馬鹿やって幸せ
□05
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「ね、ねぇ皆!初めてのバトルとかしてみない?」
凍り付いた空気の中声を初めに上げたのはベルだった。まぁ凍りつかせたのは俺だけどね!
メイがお手手のシワとシワを合わせて賛同するかわいい。その可愛さに負けてかヒュウもテンション上がり目で賛同する。何故かリオと傍観していたキョウヘイも、ボンッキュッボンのエンリーも嬉しそうに頷く。
「ハッハッハッ。ポケモンバトルでテンション上がるとか可愛いなぁー」
『アンタは上がらないの?』
「戦えるポケモンが居ないから。ポケモンになって戦う人間どっかにいないかなー」
『あーはいはいごめんなさいね!!!』
でも仲間が増えたじゃん。
そう言ってリオは俺にムウマを渡してきた。コイツも寄越せと言われた時はどうしてくれようかと悩んだもんだが、場が丸く収まって良かったわ。
ベルのバトルしようぜ!のおかげではあるが、これもこれでまた厄介そうだ。
『丁度いいから女子対決と男子対決で別けようか。』
「そうだね。ヒュウ、バトルだ!」
「初めてだからって手加減しないぜ!」
「エンリーちゃん宜しくね!」
「…えぇ!絶対負けないからぁ…!」
ベルは男子組の審判を、俺は女子組の審判をすることになった。でも最悪な組み合わせにしてくれたもんだよなこの無知ポケモン。ほら見ろエンリー凄い殺気だよ、キャットファイトでも始める気かよ。
ゲームだと体当たり合戦と相場は決まってる、実際この世界でもそうだった。けどそれは避けろとかの指示が分からなかったモブ初心者トレーナーの話。
「ツタージャ、頑張ろうね!」
「タジャ!」
「廻、絶対勝つよ!!?」
「あ、あぅ…」
「バトル、始めッ!」
「お先にどうぞぉ?」
「あ、ありがとう!ツタージャ、睨み付ける!」
メイちゃんはいいポケモントレーナーになりそうだ。補助技の性能を理解して使っていき、有利にバトルをすすめる、俺の様に技を全部攻撃にするのは宜しくないし、リオみたいにピカチュウの覚えてる技が全部電気タイプとかもっての外。四つしか使えないのがいけないんだがな、きっと!
だがこの世界は技の覚えられる上限はないようだ、俺バトルしたことないから知らないけど。
「攻めないと倒せないよぉ?廻、体当たり!」
「くぅんッ…!」
「タジャッ!」
「ツタージャ!大丈夫!?」
「…タジャタジャ!」
「…そうだね、私達も攻めないとね!ツタージャ、体当たり!」
『…凄い、会話が成立してる。』
「俺だってそのくらいわかるしっ」
『ゾロアとムウマがアンタのことなんて言ってたか分かる?』
「ウザイ」
『正解』
当たっちゃったなー。そんな悲しい真実はさておき、体当たり合戦は初めに睨み付けるで防御を下げた分、メイのツタージャが優勢である。エンリーも何処か苦虫をかみつぶした様な顔つきになっている。
だがそれがいきなり、閃き勝ち誇った顔に変わった。
「フフッ、ゾロア今よ!イカサマ!!」
「くぅんッ!?」
「何してんのよ、早く発動しなさいよ!」
「ツタージャ、体当たり!」
「タァァジャッ!!」
俺は頭を押さえつつメイの方に手を挙げ試合を終わらせた。
…俺頭痛持ちだからそういうのやめて欲しい。
覚えてもいない技を指示して、ポケモンが混乱してる中技食らってボッシュートって…。一応事前に渡してあるポケモン図鑑で覚えてる技が確認できるしメイはちゃんと確認してからバトルしてたぞ、お前は何をやってたのか…。
「廻!廻ぃ!!」
「えっと…廻ちゃんにこれ、使ってあげて?お母さんがくれた元気のかけら…。」
「さいってい!!廻にコンな酷いことしておいて良くそんなこと言えるわね!!!」
「きゅぅ…!!」
「エンリーちゃん落ち着いて!廻ちゃん、苦しんでるよ!!」
「初っ端から飛ばしてんなー。」
所詮エンリーは逆はー狙いと言ったところだろうが、こんな始めの始めで好感度が底辺の逆ハー狙いとか、やっていけんのか?後2、3話で最終回とかなんないよな?
エンリーは戦闘不能になって傷だらけのゾロ太郎に止めを刺すかの如く力強く抱きしめる。それを心配するメイちゃんかわいい。
騒ぎを聞きつけキョウヘイの勝利でバトルを終えた二人がこちらへ来る。ヤバイヨヤバイヨ、俺は今怒ってるぜモードのヒュウが着々と近づいてきてる。君とエンリーのおかげでまだ初めてのポケモン編が終わらないんだからな?
ピイィィィィイイイイ!!!
俺の下真横から高い笛の音が響いたと思ったらリオがどこから出したのかホイッスルを鳴らしたらしい。先に言って?ビビったやろ?
『エンリー減点3』
「…ハァ?」
『ハァじゃないよ試験だって言ったでしょ。負けてヒステリックになる精神力にマイナス1、傷付いたゾロアを強く抱き締めてる、ポケモンへの配慮の無さにマイナス1。メイちゃんの優しさを踏みにじったっていう人間性の問題にマイナス1。』
「なっ何よそれ…エンリーはそんなことしてないわ!ねぇ!?ナルさん!?」
「俺の子のこと信じられないの?」
減点制なんて聞いてないけどね。でもナイスアイディアなので乗っからせてもらう。早速こんだけ減点になったのだから落第点10以上にしないと持たないな…。
『因みにマイナス7点になると強制終了だから。』
さよならエンリー、さよなら読者の皆さんそろそろ最終回です。
んなアホな。
お姫様はピエロと化す