馬鹿やって幸せ

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僕は今、さながら一丁のライフルを抱えて死地に向かう一等兵だ。



『なんで僕、バトルフィールドにたってるの?』

「ぼけたの?」



覚えてるよ、現実逃避くらいさせて。



始まりは数時間前。帰りは皆より一足早くヒオウギシティに戻ってくることになった。別に急な用もないが、むしろ帰ってくる道の方が用も何もないので気付いたら孤高の状態で事務に来ていた。

チェレンはよく研究所に来てたから僕が喋れるのも知ってるし、こちらに来る前の僕はメガネチェレンがこうぶt好みであった。
メガネ、ツンデレ、微ショタ顔トリプルショットである。が、最近のチェレンは、何と言うか、全部、捨てたよね。
むしろ今の方がファンが多いが、僕的にはどうかと、どうかと思います!!ほぼ別人じゃん!メガネが本体だろ!?

僕の心の叫びはさておき、またエンリーの応援で邪魔されないうちにとっととバトルを済ませる作戦でもある。



「やぁ、ナル、君が来るのを楽しみにしてたよ」

「マジで?俺はなんで記念すべき初ジムがお前なのか不満だわ」

「失礼だな、ベルの方が良かった?」

「うんにゃ。お前らとはガチメンで戦いたい。」

「…なるほど。たまにはいいこと言うんだね」

「だろ?惚れ直した?」

「まずは惚れれそうなところをようやく見つけたよ」



仲悪そうな、仲良さそうな。コミュ障な割にチェレンとベルには速攻慣れたのが意外だ。
まさかこんな掛け合いを出来るほど仲良くできるのは多分ベルのおかげかな。
多分ベルが居なかったら二人は未だに知り合い以上友人未満の関係だっただろうな。



「ねぇ、君が来たらお願いしようと思ってたんだけどさ。」

「なんぞ?」

「これからジム戦するけど使用ポケモンは2体。その内の一体をリオにして欲しいんだ。」

「いいよボコられきな。」

『いやいや待て待て!!即答すんな!!なんで!?理由を述べて!?』



一応身を守る術として技の練習はしたことあるし、発動させたことはある。戦えるとは思う。そう、実は戦える。

たださ?僕、人間だよ!?何が悲しくて人が人の指示に従ってポケモンとバトルをしなきゃいけないの!
例えば犬と人間が芸を競う様な虚しさがある。

それに痛いしね?!イッツミーガール!!



「リオの本当の力を見てみたいんだ。旅に出るなら戦いは不可欠だし、一回くらいは実践を踏まえ無いと!」

「だって。」

『無理いうな!』

「いや実際無理じゃないし、甘えの心の問題だし。」



無理じゃないねー正直今の手持ちムウマとルリリにも勝てる気がする。
だけど、いいの?人間として、超えちゃいけない線じゃない?なんで元一般女子が兵隊になんなきゃいけない訳?

モヤモヤどうこの場を切り抜け用か悩んでいるとナルとチェレンがコソコソと相談をし始める。嫌な予感が物凄いする。


そしてクルッと振り向いたチェレンに対し、僕は絶対に逆らえなくなった。



「ま、別に無理強いはしないよ、面倒だし」



そう言うとクイッと赤ぶちメガネのフレームを押し上げ、プイっとそっぽを向く。
僕のうちにあるなんだか言ってはいけない怪しいメーターが一気にカンストした気分になった。



『一体だけなら戦う!!』



僕の軽率な発言はアルセウス以来だが、その時以上に後悔した。そりゃもう、本当に。



そして冒頭から戻ってきた訳だが。

まず一体目は新メンバールリリがあっという間にミネズミを倒し、僕は心の準備をする間もなくフィールドでヨーテリーと向かい合う。



「「じゃんけんぽん!」」



先行が決められないからジャンケンで決める二人。チェレンもなんだかこのバカに釣られてちょっとおバカ気味。
そして僕へのサービスなのかメガネをつけたままだ。



「じゃあ俺からなー」

『ごしゅじんもリオもがんびゃっがんばれー!』

『はぁ、つまんない。アンタ早く散ってきなさい』

「で、何ができる?」

『極力何もしたくない』

「破壊光線!」

『出来ません!』



明らかに舌打ちが聞こえたがポケモン図鑑で調べながらバトルする事になった。ハンデくらい許してくれるチェレン。
そしてされた指示がのろい。これなら僕でも何とかできる。チェレンはチェレンでヨーテリーにふるいたてるの指示をする。

意外とあの技はあとが怖い。



「そうだなー…。取り敢えず指振って」

『な、なんでそんな賭け技!?』

「オメーなんかできんのかよ他に!ゲップすっか!?」

『はーい指振りマース、チックタックチックタック』



ホントに指振ってなんとかなるのかと疑問に思ったが、ピタリと止めた瞬間に指先が光り、



『ほ、ほげぇえええ!指から火が出たぁぁあああ!!!』

「焼き尽くすだな、お前覚えられる技出してンじゃねぇよ」

『知らんがな!!』



しょっぱい攻撃、そう吐いた友人にこの今だ炎を出している指を向けたい。
ヨーテリーは確かに攻撃を食らったが、まだ少し余裕を持っている。後ろで「やっぱ特攻は…」とか「タイプ一致が…」とか呪文を唱えるナル。
僕は取り敢えず体当たりして来るヨーテリーをひたすら避ける。

つらい、何がって、精神的に



「よし、リオ、捨て身タックル」

『嘘でしょ!?嫌だよ!反動来るやつやん!痛いやん!!』

「体当たりにしたってどうせ痛いって言うんだろ。多分体当たりじゃあ落とせないし、お前特攻低いし。タイプ一致の捨て身タックルならヨーテリーを一発で落とせるって。一瞬痛いだけだよ。」

『非道!!』

「ナルは肉を切らせて骨を断つ戦法か」

『お前の主人、賢いな!』

『もっと私のことを考えてよ!!』



なんて野蛮人!



『だったら指を振るに賭けるよ!!!』

「あ、ちょ、」


ドガァアアアアアアアアン!!!!


「「リオーーー!!!!!!!」」



コントかよ。

僕はアニメのトゲピーの様に指を振るお約束の大爆発を引いてしまった。


あたしって、ほんとバカ















たんたんたらたーん♪ナルさんのポケモンは皆元気になりましたよ(タイトル)

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