銀魂

□あかい夢を見る
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その血の出所は、河上の鼻からだった。

ほんの一瞬だけやはり毒か…?と疑ったが
俺からは血が垂れていないことと
なにより河上の口がにやけていることで
そうではないと悟った。

なんだコイツは……?
少し引きぎみで様子を見ていると
河上が肩をガッシリ掴んで、顔を近づけてきた。

「ちょ、ちょっとォォォォォ
タンマァァァアアァァァァ」

握っていたスプーンが下へ落ちた。
思いっきり声をあげ、河上の口を両手で押さえる。

「一旦落ち着こう!!!俺にお粥を食べさせて!!!!食事をゆっくりとらせて!!」

そういうとあっさり姿勢を戻し
側にあったティッシュで畳と自分の鼻を拭き始めた。
俺の手をとったかとおもうと、さっき河上の口を押さえたときに付着した鼻血を拭き取ってくれた。
その間もずっと黙っていて不気味でしょうがなかった。
俺は残りのお粥を黙々と口に運ぶ
河上は畳をずっと眺めてにやにやしたり
頬を赤くしたりしている
気のせいか、さっきまで美味しかった卵粥が味気なく感じた




しばらく時間がたっただろうか。
俺はスプーンを器に置いた。
カチャン、という音にビクッと河上が反応し、ずっと下を向いていた顔が上にあがった。
あ……食べ終わったんでござるか。
とボソッと呟くとばつが悪そうに頭を掻いた。


「ご馳走様でした。美味しかった。」

「また子殿が作ったんでござるよ」


そっぽを向きながら河上が答えた。
なんなんだこいつは


「じゃ、俺置いてくるから」


そう言って食器を持ち立ち上がろうとすると、がし、と手を掴まれた

「………なに?」

「怪我人を動かす訳にはいかないでござる」


俺を斬ったのはお前のくせに、
そう言おうとすると河上がそれに、と続けた。

「退殿に逃げられたらもともこもないでござる。」

実は自ら片付けにいく、と言い出したのは脱出のために家の構造を把握しておきたいという理由もあった。
コイツにはその考えもバレバレだったのか。
つい悔しそうに口元を歪めてしまう。


「拙者が戻ったら体を拭こう。
それまでいい子にして待ってるでござるよ」

「……はいよ」


文字通り俺はいい子にしていた。
逃げることもなく、やることがないのでただ布団に潜って河上の不思議な態度のついてもやもやと考えていた。
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