馬鹿やって幸せ
□03
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ーーー××は、俺が守ってやるよ
ーーーありがとう、炎騎!
ーーー今日も××は可愛いなぁ…
ーーーそんな…///
ーーーお前のことを大好きだって思ったら人間になれたんだ!
ーーーかっこいいよ!!
夢のような世界、それは正しく夢だった。
少女は憧れていた。
誰もが振り向くほど美しい美貌を持ち、ひとつ微笑めば必ず惚れる格好いい男達、手持ちの旅仲間は強く可愛くカッコ良く、最高に懐けば人に化け、人間とひとりの少女、自分を取り合う。
なんて素晴らしい甘美な世界。
誰もが見えていない様に見られることはない。嫌われはすれども好かれることは差ほど無く、周りは二次元とはかけ離れた男女ばかり。
少女は夢に憧れ、夢に墜ち、夢に生き、夢を現実とみなした。
違う違う違う!私はエンリー!誰にでも愛されて手持ちは私を崇拝して!愛して愛して!!!!
少女はついに"死ねばトリップできる"と妄想し実行して成功した。
目が覚めたのがつい昨日、ポケモンを貰えるのが今日。エンリーってばホント幸先ついてるわ!!
糞みたいな世界からようやくこの世界に帰ってきた時は私の手持ちも持ち物も全部なくなってた、仕方ないわね、アレは仮染めの私だったし。容姿はそのままだったから良しとするわ。
「エンリーちゃん!おはよー!」
「ポケモンセンターで大丈夫だったか?」
「記憶喪失で大変だね…。」
「…ううん!全然平気!」
昨日私を見つけてくれたキョウヘイとヒュウ、それから変な髪の女、メイ。
キョウヘイが主人公なんだからメイはいらなくないかしら!?まぁこの二人がポケモンを貰うのが明日って聞いて勿論私も便乗させてもらったわ。だってこれはきっとアルセウスがくれたポケモンゲットのイベントだもの、メイはおまけね。
「よし、ポケモンを貰いにいくぞ!」
「「うん!!」」
「あ、待ってよー!!」
三人は私を気にせず走り出した。男の子二人はともかくメイまでなんで走るのよ!アンタは私を気遣って崇めなさい!
それからBW2のPV通り、階段を駆け上がるとこっちに背中を向けたベルが振り返り純粋ぶった笑みを浮かべあえて良かったと言う。
…そのメガネ、チェレンのだって噂があるけど本当かしら。だったらそれは私が頂くもののはずよね。
「貴方達がキョウヘイ君、メイちゃん、ヒュウ君、それからエンリーちゃんね!!」
「はい!アララギ博士のお弟子さん、ベルさんですよね!」
「思ってたより若いんですね…。」
「そうかな…、えへへっ」
「あ、あのぅ!ポケモンって…?」
ベルの長ったらしい自己紹介なんていらないから早く私に珍しいポケモンを頂戴!!
事前にアララギ博士に御三家じゃない特別なポケモンを要求してた。一体どんな特別なポケモンをくれるのかしら…!
ブリっ子ベルは私用のポケモンはまだ連れてきてる途中だから最後でって言われた、何よ、ホントトロイわね。
「じゃじゃーん!この中にあなたのパートナーがいまぁす!」
「わぁー…!!私きめられないよぉ!キョウヘイ先決めて!」
「じゃあお言葉に甘えてー…」
そうしてキョウヘイはポカブを、メイはツタージャをもらっていた。残り一つはヒュウの物になるのかと思ったけど卵から孵ったポケモンはミジュマルで、残ってるポケモンも、ミジュマルだから次の初心者トレーナーに、とかどうでもいいこと教えられたわ。
そんなことより私用のポケモンはまだ!?
イライラしてつい爪をかんじゃったらヒュウがため息ついた。
「エンリー、お前がわがまま言ったんだからちょっとくらい待てよ」
「ヒ、ヒュウ…でも皆が持ってる中エンリーだけ仲間はずれみたいじゃない!」
「まぁまぁエンリーちゃん落ち着来なよ…」
「ヒュウ兄もそういうこと言わないの!」
「…ハァ」
ヒュウ、大丈夫よ?私は分かってるわ。素直になれなくてつい私に突っかかっちゃうのよね?ホントは優しく慰めようとして、でも照れちゃってキツくなっちゃったの。
あぁ!ホントに素晴らしい世界!早く私のポケモン来ないかしら…!
炎騎、水宝、緑苑、幻狼…!
「スンマセン!お届けの品お持ちしましたァ!」
『僕喋るゴンベのリオ!ビックリするだろうから先に名乗っときました!』
「コイツが寝坊したせいで遅れちゃって…。」
それは見たこともない"キャラクター"だった。
朝の日に照らされる髪はキラキラと輝き、スラッとした鼻や艶やかな唇、凛とした瞳は宝石のようで。
キョウヘイ達のような細い物でなく男性特有の筋肉のついた逞しい肉体。
「どうもはじめまして!ナルって言います。一年前に記憶なくしてアララギ博士のお世話になってます!」
『僕も同じく記憶をなくしててなんで喋れるかは分からないです!リオって名前です、宜しく!』
欲しいと思った