馬鹿やって幸せ

□02
1ページ/1ページ



「アララギ博士、持ってきた書類ココでいいっすか?」

「あら、ありがとう!ついでにそこにある5日後の新人トレーナーに関する書類片っ端から持ってきてくれるかしら?」

「ウッス!」



うちこと俺はアララギ博士に頼まれた書類をペラペラと見る。この書類にはキョウヘイ、メイ、ヒュウと名前が書かれていて横にその三人が写っている写真がクリップで止められていた。

トリップしてから一年、もうこんな時期かとしみじみする。

俺らが騒いでいたのは1番道路でベルが博士の手伝いで再探索をしていた時に偶然俺らを発見してくれた。因みに俺の変態発言と行動は見られてなかった。

それから一応記憶喪失という事にしてアララギ博士の手伝いをすると言う名目で居候をさせてもらってる。無論、アララギ博士とは別室。



「ん?このエンリーってなんスカ?何の用語?」

「あぁ、用語じゃなくて名前よ。初心者はその三人のはずだったんだけど、今日急にもう一人女の子が追加されたのよ。」

「ヘンリーとかなら良く聞きますけどエンリーは初めてっす。」



エンリー、と言う女の子の話題にアララギ博士は笑顔から悩み顔になってしまった。
よくわからず書類を見ていくと、どうやら初心者用ポケモンが不足しているらしい。俺の先輩であるミネズミ先輩やチラーミィ先輩の案もあったが珍しいのでないと嫌だと断られたらしい。
ウチの喋るゴンベでは駄目だろうか?



『あんた今不穏な事考えなかった?』

「お、ベルおかえりー。」

『おい無視すんなこっち向け』

「ナル君、ただいま!リオちゃんありがと!仕事がはかどるよ!」



そう言ってメガネベルがリオを返してくれた。
コイツが何の手伝いをしたかというと、バトルがからっきしなコイツにできるのは通訳位、もしくはものひろい特性しかない。今回は前者の仕事をしてきてやりきった顔。
ベルは両手に一つずつ持っていたボールを俺に渡した。別にこれは俺のものではない。研究所は広いから特殊なポケモンを預かっていたりする。

それはこの二匹の様に人間に捨てられたり酷いことをされて心を閉ざしたポケモンとか。

そんなポケモンのカウンセリングのような役割をリオが担っている。



「おー、お前らもおかえりー。今日はどこ行ったんだ?何したんだー?早く俺にも触らせろー。」

「今日は草むらで野生のポケモンと遊んでました!」

『でも野生には返せないよね、仲間が居ないし。』



この二匹は違う地方のポケモンでこの辺には生息地がなく、ただでさえ精神的に弱っているこの二匹には同族の群れが必要、という訳で逃がす事も出来ず研究所で世話をしてる。



「そうだわ!彼女にその子を任せましょう!」

「ほぇ?!正気っすか博士!」



言っちゃ悪いが何処の馬の骨とも分からん奴に可愛いこの子達を預けるのは気が引ける。だって十中八九トリッパーだろう、もしそのトリッパーが人に興味無いトリッパーであるなら良いんだけど。

そうでないならこの子達にまた新たなトラウマを植え付けてしまう。



『何処の馬の骨とも分からん奴にこの子らを任せるんですか?』

「うわーはっきり言ったな。俺が言うか悩んだやつ。」

「勿論、会ったことない子に任せるのは忍びないわ。だから監視役がいればいいのよ。」

「監視…ベルですか?」

「私?でも私も仕事があってずっとなんて…」

「ナル、貴方が一緒に旅に出るのよ!」



アララギ博士の指さしポーズで時間が止まる。
指先は俺に向いてる。ベルも超絶笑顔。
俺とリオが顔を見合わせる。



『良いんじゃない旅でちゃおうよ』

「問題はお前じゃあ!!!」

『そうでしたァ!!!』



そりゃ人間上がりの彼女だから仕方ないにしろコイツがバトルできない以上俺はココらから出られない。まぁ出る気もなかったが。旅なんてもっての外だ。



「ナル、安心して?偶然にもここに傷付いて人間の愛情が必要なのが丁度2匹…」

「アララギ博士非道だ!この子達を出してくるなんて…!」

「この子達の為よ!働きなさい!」

「働いてるでしょ!?」

『書類運びとパシリしか能がないけど!』

「お前に言われたくないけど否定できない!」


「ナルが一緒に居てくれるなら安心だね!」



不毛な俺らのやり取り曇りなきベルの純粋な眼によって俺の敗北に終わった。












何があっても彼女には勝てない

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ