鬼灯ノ夢
□出逢い編・白虎
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昔々のとある山奥の小さな村に、その少年は居た。
齢5つを過ぎた頃だろうか、孤児である少年は所帯なくその村に留まっていた。
ある年村は水不足に苦しむことになった、大地は乾き作物は枯れ飢饉が訪れようとしていた。雨が全く降らないのだ。
村の大人達は考えた、神に生贄を捧げようと。
その時代には広く伝わっていた儀式、一人の命と引き換えに村を救ってくださいと神に願った。
「うちは嫌だぞ」
「うちも嫌だ」
「丁は?」
「そうだ、丁の奴がいる」
孤児である少年の名前が上がった、生贄として死に逝く運命だとしても止める者は誰も居なかった…。
白装束に着替えた少年は祭壇の上に大人しく座った。
(いいのがいてよかったなぁ)
(みなしごだし元々この村の者でもないしな)
「恨むなよ、丁」
「よいのです、今の時代はこれが人の心を休める方法。恨みなぞありません」
妙に大人びた話し方をするこの少年、名を丁と言う。召し使いと呼ばれた丁は全てを悟ったように、表情を崩すことなく淡々と語った。
「………もしもあの世というものがあるのなら、村の奴らの死後なんらかのせいさいをくわえる………」
((なんか今怖いこと言った))
「さようなら皆さんごきげんよう」