銀魂

□あかい夢を見る
2ページ/7ページ

夢を見ていた
白い空間で一人さまよう俺。
回りを見渡しても誰もいない

そうか死んだのか。刺し殺されて
特別驚きもせず
現実を受け止めることができたのが不思議だった。

「退殿〜〜」

なにやら聞き覚えのある声が後ろから聞こえる
ここは普通振り向くだろう
だけれども俺の中のなにかが振り向くなと言っている
拒絶しているこの声の主を。

「さーがーーるーどーのー」

振り向くな

「さがるーさがるーさがるどのー」

振り向くな

「さがるどのーさがるどのー」

振り向く…

「さが…」
「うるせぇよォォォ!!!」


……アレ?

ガバッと身を起こす
俺は布団に寝ていた。
視界がボヤけるが、目を擦ってなんとか周りの様子を見ようとする
ふと、布団の片側に男がいるのに気付いた
包帯を巻いた中2っぽい雰囲気の

「高杉晋助っ?!……いたっ」

癖で刀を出そうと腰に手をやったが
刀がない。
おまけに服装が浴衣に変わっている


そういえば刺されたんだっけ
状況が掴めない中、胸の痛みがその事実を教えてくれた

「お前一週間ぐらい寝込んでたんだぞ」

じゃあ俺が河上に刺されてから七日ほど立った、ということか
それと共に夢で自分の名前を呼んでいたのは奴だと勘づいた
あの声は正真正銘河上の声だ
しかし…なぜここにいない?
そして俺は…

「俺はなぜここに居る?」

「知らねぇよアイツが連れてきたんだよ」

「なんの目的だ。拷問か?」

「そんな怖がるこたぁねえって」

「副長たちはどうなった?」

「めんどくせぇな質問攻めすんなって」

余裕ぶった様子でキセルから煙を吸う
白い息が空中にさ迷ったかとおもうと
滲むように消えていく
俺はそれを呆然と見ていた
この状況からして介抱してくれたのは鬼兵隊の奴らしかいない。
何故俺を殺さなかった?

「おい、また子」

高杉が呼ぶと部屋の襖があいた

「なんです晋介様!」

金髪のポニーテール。
来島また子だ。
こいつも大物だが寝起き高杉を見てしまったので驚きも薄れる

「こいつに色々と説明してやれ」

「了解っす!!」

高杉に従順な彼女を見ていると
副長と自分の関係を彷彿とさせる。
ここから帰ったら報告書、出さなきゃ
土方さん無事だよねきっと



また子は俺の横に来ると正座した
露出が多く目のやり場に困る


「いいすか退?これから説明するから耳の穴かっぽじってよく聞くんすよ?」

「うん」




―――――――――






「――てことっす!」




「ふーんなるほどねぇよくわかったよ








じゃねぇよォォォォォォォ!」

「シンセングミッ!!!」

俺が枕を投げつけるとまた子は声をあげて倒れた

「省略してんじゃん
なにも説明してないじゃん
お前ェェェェ!」

「真選組は無事。何も心配するこたぁねぇよ」

「うんありがとォォォ!!!」

簡潔に説明してくれた高杉に白目で
お礼を言う。
よかったァァァァ
皆にまた会えるんだ!

…………ここから出たら。


どうやって逃げよう?
俺今、持ち物とか服とか剥ぎ取られちゃったし、こんな奴らと戦えるわけないしそもそも刀ないし。
シンプルに誰もいない隙を狙って玄関から逃げるか。
しばらく此処にいて、鬼兵隊の奴らの生活リズム、外出の時間を徹底的に把握し誰もいない時間や油断しているときに逃げる。完璧。
それか武器を探しに行くのもありだな
うんうん。いけそういけそう


「ちなみに万斉はお前のことが気に入ったらしい」

「………………」

今まで考えていた計画を忘れてしまいそうなぐらい絶望した。
言葉を失うってこういうことだったんだな。

「退が寝ている間も
ずっと名前呼んでたっすよ!」

あぁ………もういいよいらないからその情報。
今もっとも知りたくない情報だよそれ
俺の心をかなり抉りとってるよ

「あと怪我の手当てしてくれたのも万斉先輩なんすよ!」

色々な情報が流れすぎて頭のなかがパンクぎみです
真選組は無事なようですが
…俺はどうやら無事じゃなさそうです

「どうでもいいけどさぁ…俺帰っていい?無事なんでしょ皆。」

「ダメっす」

そうだよねーせっかく捕まえた幕府の犬
逃がしたくないよねー
こんな化け物二人に囲まれちゃった時点でもうもとの場所には帰れませんよねー

お気に入りってなんだよ
絶対悪い意味でだよ
末恐ろしいわ。何?舎弟とかになればいいの?無理だよ焼きそばパン買ってこいとかパシられてもいってこれないよ
所詮俺なんてアンパンしか買ってこれないよ

それともこれからじっくりかけてじわじわと殺す?俺の苦しむ様が気に入ったから?それも無理だわどちらにせよ俺には精神的な死か物理的な死。
選択肢はない
あーミスったなぁ
あんときとっとと死んでればよかった
大地の一部になってれば良かった。



そのときガタンと激しい音がして
襖が開かれ…
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ