馬鹿やって幸せ

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だから人間は嫌い。

サンギ牧場とか言う所でアタシは手のない自分を恨みながらそう思った。

アタシの前のトレーナーはアタシを捕まえて今キーキー騒いでるアイツの様な女にアタシをプレゼントした。最初は喜んだものの、鬼火と怪しい光しか覚えてなかったアタシに弱いと宣告してトレーナーに押し返した。
トレーナーはお前のせいだとアタシをぞんざいに捨てた。それ以来人間は嫌い。本当はこんな締まりのない顔のイケメンだって嫌だったけど、あの女みたいなアイツよりかはマシだった。
…ゾロアには悪いことしたけど。

とにかく、アタシは人間、特にこうやって甲高い声で喚く見た目だけ女が大ッ嫌い!



「ナルさん頑張れぇ!メイに負けるなぁ!!」

「エンリー、ちょっとは静かにしてろっ」

「つ、ツタージャ、つるのムチ!」

「ムウマさん怪しい光っ」



サンギ牧場で約束していたメイと言う少女とのバトルの最中、先にいたハリーセン頭と砂時計女がやってきて観戦をはじめる。ツタージャとのバトルは楽しかった、でも水を刺されてテンション下がる。ツタージャだってそう。

…それに、応援に夢中になって砂時計女が抱いていたゾロアを忘れたのか手に力を込めて抱き締めるから苦しそうな声をあげている。



「…早く終わらせてゾロ太郎を解放させてやろう」

『もちろん勝ってね』

「ムウマさんお願いします、鬼火!」

「タジャァッ!」



締まりのない顔のイケメン、もといナルは、鬼火と怪しい光しか覚えてなかったアタシを"嫌がらせ型"とか言う育て方をするらしい、アタシの技は攻撃系より特殊系が多い。

混乱、火傷を負ったツタージャはジワジワと体力をなくしていく、…ちょっと悪い気もするが、ちょっと快感を覚える。トドメにリオが拾ってきた技マシンで覚えたシャドーボールをぶつけてやれば簡単に倒れてしまった。



「キャアアアア!!!すごおい!!ナルさんってホントに強くてカッコイイんですね!」

『鬼火と怪しい光でジワジワ体力削ってシャドーボールで落とすって、カッコイイ戦術かな…』

『アタシだったらカッコイイとは言わない。』



ナルは砂時計女が近付いてきたのを気付かない振りしてメイに話しかける。ツタージャを優しく抱き上げ傷を触らないように撫でる。よくできた少女だこと。
それに比べ、砂時計女は何が悔しいのかメイを殺気を込めた目で睨み付けていた。
…何が悔しいのかって言ったって、まぁ分かるわよ。理解し難いだけで。
羨ましい妬ましい、アタシのトレーナーに惚れてしまった故にどの女も敵に見えてるのだろう。醜い醜い。



「負けちゃいました…、やっぱり強いんですね…あはは」

「メイちゃんやい、メイちゃんやい」

「…?はい?」

「なにかお忘れでは?」



糞だらしないニヤニヤ顔でメイに話しかける。世間一般でゲス顔というそれは、締まりのない顔の筈なのにカッコ良く見える。イケメンとは得であり、不便だ。

ある意味禍の種、わかりやすく言うと「私のために争わないでぇ!♂」である。

メイは気付いたようで少し頬を染め、モジモジとしたあと勢い良く、



「ナルさん!また次もお願い!それとバトルの上手い立ち回りとか教えて!」

「えー、さん付ー?」

「これくらい勘弁してよぉ!敬語やめるのも結構一苦労だしぃ…」

「ヒュウ兄みたいに呼んでみるとかどう?」

「…ナル兄?」

「………ちょっとハリーセン探してくる」

「ナルさん!?ハリーセンならここにいますよ!?」

「いや俺ハリーセンじゃねぇし!この辺生息すらしてないし!!」

「…っナルさぁん!エンリーが呼び捨てにしてあげまs「ヒュウ!忘れ物っ…て皆揃ってるね…。」

『大丈夫!来たばっかだから僕たち!ヒュウとは別行動でキョウヘイはぶってたわけじゃないからァ!!』



騒がしい、これ程手が欲しいと思ったことはないわ。

砂時計女が懸命になんか話そうとするも、キョウヘイとか言う少年が言葉を遮る。男性陣に近付こうとすればハリーセン頭がキョウヘイと勝負を持ちかける。いっそ哀れに思えてきたわ。

締まりのない顔のイケメン、改め変態は妹属性にやられてフラフラしていたがシャキッとさせるためにアタシが鬼火を撃っておいた。

変態は二人のバトルの審判を務める事になり、アタシもボールに入るのも暇だし、バトルを見ている事にした。



『バトル、始めぇ!!』

「あ、お前が言うんだ…。」



バトルは可もなく不可もなく、キョウヘイは先ほど見つけたらしいリオルでミジュマルと戦っていた。
相性を考えられるレベルには成長しているようね。

直ぐに飽きちゃって、ちょっとその辺を捜索する。これでもアタシ、女の子だからこの辺に生えてる草花が好きで近くで見たかったところだわ。
多分アイツに言えば問題なく連れてきてくれるけど、一人で静かに眺めてみたい所でもあった。



『さいてい!さいあく!男なんてだいっきらい!』

『…姦しいのは勘弁して欲しいわ』



もういっそ、鼓膜が無くなればアタシの耳に姦しい声が届かなくてもいいかもしれない。

草むらから可愛らしい声が聞こえてきて注意しようと覗くと青くて丸いのが居た。ヤダ、あれ確かノーマルタイプじゃない?アタシノーマルタイプ苦手なのよね、触れないくせにズケズケと話し込んできて。



『ちょっと、うるさいんだけど。』

『ひやぁ!お、おばくぇ!おばけ!』

『噛んだの言い直したところでアタシの記憶にはバッチリ収められてるわよ』



お化け、と言われようが否定しないわ。ゴーストタイプなんて大体お化けだし。

どうやら丸いのは泣いていたらしく、と言うかまだ泣いているが、顔をぐしゃぐしゃにしていた。

因みに丸いのの周りも何故かぐしゃぐしゃである。



『何泣いてんのよ。アンタがうるさいせいで草花の素敵な景色が最悪よ。』

『さいあくなのはあいつよ!いろち?色違いだからってえらそうに、おとこよりちからのちゅよいおんなはおんなじゃ、ないっ、てぇえ!』

『あーあーあーもー!うるさいわね!』



めんどくさいからナルの元に帰ってボールに篭ろう、もう暫くは外に出たくないわ!女難の想が出てるに違いないわ…。

そう思った矢先、現れたのはアタシのトレーナー、今帰ろうとしていたが、彼から来るとは。

…でもこれってアタシがコイツ虐めて泣かしたみたいじゃない?



「ムウマさん責めて一言言ってからどっか言ってくれよー焦っただrあばすっ!」

『しねぇぇえええおとこおおおおおお!!!』



丸いのの丸い尻尾がナルの顔面にめり込んだ。スローモーションで倒れて行くように見え、何故支えられると思ったのかリオが後ろで両手を構え、潰された。



『ぐえっ!』

「いってぇ…俺の顔大丈夫?鼻一個取れてない?」

『何個あるつもりなのよ。取れてないわよ。』

『おとこぉおお…ころすぅううう…』



横でいきり立つ青くて丸いのから一応トレーナーを守るために前に立つ。
…一応ね。

でもナルはアタシの気遣いを気付かずにアタシを越えて丸いのに手を伸ばした。が、尻尾で叩き落とされ涙目になっている。情けない。

行動の意図は良く分からないが、多分アタシが丸いのに危害を加えて自分に攻撃してきた、なら謝るべきとでも思った行動でしょう。



「お前もムウマさんやゾロ太郎みたいに人間になんか悪いことされたのか?そんな剣幕で人間を襲ってきて…。」

『…ハァ?いみわきゃっわかんない』

「あんまり人間に危害を加えちゃダメだぞ?」

『危険ポケモンとして捕縛されて殺処分とかも可笑しくないんだよ。』

『う、うそ!うそつき!おとこ!』

「ぶべらっ!」



ある程度近付くも、尻尾で今度は頬を叩かれて横に転がされた。

でも意外。アタシがやったとは微塵も思っていないのか、それともアタシがやったとして自分の保身のため、話題を出さないのか。

…思ったけどそんな深く考えてるほどの人間じゃなかったわね。多分アタシが何もしてないって察してくれたのだろう。



「な、なるほど…力持ち…」



ナルがそう言うと丸いのはビクッと肩(無いけど)を跳ねさせた。多分特性力持ちのせいです女の癖に馬鹿力とか言われて男嫌いにでもなったのか。

下らない。



『力持ちって?』

「特性。物理攻撃の威力があがるんだけど、何でも攻撃全振りした力持ちマリルリはグラードンの物理攻撃寄りも高いらしいよ…。」

『マジかよ!』

「…あっ!そうだ!ルリリ、この辺でハーデリア見なかったか?なんか迷子らしくて。」

『お、おとこ…。』

『ルリリ、男が嫌いなの?』

『同族の偉そうな男に馬鹿力女って言われたらしいわ。』



ふーん、と気の抜けた声を漏らしたリオはそれはそれは素朴な疑問をぶつけた。



『なんで人間の男を襲うの?』



言われて丸いのはハッとしたように、それだって顔をして落ち着きを取り戻した。自分が人間にやってしまったこと、特に気にしてないようすの人間、それどころか先ほど理不尽な暴力を振るったポケモンに笑顔で撫でるイケメン。

アタシの目からでもわかりやすく丸いのは落ちた。



『わたし、あなたといっしょにいる!!』



イケメンとは得であり、不便だ。

一番の被害者はイケメンではなくアタシだが。
ハーデリアの居場所は分からず終いだが丸いの、ルリリの居場所は決まってしまったらしい。


アタシは今、物凄く手が欲しい。















無理くりでごめんなさい(タイトル)

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