感謝感激雨霰!

□花一匁
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僕は砂浜に膝をついた。最強補正がある筈なのにデンジに負けた。最後まで麻痺しながらも戦い続けたマナフィも今は所々黒くなり目を回している。



「デンジ…!そこまでしなくてもぉ」

「挑戦者には本気で挑まないと失礼だからな。それに、お前の方が酷い目にあってたろ。ハンデもなしに…」

「デンジ…!デンジ…!!!」



どうしてだ!?なんでそんな目で僕を見るんだ!?
僕は居ずらくなって蒼騎を抱えポケモンセンターに駆け出した。



回復したポケモンを受け取って僕は待合室で呆然としていた。

まさかあんなに強い催眠だったとは。完全に虜になり操られるデンジを思うと可哀相で唇を強くかんでしまう。
どうしたらあの女からデンジを救える?

あの女を殺す、僕の中でそんな案が出た瞬間すとんと落ちてきた。納得、それしかない。

決意をして顔を上げるといつの間にいたのかデンジが僕の前にいた。驚いて声も出せないでいると座ってる僕の隣に座った。



「さっきは悪かった。少し本気を出しすぎたな。」

「…い、いや。あの女は…?」

「……。」

「…デンジ?」

「…マナフィを、手放してくれないか?」

「…なっ!?」

「アイツ、マナフィさえいれば俺は開放してやるって言ってくれたんだ。…なぁ、俺を、助けてくれないか?」



蒼騎を手放せ…?デンジが、開放される…?僕は人殺しになることも無くデンジを救うことができるのか…!

思い出はある。だけど手持ちは他にもいるし、デンジとマナフィを天秤に掛けたら傾く差は大きい。
それに他の幻のポケモンが手に入るチャンスかもしれない。



『ま、まー…?』

「デンジを救うためなら、仕方ない」

『ま…』

「そうか!まだ、あいつは海に居る。行こう!」

「あぁ!」

『ま、まぁああ!!!』



蒼騎の声が聞こえるが、話しかけたら決心が鈍るかもしれない。僕はずっとママと呼ぶ声を静かになっても無視してデンジと海に向かった。



海にはあの女がさっき負けたチラーミィのほっぺを引っ張っていた。

僕に気付くとナナシは優雅に僕の前に歩み寄ってきた。さっきのぶりっ子可愛い路線から慌ててお淑やかで清楚なキャラに変えたのか?
僕は静かになったマナフィのボールを渡すとナナシは両手で愛おしいこのように優しく受け取った。



「だから言ったでしょう?裏切られるのは目に見えてるのって。おバカな子。」

『……。アンタは裏切らないって言うの?』

「知らないわそんなの。裏切られたくなければアタシに好かれるようになさい。」

「…ぶりっ子の逆ハー狙い…!約束だ!デンジを開放しろ!」

「そうだったわね。ひとつだけ聞いていい?なんで男装をしているの?」

「…僕は強くなきゃいけない。」

「あはっ!デンジに負けて何言ってるのかしら!と言うか男装のつもりだったの!?アハハっ!ウケルー!!だったらホットパンツやめて髪切って眉太めに書いてサラシ巻いて出直してきなさい!中途半端な残念ちゃん♡」



一瞬なんて言われたか分からなくて固まった。理解してかっと頭に血が上って怒りが止められなくなった。



「逆ハー狙いが偉そうに!!お前なんてだだのビッチだろう!?伝説のポケモンに目の色変えて、弱いポケモンに当たって!僕からデンジを洗脳して奪って最低なクソ女!!!」

「ブーメランしょ、それ(笑)」



ついには反撃する言葉が見当たらなくて暴力で黙らせるべき、そう判断した僕は上げた手を振り下ろそうとした。

だけどそれはなぜか洗脳が解かれたはずのデンジが僕の手を掴んで止めていた。それに蒼騎もナナシを守るように前に立ちはだかっていた。



「デンジ…どうして…!解放したんじゃないのか!?嘘つき野郎!」

「開放したわよ。ぶりっ子の練習から。」

「…は」

「せっかくのデートに可愛い路線のキャラ作りに手伝えって言われたんだよ。でも俺はコイツの本性の方に惚れたんだ。ぶりっ子される必要はねーよ」

「あらおのろけ」

「それでも他の男とも寝るんだろ、ビッチ」



デンジは僕を抑えたまま見せ付けるようにどちらからともなく口付けをした。それは一生のトラウマ確定で、僕はなにも信じられそうにはなかった。















(舌と舌が絡み合い、水音が響く)
(誰でもいいから今僕を殺してくれ)
(僕を愛する神はそれを聞き届けた)
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