馬鹿やって幸せ

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『お前らは死んだのだ。』



唐突なセリフに私もナルも何も言えずにポカンと巨大な生物の前に立ち尽くすばかり。

いや、死んだのは知ってます、事実です。

地元では売ってないゲームを買いに行く途中にナルが突っ込んできたトラックに引かれて、駆け寄った私はトラックがぶつかった際時間差で落ちてきた鉄筋の下敷きになって死んだんだと思う。

いや、死んだのはどうでもいいんだよ。



「美〇セウス…」

「アルセウスな。映画の声優〇輪さん演じてたけどさ。

…アルセウス!?」

「遅っ」

「なんで冷静なのよ!アルセウス!」

「あまりの驚きで反応できない時って、あるよね?」

「うわ良く見たら顔色ワル過ぎっ、手も震えすぎ!私より余裕内じゃない!」

『話を進めるぞ。』



テンパってる私たちを他所にアルセウスは腰をおろし話を進めようとする。



『お前らは私に選ばれた。暇潰しの玩具にな。』

「ストレート!!もっとオブラートに包めませんかね?!」

「あっ…(察し)」

『お前らを私たちの住む世界に招き入れてやろう。選別に願いを三つ叶えてやる。願え。』

「そのうえ横暴!…ナル、どうする?」

「ウチ等に選択肢があると思える?」

『無いな早く願え。』

「なんて酷い創造神っ!」



とはいえ私達に選ばないという選択肢は元からない。選ばないでいたってアルセウスと無言で向かい合う事しか出来そうにない。

なんで選ばれたとか、願い事しなければいけないのかは気にしない。聞いたところで答えてくれそうにはないし、横の友人は良くあるポケモンの夢設定ですって言ってから悟りを開いた顔をしている。



『はよう願え。次が控えている。』

「ウチ優柔不断で決められないからリオ先に決めてて。」

「えぇっ…私も優柔不断だから思いつくのに時間かかるよ…」



うんうん首をひねる私達とはようはようと短気なアルセウス。
そこで私は名案を提示した。



「ランダムってどうよ?」



まさかこの軽率な考えで人間を辞めることになるとは思っても見なかった。
今思えばアルセウスの面白そうな玩具を見つけた様な顔をした時に変えとけば良かった。




『いいだろう、素敵な特典を期待しておけ!では送ろう。』

「あぁ、ウチのお願いもソレナンダナー考える隙もクレナインダナー」



アルセウスが眩い輝きを放つ、そうしたらなんだか眠くなって、眠く…、ね…、……







『ハッ!夢か…夢…夢じゃないな…。』



余りにも非現実的なことが起きたあとだったからこんな目覚め方をしてしまった。
夢だったら多分私達は病院で目を覚ますだろうけど、くさむら、なんですよね、ここ。

私の地元は下町であって草むらが広がっている所なんてなかったし、トラックにひき殺されたのはコンクリートの道路だったから此処は多分、アルセウスの、ポケモンの世界。

…まずは友人さがしだ。多分近場に居るとは思うんだけど、うん、隣になんか寝てても分かるイケメンがいるんだけど、ナルは見つからないなー。

しかしこの人、カッコイイな、タイプじゃないけど。

整った顔、サラサラな髪、ガッチリとした身体、ゲイに受けそuなんでも御座いません。



『取り敢えず起こさなきゃ…』



取り敢えず揺さぶってみようと手を伸ばす。

なんか、私の知ってる手と違う。なんか、黒い。なんか、毛深い。

カタカタと震え始める手を抑えて自分の姿を確認出来そうなものを探す。近場に水場があったので恐る恐る覗き込む。

澄んだ水、そこに住む水ポケモンが泳いでどこかに行く。残ったのは水に映るゴンべの姿のみ。

右手を上げればゴンベも右手を上げる、ほっぺを引っ張ればゴンベもほっぺを引っ張る。

あっ...(察し)



『わたし、ポケモンになってるー!!!』



あれ?これなんて言う不思議なダンジョン?空のなんとかなダンジョンすごく泣けるゲームです、オススメですあれ?なんで宣伝?



「っ?…草臭い…。」




起きたイケメン、声もいい声ですね。神は貴方に二物も与えたようです。

上半身を起こしたイケメンに近寄ると少し驚いた顔をした。起きたらいきなり(ゴンべとはいえ)ポケモンが近づいてきたらびっくりするよな。

まぁ、察してますよ、このイケメンが誰なのか。私がゴンべになったんだし、あいつがこうなっても疑問はないな、いや、疑問だらけだけど。



『先に言っとくわ、わたしはリオ。お前は男になっています。』



イケメンは無表情を慈愛に満ちた微笑みに変えた。
この顔は「何言ってんのコイツ」というよりは考えるのを放置した時の顔だ。静寂が痛い。1分位黙ってたのではって言うくらい静かだったが、ようやくイケメンが口を開く。



「えっと?あえ声が鼻声じゃなくて美声にっ!」

『そこの水場で見てきなよ…』

「どれどれ…。………。」

『どうよ。』

「イケメン過ぎてなんとも言えない…。」




ポリポリと顔を書くナル。二人で頭の中が混んがらがってるから沈黙になる感覚が狭く長い。

なんでポケモンになったとか、なんで男になったとか、これからどうするとか、考えたら尽きない。やっていけるだろうか…。余計なことしてくれるアルセウスめ…。




『…ナルさんナルさん何してるのなんでズボンの中覗いてるの何見てるのナニ見てるの?』

「アイエエエ!チ〇コ?チ〇コナンデ!?」

『なんでじゃないよ特典だろ!チ〇コって連発すんな変態女!あ、ちげぇ変態男!!』




冷静そうに見えたナルだったけど内心天パリまくりだったらしい。ちょっと怪しい行動で人の目が無いか怖い。取り敢えず頭を冷やすように水で顔を洗わせた。



「誰かいるの?」



あぁ、神様、どうかあの言葉が聞かれていませんように。でもろくな神ではなかったとおもいだした。

キラキラ輝く金の髪、純粋な瞳の少女、ベルは不思議そうな顔をした後眩いくらいの笑顔を向けてくれた。







神様だって遊びたいよね


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