは大まかな設定を決めよう。人物像を決めなくては何人もいる人間の中から希望もなしに決めるのは時間がかかる。


まずは手持ちのポケモンが懐いていること、それから旅に出ているトレーナーで、初心者、あとは、コイルを捕まえようとしてる人間が良いだろう。



『聞いたー?イケメントレーナーが来てるってー!』

『あぁ、知ってる!カッコ良かったわ!』

『ほんとぉ?アタシも手持ちに入れてもらおうかしらー』

『でもそのイケメン、コイル狙いみたいよ?』

『やーだー!廃人かしらァ?』



姦しい雌ポケモンがけたたましい甲高い声で話をしていた。項目に女は厳選することを付け足そう。

だが、確かにコイルを切望するとは珍しい。少し興味が湧き、そのイケメンとやらを探さしてみることにした。



…確かにイケメンである。イケメン、ハンサム、好青年、美青年。見た目が良いと言う褒め言葉を全てカッさらうであろう容姿をしていた。

近くを歩いているルリリと、紫色の宙に浮くポケモンはあまり表に出さないようにしているようだが、懐いていることが把握できた。

まぁ合格だろう。

さっさと捕まろう。私はコイルの名前を歌うように読んでいる男の前に飛び出した。



『あ、いりょ、色違いだ』

『ラッキーじゃない、捕まえときなさいよ』

「……。」



笑顔で居た男は俺を見て、その笑顔のままで固まり、ギシッギシッと壊れたブリキの玩具のように2、3度に分け私から顔を逸らした。

それから男は何事もないようにコイルの名前を歌うように呼んで草むらを掻き分けていく。

…どういう事だ?結構距離があったし気付かれなかったのか。私はそう考え、もう一度男の前に飛び出した。



「ふぁっ」



男は確実に私を認識した。目が合い、男は声をあげた。こうなればきっと私を血眼になり捕獲しようとするだろう。私は体をくるりと回しアピールをするサービスをした。



『ごしゅじん?』

『…察しなさいよ、鈍いわね』

「…こー、こー、こーいる、ほいっ」



そう歌うと男は180度回転すると草を掻き分け進んでく。

何故だ!?人間なら喉から手が出るほど欲しがられる色違いの私を素通りしていく…?色違いを求めない人間だというのか?

…それは好都合かもしれない。チヤホヤされたいとは思っていない私は確信した。

俺が求めたトレーナーはこの男かもしれない。初心者か、旅をしているかなどどうでも良くなった。



意地でも捕まえてもらおうか。



私はその男をマークし、気配を消して後をつけた。
すると2匹のポケモンが多分私のことについて声をかけ始める。理解はしていないだろうが言いたい事は察したのか男は困った様に話す。



「確かに、コイルが欲しいし、色違いだったけど…。多分俺色違いを、アイツを輝かせてやれる事は出来ねェと思う。だから俺じゃない奴があいつを捕まえるべきなんだよ。キョウヘイとかメイとか。」



男はそう言って困ったように笑った。

あぁ…、あぁ!(歓喜)

私は絶対に彼に捕まりたいと思った。コイルを捕獲しようとし、色違いに目が眩む事無く、色違いのことを考え、尊重する謙虚さ、私は完全にこの男に惚れた。

勿論恋愛とかではなく憧れや忠誠と言う意味でだ。

男は飛び出してきた普通のコイルに美しい投球フォームでモンスターボールを投げる。
私はそれを見切り、同族の前に飛び出しモンスターボールに当たり大人しく収まった。



「ほ、ほげええええええ!!!?」



男が駆け寄って来るのが分かる。それから、逃がそうとしているのが。
私は自ら捕まったのだ!例え貴方が逃がしても私は地の果てまで追いかけよう!



『逃がすなんて無粋な真似するんじゃないわよ』



紫色のポケモンが逃がそうとする男を止める。言葉は伝わらない筈だが数秒目を合わせて、私を見つめて頂けた。



「なんで俺なんか選んだのかねぇ…。」

『貴方ガ良カッタノデス。イエ、貴方デナケレバイケナイ』

「…俺はナル、こっちはルリリとムウマさん。あと一匹居るんだけど、今は居ねぇや」



ナル様、覚えました、忘れる事など消してございません。

暫くしてからナル様はカタカタと震え始めた。



「…あ…ば…!い、いろ、い、色違い捕まえてもうたァああぁ!」



…今更ですか?

ナル様は私の入っているボールを大切そうに持ちながら、不審な行動をしてから走り出した。
美しい容姿に似合わない落ち着きのない行動、素晴らしい!完璧すぎない人間な所がまた私の好感度を上げてゆく。

後にリオと言う黒いポケモンを紹介された。
そのリオという先輩は人語を話せるらしく、私がナル様をどれほど慕っているか伝えてくれと頼んだが、一分ほど伝えて欲しい内容を話している途中に断られてしまった。














その忠誠は出会って一時間ほどのものである

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