*瞑想図書館*
□*血まみれの赤い手袋1*
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少し暖かい風が桜の香りと共に柔く、十桜歌の長い髪を慣らした。
この図書館の近くにある兼六園からだろう。
今日も桜は満開に咲いている。
覇夜は焦げ茶色の古びた本棚に、桜の花びらが挟まっているのに気づいた。
「どうしたらこんな所に桜の花びらが挟まるのだろうか」
小さな声で囁いた。
風に掻き消されていく
「事の始まりを意味しているのかもしれないわ」
あんなに小さな声だったが、十桜歌には聞こえていた様だ。
図書館にある小さなテラスの扉を開けて、こちらに向かって歩いて来た。
木材で出来た床がギシギシと鳴る
十桜歌は桜の花びらの着いた本をそっと本棚から抜いた
どうやら、この本が気になっていたみたいだ
十桜歌は題名を見て少し笑みを浮かべた。
「何か分かったんですか?」
「ええ、そうね」
満足げな顔でこちらを見た。
「きっと今日はお客様が来るわ」
そう言って、またテラスの方向へと歩いて行った。
「久しぶりのお客様……」
覇夜はシャツの袖を捲り、本の整理を再開した。