深紅の薔薇漆黒の蝶

□最後に君は〜私編
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最後に記憶に残るのは赤い色

横たわる貴女の傍らで意識が薄れていく中貴女が囁いた

最後の言葉

有り難う

今でも心に残ってる

沢山貴女を傷つけてしまった

束縛、嫉妬、狂気

別れを告げられる度私は貴女にすがりつき泣きながら

何度も何度も「行かないで」と

ある日私は見てしまった

貴女が女と楽しそうに話してるのを

許せない

私はキッチンから包丁を持ち出し玄関で貴女を待っていた

帰ってきた貴女は驚いた顔をして誤解だと否定する

そんなことはどうでも良いの

貴女は私のものなんだから

他の女と話すなんて
































ユルサナイ……












頭に血が上り思わず刺してしまった

はっと気づいたときにはもう手遅れだった

部屋には真っ赤な血

意識が薄れていく中貴女は微笑んでくれた

「ごめんね…あなただけなの…あなたがいなきゃ生きていけないの」

涙が止まらない

泣きじゃくる私に貴女はそっと
「有り難う…愛してるよ」と


酷いことを沢山言ったし逆上して刺してしまったのに
それでも愛してると言ってくれる貴女

血が止まらない

私は急いで救急車を呼び病院についた頃には手の施しようがなかった

貴女はそのまま眠りについた


しかし貴女がそっと目を開けた

私は信じられない夢でも見てるのだと思った

例え夢でも良い

私は何度も何度も謝った

他にも沢山言いたいことはあったけど言葉が出てこない

後悔しかなかった

怒ったり恨まれても仕方がないのにこんな私に貴女は

不安にさせてごめん…ずっと居るよ

側に…ずっと

愛してほしかっただけなんだよね

恨んだりしないよ…有り難う

こんな僕を愛してくれて


そう言ってくれた

手をそっと握ったまだ温かい

貴女が手を握り返してくれることはなかった

徐々に冷たくなってくる手を握りしめ


「ごめんなさい…私も貴女が大好き…愛してる…ごめっ…」

それ以上は言葉にならなかった


きっと私に最後の言葉を言うために一度だけ戻ってきてくれたのだとそう思った



こんなに想ってくれていたのに…

私は…


貴女は私に優しくしてくれた

仕事で上手くいかなかった時も頭を優しく撫でてくれて抱き締めてくれた

愚痴を嫌な顔一つせず最後まで聞いてくれた

風邪を引いて寝込んだときも寝ずに看病してくれた

休みの日は私の行きたいところに連れてってくれた

仕事帰りは毎日会社に迎えに来てくれた

どんなに自分が仕事で忙しくても私のことを想ってくれていた

怒ることもあったけどそれは私の為を思ってのこと

何度か別れ話をされたこともあったお互い大学を出たばかりで社会に慣れていなかった

ストレスで些細なことで喧嘩をした

喧嘩といっても私が一方的にヒステリーを起こして怒鳴り散らしたり暴れていた


別れたくないと何度も何度も言った

貴女はちゃんと話し合おうと言ってくれた

「僕はまだ若くて何度も別れようと思ったんだ…でも君は普段は優しくて仕事も頑張ってて美味しい料理も作ってくれる…僕を信じてほしい…浮気なんてしないし側にいる…だから言いたいことがあるのなら溜め込まず言ってほしい…どんな些細なことでも」

貴女はモテたから心配だった

ただ話をしているだけでも私を置いていってしまうのかもって

だから今日も楽しそうに話してるのを見て怒りで頭が真っ白に

貴女との思い出を振り返りながら何度も何度も謝った

もう二度と貴女が目を覚ますことはなかった



今日のことで警察が話を聞きに来た

私はすべてを話した


私が彼の浮気現場を見て頭に血が上り刺してしまったこと

でも浮気は私の勘違いだったこと



私は殺人容疑で捕まった


精神鑑定をしたが特に問題がなかったので定期的な精神科の医師によるカウンセリングをしながら反省しなさいと警察の人に言われた


刑務所で毎日彼のことを思い
精神科の医師にカウンセリングを受けながら過ごした


もう二度と同じ悲劇を招かないように

しかし殺人犯のレッテルを貼られた人間に世間の目は冷たい

それでも私は生きていかなければならない


私は前を向いて精一杯生きていくことを誓った







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