ラブライブ!サンシャイン!!ー18人の軌跡ー

□#2:転校生を捕まえろ!
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その夜、桜内家の梨子の部屋は明かりも付けず、学校の制服から着替えようともせず、ベッドの上で自分のクッションを抱いたまま、ずっとうずくまっていた。
 
梨子「……どうすれば、いいんだろう……」
 
梨子は自分のスマホからは、千歌が話していたμ'sの『ユメノトビラ』という曲が流れていた。千歌がスクールアイドルを始めるきっかけにもなった曲を聴いてなりたい気持ちが自分よりも高く感じて羨ましかった。
それから梨子は部屋に置かれたピアノの方へと足を運ぶ。ベットから立ち上がり、ピアノが置かれた方向に歩き、ピアノの椅子に腰掛ける。そしてそっと…ピアノの扉を開いた時だった。

梨子「……っ!」
 
梨子は、あの時のトラウマを思い出してしまう。高校1年の時の、とあるピアノの発表会。自分の番が来て、ステージに自分だけがピアノの前にいた。そしてピアノを弾こうとすると、観客の視線が梨子だけに向けられて、その視線が怖くってプレッシャーを感じてしまい、ピアノを引く事ができなかった。それからピアノを弾くことすら…楽しくなくなってしまったのはその時からだった…。
けれど、今はそんなプレッシャーも感じない。自分の部屋には誰もいない、自分1人だけ。
 
〜♪
 
一度だけピアノの音を出したあと、少しだけ…梨子は勇気を出し、ピアノの鍵盤を弾いた。
千歌が大好きと話していた、お気に入りの『ユメノトビラ』を、1パートだけ口ずさんだ。

すると……
 
 
千歌「……あれ?梨子ちゃん?」
 
窓の外から梨子の名前を呼ぶ声が聞こえ、視線を窓へと向けると、そこには千歌の姿があった。風呂上がりなのだろうか?頭にタオルを巻いていて、寝間着の姿で梨子に手を振っていた。
 
梨子「た…高海さん!?」

千歌「そこって梨子ちゃんの部屋だったんだ!」

梨子「そっか。私ここに引っ越してきたばかりで、全然気が付かなかった…」
 
歌っていたのを聞かれていたのはまだしも、まさか自分の部屋の隣が、同級生の千歌の家だった事に梨子は驚きを隠せなかった。
そしたら千歌は、梨子に尋ねてきた。
 
千歌「今の…『ユメノトビラ』だよね?」

梨子「えっ…?」

千歌「梨子ちゃん歌ってたよね!?」

梨子「あ…その……それは…」
 
自分が大好きな歌を、梨子が歌っていたことに興奮している千歌。そこから千歌は、自分の好きなμ'sのことを語り始める。
 
千歌「私、その曲が大好きなんだ!あれは〜、第2回ラブライブの予選で…!」

梨子「高海さんっ!」

千歌「えっ…?」
 
梨子はその話を止めるように、つい大きな声で千歌の名前を叫び、黙ってしまう。
 
梨子「私…どうしたらいいんだろう。何をやっても楽しくなくて、変わらなくて…」

千歌「梨子ちゃん……」
 
梨子は自分の心に思っていたことを打ち明ける。ベランダの手摺を掴みながら、ベランダの壁にもたれてしゃがみ込んで、項垂れていた。そんな時に千歌は、梨子に手を差し伸べて言う。

千歌「やってみない?スクールアイドル…」

梨子「…!ダメ…このままピアノを諦めるわけには…」

千歌「やってみて、笑顔になれたら…変われたら、また弾けばいい。諦めることないよ!」

梨子「失礼だよ…。本気でやろうとしている高海さんにそんな気持ちで…。そんなの失礼だよ…」
 
梨子はそう言ってベランダの影に隠れ、うずくまるが千歌は話し続ける。
 
千歌「梨子ちゃんの力になれるなら…私は嬉しい。みんなを笑顔にするのが、スクールアイドルだもん」
 
梨子はベランダの影からそっと見ると、千歌は自分の部屋の窓枠から身を乗り出して、梨子に向かって手を伸ばしていた。だが、隣り合わせの2階に一歩踏み外してしまえば、地面に真っ逆さまに落ちしまいそうな行動に梨子は不安になりながらも手を伸ばした。
 
梨子「……っ!千歌ちゃん!!」
 
梨子はその行動に驚きのあまりベランダから身を乗り出し、自然と千歌の名前を呼んでいた。外は風が吹き始め、頭に巻いていた千歌のタオルが外れ、下に落ちていく。
 
千歌「それって…とても素敵なことだよ!」

梨子「……っ!」
 
梨子は差し出された千歌の右手に、自分の右手を千歌に向かって手を伸ばした。
 
千歌「んっ……くっ…!」

梨子「うっ…くっ……!…流石に、届かないね…」

千歌「待って!だめっ!」

梨子「……っ!」
 
手を伸ばしても届かない手に梨子の手は引っ込んで諦めようとするが、千歌は諦めないようにとさらに手を伸ばした。必死に伸ばされた千歌の手を、梨子も掴もうと必死に手を伸ばした。
 
千歌「んんっ…くっ…!」

梨子「んっ…あっ…あぁっ……!」
 
千歌と梨子の声が漏れるくらい、必死に千歌と梨子は、手を掴もうと手を伸ばした。そして、その思いは報われた。
 
千歌「…っ!届いた〜!」

梨子「……うんっ!」

手を掴むことは出来なかったけれど、千歌と梨子の指の先の感触があった。
 
千歌「梨子ちゃん!やる?スクールアイドル…?」
 
梨子「えぇ!これからよろしくね、千歌ちゃん!」

千歌「…っ!うん!よろしくね、梨子ちゃん!!」
 
千歌の誘いに梨子は喜んで誘いを受け取る。2人の描く物語は始まったばかりである。


ED:ユメ語るよりユメ歌おう
♪:高海千歌(CV:伊波杏樹)
桜内梨子(CV:逢田梨香子)
渡辺曜 (CV:斉藤朱夏)
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